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イエメン:無料の朝ごはん提供で、500人の女子生徒が学校へ

カテゴリー: 中東・北アフリカ, 西ヨーロッパ, イエメン, スペイン, 人権, 人道支援, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 戦争・紛争, 教育, 若者, 食

原文掲載日は2018年12月29日

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学校で朝食をとる女子生徒たちの姿。写真:ファーティン (ソリダリオ・シン・フロンティア) 許可を得て使用 

内戦の結果、イエメンは 急激な資源不足 [2]に苦しめられ、自分の子供たちに学校を辞めさせなくてはいけない状況を強要されている家族が増えつづけている。 少女たちが13歳という若さで結婚させられる [3]ことは珍しくない。そんな中、首都のサナにある一つの学校は、ささやかではあるものの、大きな意味を持つ救済に出た。

NGOソリダリオ・シン・フロンティア [4]は、スペインとイエメンを拠点に、ほぼボランティアで運営され、最小で 1ヶ月1ユーロの拠出となる個人の任意募金 [5]による資金提供を基に活動している。当NGOは、この学校に通う6歳から16歳までの女子生徒たちにバランスのとれた朝ごはんを提供する活動を始めた。このプロジェクトが実施される前までは女子生徒の1/5が欠席しており、この活動を行うことで少しずつ学校に登校する生徒達が増え、2018年9月からは全校生徒525人が授業に参加し登校している、とソリダリオの創立者たちは言う。

私はこのNGOの創立者でもある、数年前バルセロナで個人的に会ったエヴァと、現在イエメンにいるファーティンの2人に、WhatsAppを通して話を聞いた。彼らはこのNGOの「教育と安全のための朝ごはん」 [6]プロジェクト立ち上げの経緯について語ってくれた。また彼らからは自分たちのフルネームや支援先の学校名などは安全上公開しないように頼まれた。

2018年3月、イエメンのとある学校の先生がファーティンを訪れ、ひとりの8歳の女子生徒について助けを求めた。女子生徒は日に日に痩せ、疲れ果てているようだった。その後女子生徒は急に学校に来なくなったという。不登校となる生徒は珍しくはないが、彼女はそのような生徒の中で最年少だった。先生が家族を訪問したところ、家族は金銭的に困窮しており、女子生徒には求婚者が何人もいることがわかった。

先生は学校で毎日食事を配給することで、そんな家族に自分の子供を学校に行かせる後押しができるのではないかとファーティンに申し出た。ファーティンは次のようにいう。

Most of [these girls are] daughters of workers of the textile factory, which was completely destroyed [in the bombings]. The families haven't [had any] salary for 3 years. How could they cover food expenses? […] The most important thing is that we're supporting them to complete their education. Their families [are also] happy, as keeping them at school prevents them from staying at home or getting married at such a young age.

不登校になってしまうほとんどの女の子たちは、内戦で爆破されてしまった繊維工場で元々働いていた労働者たちの娘たちです。3年もの間、給料を得ることが出来なかった家族たちが、十分な食費を払えるでしょうか、いや払えるはずがありません。(中略)最も重要なことは私たちがそんな女の子たちにしっかりとした教育を提供するように支援することです。家族にとっても、子供たちが家の中だけにいて、若年齢での結婚を強いられるのを防ぐことができるという利点があるのです。

2018年3月に国連はイエメンでの人道危機は世界で最悪 [7]なものであると宣言した。高い失業率とインフレの結果、国の80%の家庭は借金を抱えており、65%は食糧を賄うお金がない [8]という状況だ。

ソリダリオ・シン・フロンティアは小児科医と共に、学校で提供する朝ごはんの献立を考えた。ファーティンは毎朝食料品を買ってきて、彼女のキッチンでは一組の夫婦が食事を準備し、詰め、運搬する。仕事の合間の45分の休憩時間には、すかさずファーティンは学校へ駆けつけ、先生たちの食事の配給作業を手伝う。彼女の兄弟が手助けしてくれることもあるそうだ。

この「自分たちがやる」という精神に基づく活動をこのNGOは他に3つ実施している。「 家族のための食糧援助(Food aid for families) [10]」というプログラムでは、サナ、アデン、アムラン、レイダ、ホデイダ、アル・ドリヒミなどの地域に居住する社会的に弱い立場に置かれている家族や、タイズを追われた家族に食料品を届けている。「イエメンへの飲料水援助(Water for Yemen) [11]」 というプログラムでは、アムランとレイダにある他地域から追いやられた人々の住むキャンプに設置された貯水槽の水の補給活動を行っている。 また「ソコトラ島復興(Rebuilding Socotra) [12]」では2015年に発生したハリケーンにより、荒廃したソコトラ島で、家や井戸を建て直すために必要なセメントを供給している。

「私たちでやればいいんじゃない?」

準備された朝食は毎朝学校で配給される。写真:ファーティン (ソリダリオ・シン・フロンティア) 許可を得て使用

エヴァは2012年イエメンに訪れたときにファーティンと出会った。サナアのとあるカフェでエヴァの隣の机では誕生日会を開いており、誕生日を祝ってもらっていた女性がエヴァに誕生日ケーキを分けてくれたのだが、その人がファーティンだったという。2人は友達となり、それ以降何度か顔を合わせたが、一番最近会ったのは2015年のことだった。ファーティンはこう思い出す。

A few weeks after the war began, I was on WhatsApp (as usual) and I asked Eva, “can we do something to help?”. She answered that she would look for an organization in Spain with her friend Noelia, and I was to look for one here in Yemen.

イエメンで内戦が勃発した数週間後、私はいつものようにWhatsAppを開き、エヴァに「私たちに何か出来ることがないかしら」と尋ねました。エヴァは友達のノエリアと支援してくれる団体をスペインで探すから、私はイエメンで探すように、と答えました。

国際開発で15年もの経験を積むエヴァは、イエメンで活動する信頼できる草の根NGOを見つけられなかった。そこでエヴァ、ファーティン、そしてノエリアの3人は同年、自分たちでNGOを作ろうと決心した。

3人の女性はボランティア管轄チームとして現在働いており、スペイン、イエメンの両国からの信頼できるボランティアの支援を受けている。エヴァとノエリアはスペインにて、ソーシャルメディア [1]ラジオ [13]新聞や雑誌 [14]講演会 [15]等を通じて、 自分たちの活動内容を広め、資金集めを行っている。寄付はほとんどオンラインで行われ、ソリダリオ・シン・フロンティアがそれぞれのプロジェクトへクラウドファンディングなどを通して資金分配が行われている。一方ファーティンは現地で中心的な役割を担い、支援活動には彼女の家が主に使われている。全体を管轄する3人は、普段の仕事とNGO活動を同時に上手くこなしている。

彼女たちは写真 [16]動画 [17]等によって彼女たちの活動の詳細 [18] を、ソリダリオ・シン・フロンティアのソーシャルメディアに日常的に投稿している。 またこのような活動は、イエメンでの内戦について広く知らせると同時に、特にこの内戦に武器を供給 [19]しているスペイン [20] を始めとする国々の負の役割に対する関心も高めている。

校正:Moegi Tanaka [21]