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アルバニア国立劇場解体へ 建物の保存求める「同盟」の闘い

(原文掲載日は2018年9月29日です)

アルバニア国立劇場(アルバニア、ティラナ市)。写真は「劇場保護のための同盟」の厚意による。許可を得て使用。

アルバニアは今、国立劇場を守るための戦いのさなかである。

アルバニアの首都ティラナ市では、この歴史的記念建築の政府による取り壊し決定を受けて、3ヶ月以上に渡り、芸術家、活動家、一般市民といった人々が抗議活動を連日続けている。政府の計画では、劇場は、デンマーク人建築家ビャルケ・インゲルスの設計案に基づく近代的な建物へ建て替えられることになっている。

これは官民パートナーシップであり、地域の更なる開発と魅力向上を目的に、当該敷地をアルバニア政府からフーシャ社へと譲渡する予定のものである。

特別法の拒否を大統領へ要求する抗議者たち。写真はルディ・エレバーラの厚意による。許可を得て使用。

パートナーシップを合法とするため、政府は2018年2月、このような獲得と契約を支持する特別法(反対派にはフーシャ法とあだ名されている)を提案した。

野党は特別法を拒否した。野党の主張では、特別法は自由競争市場の基準に反するため、憲法および2003年の欧州連合(EU)との連合合意に抵触するとしている。

反対派のいっさいの法的主張をよそに、2018年6月5日、与党社会党の大多数は特別法に賛成票を投じた。

特別法が計画中だという報道が出ると、芸術家や活動家たちはこの歴史的建造物の保護への強い意思を示すため、「劇場保護のための同盟」を結成した。

公開ヒアリングで広がる溝

特別法の発表を受け、「同盟」は国立劇場を擁護して抵抗した。ティラナ市のエリオン・ヴェリアイ市長は、文化省の代理として3度の「公開ヒアリング」を催し、彼らの苦情を聞いた。しかし立会人たちの示唆するところでは、一連の公開ヒアリングは、調和どころか不協和を作り出すために画策されたものに感じられたという。

公開ヒアリングのなかで、建設研究所のアグロン・ヒセンリウ所長は、同研究所の分析結果に基づくと「(劇場は)安全面において技術的に必要な水準を満たしておらず、内部での活動は休止すべきである」と主張した。だが当該機関は分析結果を一度も公開していない。これらの主張が真実であるのか、更なる疑問を呼んでいる。

請願、反請願、プロパガンダ

国立劇場保護を求める請願書に署名する市民たち。写真はルディ・エレバーラの厚意による。許可を得て使用。

「同盟」には国の著名人、歴史学者、学術関係者やジャーナリストらも加わり、勢いを増した。アルバニア建築家協会も、この合理主義建築が有する歴史的・美的価値について強調しつつ劇場解体に反対を表明した。

彼らは次のように政府に要請した。

not to erase the collective memory of the generations, and that any new theatre is welcome but we do not have to destroy the old one.

何世代にも渡って共有してきた思い出を消さないで欲しい。いかなる新劇場も歓迎するが、古いものを取り壊す必要はない。

さらに彼らは、劇場は修復できる可能性があること、そうでないと裏付ける公的書類は一切ないことを論じる請願書も作成した。

だが、新劇場建設に賛成する一部の芸術家たちは特別法を支持すると宣言した。この宣言にはアルバニア国外在住とおぼしき人々による虚偽の署名も記載されていた。

こうした一方で国は宣伝活動を行っており、劇場を放置すれば場内で公演を行うアーティストを危険にさらすと力説し、劇場の建物自体に文化的価値は皆無であると主張している。実際に国の言い分では、この建物はファシズム期(1939年から1943年)に建てられ、当時は「ドポ・ラボロ(労働者クラブ)」として使用されたとし、その遺産の評価を更に下げている。

歴史学者のルーベンス・シマ、アウレル・プラサリらはこの主張に反証した。劇場が持つ73年の歴史は保存されるべきであり、尊厳をこめて敬われるべきだ、と論じている。

「(共産主義の)独裁政権ですら、劇場を取り壊さなかった」とプラサリは書いた。

アルバニアの芸術・文化資金は年間1600万ユーロ(1900万米ドル)(訳注 約20憶円)、すなわち国家予算の1パーセント未満であり、近隣諸国の中で最低額だ。「同盟」のメンバーは、こうした待遇の低さ、修復資金の不足は意図的なものだと主張する。

彼らは、エディ・ラマ現首相が、1998年の文化青少年スポーツ大臣在任当時より劇場解体をもくろんでいたと指摘する。当時、ラマは劇場を閉館させたが、パンデリ・マイコ首相(当時)の決定で閉館は撤回された。2002年にラマがティラナ市長になると、彼は劇場の解体とそれに代わるタワー建設という開発計画を発表した。その当時は芸術家らの結束はもっと固く、超党派の請願が建物保存を要求したのだった。

制度の空白、限られた国際支援

2016年、アルバニアでは憲法の3分の1の改正と司法改革が実施され、結果として制度上の空白が生じた。職位を保持するに不適格とみなされた多数の裁判官や検察官が職を追われたためである。

EUによれば、汚職を一掃できたためこの制度改革は成功したとみなされた。しかし司法組織内の高い地位の多くは空白のままで、憲法裁判所もその一つだ。こうした状況下ゆえに、多くの人が違憲と考えているこの特別法に対して異議申し立てをすることは不可能だ。

アルバニア首相さえも、特別法への署名を拒否し、議会へ差し戻した。だが首相の権限で法案を再審議へ差し戻せるのは一度きりで、特別法に対し賛成多数となればこれ以上審議を続行することはできない。

モダニズム建造物の保存監視組織であるDOCOMOMO(ドコモモ)は、アルバニア当局へ劇場保存を促す公開文書を出し、解体に反対する初の国際声明を発表した。以下が公開文書の内容である。

On the context of the extraordinary transformation and innovation period that the city is facing, and since a reconstruction project has been approved for the National Theatre of Albania and adjacent areas, Docomomo foremost concerns rely on the new plans for this cultural center which intent to erase its original integrity. The new, 9,300 square meters contemporary building will be placed in the heart of downtown, right close to the National Opera and the National Art Gallery, replacing the original theatre.

ティラナ市はいま、ただならぬ変容と革新の時代に向き合っている。また、再建プロジェクトはアルバニア国立劇場とその隣接地区について認可されている。これらを踏まえ、DOCOMOMOが最も懸念していることは、文化の中心地に対する新設計案が、本来の調和を消し去ろうとしているのではないかということである。新劇場は9300平方メートルの現代的な建物で、国立オペラ劇場と国立アート・ギャラリーに近接してダウンタウン中心部に配され、元の劇場と置き換えられる予定である。

ヨーロッパ・ノストラも同様にアルバニア政府に公開文書を送り、劇場の解体を「憂慮すべき決定」と呼んだ。

価値のない「掘っ立て小屋」、それとも財産?

「わたしが国立劇場です」、ティラナ市で看板を持ち抗議活動をする人。写真はルディ・エレバーラの厚意による。許可を得て使用。

多数の組織や機関から相当量の嘆願が寄せられているにも関わらず、ヴェリアイ市長は、劇場を修復に値しない「掘っ立て小屋」であると言い続けている。

「同盟」は、一連の請願書送付、訴訟申し立て、EU本部への連絡に加えて、特別法の持つ複数の問題点を強く指摘する声明を出した。

だが、アルバニアは未だEU加盟国ではない。準備段階として安定化・連合協定(SAA)がEUとの間に結ばれており、2019年6月に加盟のための協議に入る予定だ。

活動家たちが指摘するのは、仮にアルバニアがEUに加盟すれば、特別法はSAA協定違反となる点だ。特別法の内容と違憲な手順という両方の観点から、議会多数派はアルバニア憲法に違反していると、彼らは主張している。

EU当局は特別法に対して、「特別法がアルバニア現行法の枠組みへ適合しているかを評価する権限」をEUは持たない、とする認識を示した。それでもなお、EUは「EUの公的調達原則への適合を追求すること、平等な市場機会を提供すること」をアルバニア政府に奨励した。

アルバニアの司法改革において、EUは主要な支援元のひとつだったが、結果として生じた制度上の空白には言及していない。

首相に宛てたメッセージを演説する俳優のネリタン・リーサイ。写真はルディ・エレバーラの厚意による。許可を得て使用。

劇場解体の具体的日程は不明だが、ここ3ヶ月のうちに実施される可能性もある。「同盟」メンバーの中には、必要なら体を張ってでも解体業者を阻止する、と話す者もいる。

アルバニアの文化遺産を救うという皆の目標を果たすには、それがたった一つの残された方法だと、彼らは考えているのだ。

編集注:この記事の著者は、「劇場保護のための同盟」の現役メンバーである。

校正:Akane Sato

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