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ムンバイ発 元ストリートチルドレンによるブックカフェ登場

カテゴリー: 南アジア, インド, 人権, 写真, 市民メディア, 教育, 文学, 朗報, 開発
The the story of Amin Sheikh, who wanted to change the fate of boys like him who grew up on the streets of Bombay. Photo credit: Humans of Bombay [1]

ボンベイの路上で少年時代を過ごしたアミン・シェークの物語。かつての自身と同じ境遇にある子供たちの人生を変えたいと望む。写真提供:ヒューマンズ・オブ・ボンベイ

ムンバイの雑踏の中で約3年間に及ぶ自叙伝の販売を経て、著者のアミン・シェークはあらゆる努力が報われたと実感していた。インドの金融都市ムンバイにブックカフェを開くというシェークの長年の夢がついに実現したのだ。カフェは貧困にあえぐストリートチルドレンを支援しようという思いを形にしたものだ。

シェーク(36歳)はこれまでに数々の経験を重ねてきた。彼はムンバイ(旧ボンベイ)の北部のスラムにある [2]貧しい家庭に生まれた。彼いわく、5歳にしてチャイ屋で働き始めたところから人生が動き出したという。彼が16歳になるまでに、過酷なムンバイの路上でホームレスの日々 [3]を送った。この間にごみ拾いや地元の鉄道で歌手を務め、物乞いやボロ拾い、工員として働き、鉄道の売り子や靴磨きになり、職を転々としたのだった。後にムンバイにある孤児院スネハサダン [4]に救われた。これが16歳になるまでの彼の歩みだ。こうして新たに住処を得て、彼の人生は転機を迎えた。

シェークが17歳の時には、誰もが知る有名なアーティストのユスタス・フェルナンデスのもとに働きに出された。彼はユスタスの運転手やコック、清掃夫として働きながら英語を習得した。2002年にはユスタスの支援を得て、自身の旅行会社スネハトラベルを始めた。ユスタスはバルセロナ旅行にまでシェークを同行させた。シェークはそこで数店のブックカフェに足を運んだ。これに現在のカフェの着想を得たのだ。

Amin in his Cafe. Used with permission [5]

シェークのカフェで働くスタッフ。孤児院出身の元ストリートチルドレン。写真:許可を得て掲載

今では、シェークのカフェ「ボンベイからバルセロナ」は様々な色調の白とオレンジで彩られている。ここでは孤児院スネハサダン出身の元ストリートチルドレンが何人も働いている。カフェがオープンしたのは今年(2016年)の8月中旬。どんな立場や境遇の人にも利用してほしいとの思いから、メニューの価格帯は手ごろなものに設定している。例を挙げよう。1杯のお茶はたった10ルピー [6](約17円)、これは街角で営む一般的なお茶の屋台と変わらない。「誰にでも素敵な場所でお茶を楽しむ権利がある」、これがシェークのモットーだ。

タタ社会科学研究所とボランティア団体のアクション・エイド・インディアが実施した人口調査による [7]と、ムンバイの路上で暮らす子供の数は、およそ3万7千人に上るという。そのうちの4割が、生活の中で言葉の暴力や身体的、性的虐待を受け、十分な食事を与えられないという経験をしているということだ。

この度グローバル・ボイスはシェークに話を聞くことができた。自叙伝の売り上げを通じて開業資金をまかないカフェの開業につなげたいきさつや、ストリートチルドレンを支援する計画を次のように語ってくれた。

「カフェの立ち上げ資金は、約3年間を費やして自叙伝を売って工面したよ。ストリートチルドレンにはいつでも扉を開いているし、彼らがカフェに来るのは大歓迎だよ」彼は述べる。

The cafe provides food and other assortments free of cost to underprivileged children. Photo credit: Bombay to Barcelona FB page. Used with permission. [8]

カフェでは恵まれない子供のために食べ物やお楽しみを無料で提供している。写真提供:フェイスブック「ボンベイからバルセロナ」より 許可を得て掲載

彼の自叙伝 『ボンベイ ムンバイ 人生は人生 あなたのおかげで僕がいる [9]』は2013年に出版された。同書は地元の有名な鉄道で歌手や物乞いをする日々、家族の庇護がないために苦汁をなめた経験など、ムンバイの路上で暮らしたシェークの子供時代を振り返る内容だ。

今のところ、彼の自叙伝の売上金 [10]はカフェの運営費に充てている。

「義理の父親から虐待や脅迫にあって、5歳で家から飛び出したんだ。物乞いや駅のホームで寝泊まりする日々だったけど孤児院スネハサダンに救われたんだ」シェークは語る。

現在、彼はストリートチルドレンの為の孤児院を提供するなどの支援を行おうと決意している。「子供たちには二度と路上生活に戻らないでほしいな」

Photo Credit: Bombay to Barcelona FB page. [11]

写真提供:フェイスブック「ボンベイからバルセロナ」より 許可を得て掲載

カフェの資金調達を目標にしたシェークの思いは、約1万2千冊の自叙伝の売り上げにつながった。同書はスペイン語、カタロニア語、マラーティー語などの各国言語で読むことができる。

シェークの自叙伝の読者、スペイン人のマリア・アントニア・ペレズは先頃ムンバイを訪れた。彼の物語を読んで、カフェの立ち上げに手を貸そうと思ったのだ。

Photo Credit: [11]

写真提供:フェイスブック「ボンベイからバルセロナ」より 許可を得て掲載

「ストリートチルドレンを歓迎するケーキやスナックを並べた特別なテーブルを用意しているんだ。子供たちのうけはとてもいいよ」シェークはそう話を締めくくった。

Photo [11]

写真提供:フェイスブック「ボンベイからバルセロナ」より 許可を得て掲載

ディットテレビ [12]からアップロードした彼の物語がこちら。YouTubeでチェックしよう。(リンク先は2019年現在閲覧できない状態です)

ムンバイではメディアを学ぶ学生のグループが、シェークの自叙伝や彼の人生をもとにした短編映画 [13]を作製した。

カフェを訪れた人々は、ソーシャルメディア上でおおむね好意的なコメントを寄せている。

シヴァジニ・シン [14] はフェイスブックに次のようにコメントしている。

This book costs only 300/-. If you buy it, you are helping Amin Sheikh [15], a former street kid, build a better life for others who are on the streets.

I just finished reading it. The life story, the journey is deep. Very real, very positive and oh so inspiring!

本の値段はわずか300ルピー。同書の売り上げは、路上暮らしを送る人々へ支援の手を差し伸べる元ストリートチルドレン、アミン・シェーク [15]の活動に役立てられる。

たった今読み終わったところ。人生の物語、深く訴えるその歩み。真に迫っていて、すごく前向きで、そう、それにとても刺激になった!

カフェ ボンベイからバルセロナ、なんてほっこりする素敵な場所なの。:-)

ディエン・モライスは、フェイスブック [18]にカフェを高く評価するコメントを投稿している。

Never felt like home at any cafe before, like I did when I visited your cafe…. The ambience, the decor, the snacks… everything is just perfect….. The customer service is something I will never forget… I have always forgotten names of people working in hotels or cafe but at your cafe SAI, I can never forget the hospitality he provided and his name.. All the best…

これまでのどんなカフェでも感じたことがないようなくつろいだ気分になった……雰囲気も、インテリアも、軽食も、全てがホントにパーフェクト……。ここでのおもてなしには、ずっと心に残る何かがあるの……。ホテルやカフェで働いていた人の名前はいつも忘れていってしまうけど、あなたのカフェは違う。もてなす心も彼の名前も決して忘れない。全てがサイコー。

校正:Yoko Higuchi [19]