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標的にされてもなお闘い続ける少数派、イエメンのキリスト教徒

カテゴリー: 中東・北アフリカ, イエメン, レバノン, 人権, 宗教, 市民メディア, 戦争・紛争, 検閲, 言論の自由

(原文掲載日は2019年1月17日)

イエメン共和国、サヌアでのガリレオ。本人の許可を得て掲載。

イエメンでは、メディアでは取り上げられていないが、国内の少数派であるキリスト教徒が攻撃の的になりつつあり、生活もままならない。

宗教施設は破壊された。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると [1]、2015年、南部の港湾都市アデンでキリスト教の施設が3度も襲われたのだ。

さらに2016年、同じくアデン市で「神の愛の宣教会」が襲撃された際にはインド人司祭が誘拐され拷問を受け [2]、ほかにも4人の修道女が殺害された。武装集団は恐らくISISと関係があり、彼らはこう壁に書いた [1]。「神などいない、神以外には。ムハンマドは神の使い。イスラム国。神の呪いをキリスト教徒とユダヤ教徒の上に」

こういった厳しい状況により、イエメン国内の大多数のキリスト教徒が自らの信仰を隠している。

ガリレオ(仮名)は20代後半。3年前、キリスト教に改宗する前、数ヵ月間無神論者だった。この行動により、日常的に危険な生活を強いられるという事を彼自身は分かっていた。

ガリレオは、イエメン国内に約4万1000人いるとみられているキリスト教徒のうちの1人 [1]である。しかし彼は、国内のキリスト教徒は7万人を超えると考えている。国内には現在も紛争がある中で、キリスト教徒であるリスクを彼は次のように説明する。

It would cost them less than a dollar to kill me.  It may happen at any time. They killed my friends; can you imagine what it’s like getting killed for praying? For being peaceful? You think it is scary? My friends were not afraid. I may die at any time but I am not afraid. The Lord is my rock, my fortress and my deliverer.

彼らにとって、僕を殺すことは1ドルもかからないだろう。いつでも起こりうるんだ。彼らは僕の友達を殺した。祈っていることを理由に、平和に過ごしていることを理由に殺されるということがどういうことか分かるか。僕の友達は恐れてなどいなかった。僕はいつ死ぬか分からないが、死を恐れてなどいない。神は僕の支えであり、砦であり、救世主なのだ。

国内のキリスト教徒は信仰のせいで迫害を受けている。イスラム教から改宗することで、裏切り者とみなされ、死をもって罰を受けるとされている。それ故に、信仰を隠し続ける。親にさえ打ち明けられない。

Many [Yemeni] had to flee but many are converting and getting baptized. Christianity in Yemen is growing despite the risks we have to face. They are seeing the truth in the bible, there’s some sort of spiritual catharsis they feel. And the violence they’re facing is making them seek peace. They found peace in the bible.

多く(のイエメン人)は身を隠す必要があるが、それでも多数が洗礼を受け改宗している。イエメン内のキリスト教徒の数は増加している。身に迫る危険を承知で。彼らは聖書に真実を見据え、聖書を読むと心が洗われるようだという。そして迫害を受けたことで、平和を求めるようになった。聖書に安らぎを求めているんだ。

キリスト教のコミュニティを見出した人々は、住人のいないアパートで祈り、ネット上でのチャット履歴は削除していることが多い。

We keep on changing our location. We don’t want them to notice our regular meetings underground. Christians in Yemen dream of praying in a church. Christian women dream of wearing a necklace with a cross. I want to get the cross tattooed on my chest. It is an act of revolt that my soul needs. But I am aware it is a suicidal act. I can’t even like posts about Christianity on social media.

一つの場所に留まることはない。定期的にひっそりと集まっていることを知られたくない。イエメン国内のキリスト教徒は教会で祈りを捧げることを切望している。キリスト教徒の女性は十字架のネックレスを身に着けたいと願っている。僕は、胸に十字架のタトゥーを刻みたい。それが僕の魂が求める反乱の表現だからだ。でも、それは自殺行為。ソーシャルメディアでキリスト教についての投稿に「いいね」を押すことすらできない。

彼は死よりも、コミュニティーを離れることの方が怖いと感じている。

Death doesn’t scare me, but leaving Christians who need me does. They need my support, I have a mission here.

死を恐れてはいないが、僕を必要としてくれているキリスト教徒の信者を残していくことはできない。皆、僕のサポートを必要としてくれている。僕のミッションだ。

ガリレオは、行動は声を挙げることよりも影響力があると信じている。しかしそのせいで、彼が拠点とするサヌアで逮捕された。2017年、クリスマスにサンタクロースの格好をして、子供たちにおもちゃやお菓子を渡していたのだ。ホーシー派は彼を逮捕し、数日間にわたり拷問をした。

They humiliated me. They beat me nonstop for 4 days. When I convinced them that I am not Christian, that I was just helping kids; they let me go.

彼らは僕に屈辱を与えた。4日間、手を止めることなく僕を打ち据えた。僕は、自分がキリスト教徒ではなく、ただ子供たちを助けていただけだと説得すると、解放された。

政府側の軍の拠点はアデンの南の港町。一方、ホーシー派はイエメンの首都サヌアを含む北部の中央地区を支配している。局所的、地域的、国際的な多岐にわたる権力闘争の末に、アルカイダとISISは共に勢力を広げている。

拷問されたが、ガリレオは全く後悔していない。ホーシー派の反乱軍とサウジアラビア主導連合の援助を受けたイエメン軍の対立で、キリスト教徒はさらに窮地に立たされているとガリレオは考えている。

We need help, I don’t know how or who should help us. We’re dealing with militias, not a government, which makes it harder for us to find a solution. I am glad you’re helping me get my voice heard; I’m tired of living in the shadows. The media shows Yemenis starving but what we crave the most is freedom of speech, freedom of religion. Food is for the body but freedom is for the soul.

我々は助けが必要なんだ。誰がどのように助けてくれるかはわからない。政府と話すと、解決策を見つけるのがさらに困難になるため、民兵と交渉をしている。僕の声を伝える力になってくれて感謝している。陰に隠れて生きていくのは、もううんざり。メディアはイエメン人が飢餓に苦しんでいると報道しているが、僕たちが一番に願っていることは、発言の自由、宗教の自由。食物は肉体のために、そして自由は魂のためにある。

2018年11月、苦難のすえ、ガリレオは念願かなってレバノンへついに行くことができた。危険にさらされず、教会でお祈りをする夢が実現したのだ。

ガリレオはレバノンでの長期滞在は望んでいなかった。イエメンのコミュニティには自分が必要だと信じていたからだ。

ホーシー派が支配するサヌアに戻ると、ホーシー派がガリレオに接触してきた。拘束されないよう、母親がいるホデイダに身を隠そうとした。しかし、彼が母親に自分の信仰を伝えると、母親には認めてもらえなかった。彼はサヌアに戻らざるを得ず、結局逮捕された。

この記事に着手している間、ガリレオとしばらく連絡がとれなくなった。のちに彼から知らされることになるのだが、2019年1月9日に釈放されるまで約20日間にわたり刑務所に拘束されていた。肉体的にも精神的にも拷問を受けたと彼は話してくれた。

ガリレオは現在、自分が表に出ることで、コミュニティの足取りをつかまれることを懸念し、身を隠している。ホーシー派に目を付けられているため、彼らが支配している地域を逃れることは極めて難しい。イエメンを出るために公的な外交上の支援が早急に必要だと訴える。彼の命はいつ終わるか分からないのだから。

校正:Minako Enomoto [3]