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コロンビア人ジャーナリストが伝えたい真実「パブロ・エスコバルは英雄などではない」

カテゴリー: ラテンアメリカ, コロンビア, メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 歴史

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La PullaがYouTubeで配信する「パブロ・エスコバルは英雄だ」からのスクリーンショット

この現象はNetflixのドラマシリーズ「ナルコス」によって起こったのではない。しかし、80年代のコロンビア人麻薬王パブロ・エスコバルが北アメリカのポップカルチャーによみがえる [2]のに、そのドラマがひと役買ったのは確かである。2015年に放送が始まって以来、物議を醸しているそのドラマによって、国際社会が抱くコロンビアへの根強いイメージ [3]に関する議論が熱く [4]なっている。そのイメージとは、カリスマ的な麻薬密売人が支配するコカイン・パラダイスというものだ。

この現象への反論として、YouTubeチャンネルのLa Pulla [5](スペイン語で「挑発」の意)を運営するコロンビア人ジャーナリストたちが、今なおエスコバルを「英雄」としてたたえる人たちに向けてビデオを制作した。La Pullaはコロンビアの新聞エル・エスペクタドルによるプロジェクトである。特にそのビデオでは、コロンビア史上最も暗い時代のある時期に起こった悲劇的な出来事やその統計を取り上げている。例えば、1986年12月17日に起こったエル・エスペクタドル新聞社元ディレクターのギジェルモ・カノ暗殺 [6]や、1989年9月に同新聞社近隣で起こった爆弾攻撃 [7]、といったものだ。

It is common in other countries to see people with T-shirts of him, encouraged by series such as Netflix's ‘Narcos’. And then when they come to Colombia they pay a lot of money to go on a tour [8] so they can admire his great accomplishments. […] This “hero” prompted thousands of people to run towards drug trafficking money [like] pigeons chasing corn and rendered the national economy into a little pot to launder the money that came from drug trafficking. This “hero” was not a friend of the people: he committed 623 attacks, left 1710 civilians in pain, and killed 402.

This “hero” forced us to escape from an abandoned briefcase in the street or from a stationed car with no one inside [thinking] there [it was] one more bomb. This “hero” forced us to stay indoors, to suspect from everyone, and to react with fire and violence. This hero forced us to live in constant fear.

Netflixの「ナルコス」のようなドラマシリーズの影響もあり、エスコバルのTシャツを着た人たちを見かけることは、他の国ではごく普通のことである。その上、その人たちはコロンビアにやってきて、多額の金銭を支払ってツアーに参加し [8]、エスコバルの偉業をたたえるのだ。【中略】この「英雄」によって、ハトが餌を追いかけるように、何千もの人々が麻薬密売から得られる現金に群がり、国民経済は麻薬密売の資金洗浄の温床となった。この「英雄」は国民の友人ではなかった。623件の武力攻撃を行い、1710人の市民を苦しませ、402人を殺害したのだから。

我々はこの「英雄」のおかげで、道に放置されたブリーフケースや誰も乗っていない停車中の車には、また爆弾があると思い、逃げるようになった。我々はこの「英雄」のおかげで、屋内に閉じこもり、皆を疑い、銃や暴力で対応するようになった。我々はこの人物のせいで、絶え間ない恐怖の中で暮らさなければならなくなった。

ビデオの中で話題にしているツアーはナルコス・ツアー [8]として知られ、観光客はメデジン市周辺にある、パブロ・エスコバルゆかりの地をめぐる。2018年、グローバル・ボイスと提携しているラディオ・アンブランテ [9]は、同社の受賞歴があるポッドキャスト番組の中でこのナルコス・ツアーを取り上げた。

校正:Sumiyo Roland [10]