猫と散歩する侍? 古いけど新しい侍のコミカルアート

原文掲載日2018年7月14日

‘Warrior takes armoured cat for a walk’

着甲武人猫散歩逍遥図。2014年野口哲哉作。この画像はSNSで広く拡散された。

近年SNSで何度も拡散された、特に出典元のない画像がある。その絵には鎧を着た裸足の侍が猫を散歩させる様子が描かれている。猫耳帽子をかぶった侍の絵は、おそらく中世の日本にさかのぼる、時を経た古い作品のように見える。

この絵に対する解釈は様々である。

My most favorite painting of Mongolian conqueror Genghis Khan pic.twitter.com/r2aY26LKTL

? Gautam Trivedi (@KaptanHindustan) June 4, 2018

モンゴルの覇者チンギス・ハンの絵は私の一番のお気に入りだ。
ガウタム トリヴェディ @KaptanHindustan

実はこの絵は日本の芸術家、野口哲哉によって描かれたものである。彼は侍の独特なコミカルアートを得意としている。

彼は絵画だけでなく精巧な鎧の模型を製作する伝統的な手法もマスターしており、その作品は博物館においても見劣りしないほどである。

日本の芸術事情を綴るWEB雑誌『アートスケープ・ジャパン』において、野口の芸術スタイルを侍シュルレアリスムと称するアラン・グリーソンは、以下のように語った。

Every few years an artist gains cachet with pictures of hamburger-munching geishas and the like, painted in the fashion of ukiyoe or Nihonga. Though the gimmick is fun the first time, after a while it gets pretty predictable — good for a laugh or two, but hardly the trenchant commentary on “traditional vs. modern” that the artist usually proclaims it to be.

The best practitioners of this genre (Masami Teraoka comes to mind) make it work not because of the obvious satire, but because of their mastery of the classical art form used to set up the spoof. And once in a while the artist's technique is so exquisite that it elevates the work entirely out of the realm of parody, however droll the subject matter.

Tetsuya Noguchi's work is just such an example.

数年に一度、ある芸術家がハンバーガーを食べる芸者等の作品で評判を得ている。それらは浮世絵や日本画といった技法を用いたものだ。作品を初めて見るときはその技法に目を見張るものの、やがてすっかり予想できるようになり、つい笑いが浮かぶのである。と言っても、芸術家が常々このように表現する「伝統vs現代」について厳しいコメントはほとんどない。

寺岡政美をはじめとするこのジャンルの大成者たちがこの賛否両論を引き起こしそうなパロディーを体現できている所以は、作品の明らかな風刺によるのではなく、彼らの古典芸術に関するスキルが卓越している点にある。そして往々にして芸術家の技術がこの上なく素晴らしいがために、作品そのものの価値を高めることになっている。

野口哲哉の作品はまさにそのような例の一つである。

東京に拠点を置く野口が制作した他の作品には、てんとう虫柄の鎧を着た侍を生き生きと表現した彫刻などがある。

【トレンド】 
野口哲哉個展「ANTIQUE HUMAN」侍のいる場所。古いけど新しい世界。

ツイッター上のみならず、野口の作品は日本で定期的に展示されている。彼の個展である「中世より愛を込めて」は東京銀座のポーラミュージアムアネックスで開催されている。
(訳注:個展「中世より愛を込めて」は2018年7月13日~2018年9月2日で会期を終了)

2017年に制作されたこの短編ドキュメンタリーは彼の創作プロセスを追っているものだ。
(動画は日本語であるがYoutubeの英字幕機能が利用可能)

校正:Moegi Tanaka

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