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エチオピア 国を挙げての植林計画で世界記録を更新 しかし、効果がでるのはまだ先のはなし

カテゴリー: サハラ以南アフリカ, エチオピア, 市民メディア, 意見, 教育, 朗報, 環境, 科学, 開発

エチオピアのカトバレ村でアボカドの木を植える人たち 2011年6月23日 ツリーズ・フォー・ザ・フューチャー [1]のフリッカーから転載

編集者注:この記事はセンド・ア・カウの農園システム・コーディネーター、シエラ・ハルダーから寄せられた特別寄稿です。

誰もが認めることであるが、樹木は地球にやさしい存在である。この夏、植林の効果が、マスコミの見出しを大いに賑わせた

7月下旬に、エチオピア政府は1日に35千万本の苗木を植え [2]、一度に実施した植林の世界記録を樹立したと宣言した。 この植林運動はエチオピア首相アビー・アハメドが主導する森林回復政策の一部である。アハメド政権は、今年10月までに47億本の植林をして森林破壊および気候変動対策に取り組むという目標を設定している。

 

同じ7月に、チューリッヒ工科大学クラウザー研究室は一つの研究結果 [3]を発表した。その研究によると、数十億本の植林は、気候変動に対して最も費用対効果が高い方法だという。

樹木は大気を清澄にし気候変動に歯止めをかけるだけではなく生物の多様性を促進する効果もある。コスタリカで行われた 研究 [4]によると1本の木を植えることで、鳥類をほぼゼロから80種まで増加させることができたという。

木を植えることは農家にとって多くの恩恵をもたらす。例えば、樹木は土壌の質を改善し、土壌浸食を緩和させ、家畜や農作物を風雨から守る。 これは、農家が多くの肥沃な土地を所有しているという点で極めて重要だ。つまり、森林回復の可能性がまだ多くあるということなのだ。

1日に35千万本の苗木を植えるという目標を達成したのは素晴らしいことだ。 しかし、これらの苗木が成長し炭素を十分に取り込めるようになるまでには長い時間が必要である。 

アフリカ大陸の6カ国で活動するセンド・ア・カウ [5](NGO)は小規模農家に、1つの利用目的だけでなく色々な用途に使用できる木を植えることを推奨している。例えば、売り物になる食用の果物が成るだけでなく薪として利用できる樹木や土壌への窒素供給源となる樹木の植林を推奨している。こういった利点があれば、土地が限られていても農家は進んで樹木を植え育てようとする意欲が湧くのである。

エチオピアの運動は、中国およびインドにおける大規模な森林回復運動に続くものだ。森林回復運動は素晴らしいことである。しかし、植林後に待ち受ける難問を解決するのは思ったほど容易なことではない。樹木にとって貴重な生育期に、抜き取られたり痛めつけられたりしないように見守っていかなければならないし、同時に既存の成熟林も見守っていかなけらばならない。

樹木を含めその他の生態系は、炭素の取り込みという観点から見ると重要な役割を持っている。化石燃料の燃焼や森林破壊により、危機的な量の二酸化炭素が大気中に放出されている。その結果、急速な気候変動が起こっており、取り返しがつかないところまで来ている。

樹木は大気中の二酸化炭素を除去する。つまり、二酸化炭素を樹木と土中に取り込み、酸素を大気中に放出する。しかし、永久凍土(氷点下の状態を保った厚みのある地表土層)、泥炭および草原(これらはエチオピアの山岳地帯および乾燥地帯の両者に見られる)もまた、炭素の吸収に役立っており、樹木と同様にこれらの保全、修復が必要である。

森林再生に最適な木は

エチオピアの「グリーン・レガシー」計画による森林回復運動に批判的な人たち [6]の中には、外来樹種の植林により生ずる危険性を訴え続ける人もいる。外来種は生態系の回復改善どころか、破壊する可能性があると言のだ。

これまでエチオピアは、農業用地として開墾された土地の森林再生を急ぐため、オーストラリア原産のユーカリを植林してきた。この木は19世紀末に同国に導入され、20世紀の間にさまざまなユーカリ属が植林された。そして、おもに薪や建設材料として使われた。この木は成長が早いが、主に使われている種は水源を枯渇させ、土壌浸食を誘発し、また、土壌中から栄養分を奪っている。

しかし伝えられるとことによると、今回は外来種のユーカリやアボカドだけでなく固有種の苗も植林されている [7]という。土地固有の樹木はその地で何千年以上もかけて進化してきたものであり、現地の病虫害に対する抵抗力を備えている。エチオピア政府の姿勢は、ただユーカリだけを多数植えるという考えを変えたということを反映していると言えそうだ。

しかし、外来種が理にかなっていることもある。例えば、中央アメリカ原産のカリアンドラ [8]とよばれる低木種は、極めて生産性が高く、東アフリカでは高蛋白の家畜飼料の原料として使用されている。カリアンドラの種子は、小規模農家にとっては手ごろな価格なので広く利用されている。同様に、木材の原料に最適で成長が早い樹種を植林する際に外来種を選定することもあり得る。そのような場合は、植林の目的と周囲の環境をよく考慮して決定しなければならない。もちろん、生態系を詳細に考慮した計画を練る必要もある。

浸水が頻発する渓谷地帯では、木が水を吸収することで、他の植物にとって不都合な状況を回避できる。ユーカリは刈り取り後の復元力が強い。そのため、この木を一度株元で刈り取り、新しい芽を再び発芽させるという管理方法も用いられている。このようにして薪の継続的補給が可能となるので、この木が広く用いられている。

気候危機を簡単に解決できる特効薬はない。しかし、植林は解決方法の一つである。

既存の森林やその他の生態系を保護することは、新たに植林することと同様に大切なことだ。都市計画家は、都市が無秩序に拡大したり、人工構造物で埋め尽くされたりしないよう後ろ盾になるべきだ。東アフリカの農村部に住む若者たちは、農業の将来性を理解し国土の保全に情熱を注ぎ続ける必要がある。

石炭、石油およびガスといった炭素系燃料の使用削減にも是非取り組まなければならない。

森林再生は、世界に大きな影響を与える。あるエチオピアの積極的な地域団体 [9]は、近頃ボランティア活動に時間を割くとともに8ヘクタールの土地を再生させるための資金を寄付した。この団体のメンバーは、近い将来果樹が育つことを見込んで、全部で5000本もの植林と1200本もの草の挿し穂に何時間も精を出した。

この団体の気迫が世界中に広まったら、どのような好影響が出るかを想像してみてほしい。

校正:Mikako Kraviec [10]