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ネパールの希少言語、消滅へまた一歩近づく

カテゴリー: 南アジア, ネパール, 先住民, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 民族/人種, 言語

ギアニ・マイヤ・センとウダイ・ラージ。写真はサンジブ・チャウダリによる。許可のもとに掲載する。

ギアニ・マイヤ・セン・クスンダは有名でこそなかったが、言語学者たちにとっては、孤立し消滅寸前のクスンダ語 [1]を復活させられるかも知れない灯火のような存在だった。 ギアニは2020年1月25日、85歳で 亡くなった [2]

彼女は、クスンダ語を流暢に話すことが出来る最後の二人のうちの一人だった。2011年の国勢調査 [3]においてクスンダ民族の人口は273人だったが、現地調査によれば、ネパール西部に住んでいるクスンダ民族は実際のところ150人だけだという。

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ネパール代議院のガガン・タパ議員は、Twitterでこのように発信した。

クスンダ語の貴重な話者二人のうちの一人ギアニ・マイヤ・クスンダの死は、この言語にとって途方もない痛手となりました。彼女の死に心からの哀悼を捧げます。

クスンダ [6] の人々は、ネパール西部の村に定住を始める数世代前まで、狩猟採集を行う遊牧生活を送っていた。 近年、ギアニは研究者のウダイ・ラージ・アーリーがクスンダ語の習得に興味をもつ20人のグループに対して初の言語教室を開催 [7]するのを手伝った。彼女はウダイだけではなく、ブライアン・ホートン・ホジソン、ヨハン・ラインハルト、デイビッド・ワターズ、B.K.ラナ、マダブ・プラサド・ポカレルなど、数多くの研究者たちと協力して、クスンダ言語を復活させようとした。

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研究者のウダイ・ラージ・アーリー [9]はFacebookに次のように書き記した。

The country has lost an invaluable personality. Gyani Maiya Sen Kusunda had amazing linguistic capability. I worked with her on Kusunda language’s diverse aspects, structure, glossary for more than a decade. Having spent most of her life in anonymity, the country recognized her only at the last moment. During this time, although the national and international academics recognized her, the important documents produced working with her needs to be organized well. I appreciate her contribution towards the development of Kusunda language…

ネパールはかけがえのない人物を失いました。ギアニ・マイヤ・セン・クスンダは、非常に言語能力が高い人物でした。私は10年以上も、クスンダ語の多様な側面と文法、そして語彙について彼女に聞き取り調査を行いました。彼女が無名の人として大部分を過ごしたこの国は、彼女の最期にようやくそのかけがえのなさに気付いたようです。国内の、そして国際的な学者は、彼女の存命中からその価値を認識していました。ギアニが遺してくれたすばらしい史料は、必ずやきちんと整理されなければなりません。クスンダ語に対する彼女の功績に深く感謝すると共に、謹んで哀悼の意を示します。

「今ではもう誰もクスンダ語を話題にしません」と、ウダイは嘆く。「しかし、われわれにはまだ希望が残っています。彼女の妹、50歳になるカマラ・セン・カートライは、クスンダ語を自由に操れるのです。われわれはどうにかして彼女の助けを得て、この言語を復活させなければいけません。」

Sangnaan wein(クスンダ語で「安らかに眠れ」)、ギアニ・マイヤ!

校正:Sumiyo Roland [10]