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選挙を目前に控え、ロシアによる偽情報、サイバー攻撃、選挙介入に直面するウクライナ

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, ウクライナ, ロシア, テクノロジー, デジタル・アクティビズム, 国際関係, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治, 選挙
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サイバー空間に侵入する灰緑色のミニチュア兵士たち。フィリップ・ストヤノフスキ氏による画像(CC-BY)

(本記事の原文は2019年3月26日に公開されています)
2019年3月31日(日) [2]、ウクライナ国民は2014年ウクライナ騒乱以来、初となる通常国政選挙へ向かう。

クリミア半島が依然としてロシア軍に占領され、国東部では引き続き軍事衝突が起きているウクライナでは、極右翼の活動 [3]が激化し、国内外の情報操作の主要ターゲットとなっている。

ウクライナは2014年以来、偽情報戦の集中攻撃を受けており、多くの政治関係者の企てによって民主的発展の芽が摘まれている。大統領選挙・議会選挙はウクライナの民主主義と国家安定のための重要な試金石となるだろう。

フェイスブックはこれらの政治活動に対抗できるか?

多くの政治活動は、ウクライナで最も人気のある [4]フェイスブックで行われた。シビルソサエティやメディアグループの粘り強い努力にも関わらず、フェイスブックは過去にウクライナの偽情報問題に対してほとんど対応してこなかった。しかし、2019年1月に同社は対応を改め、これらの問題に対し、いくつかの対抗処置を講じたと公に発表した。

国外からの影響力の脅威により、同社は選挙期間中のウクライナに対する方針を変更 [5]し、ウクライナ国外(関係のある政治家、政党、政治的スローガンやシンボル、有権者を動員もしくは妨害することも含む)から購入された政治広告の掲載を全面的に禁止し、ユーザー行動を密接に監視すると明言した。

1月17日、同社は迅速に2つの悪意ある操作に関連した多数のフェイスブックとインスタグラムのページとアカウントを削除したと報告した。 [6]これらはロシアを起点としたもので、主なターゲットの中にウクライナのユーザーが含まれているらしいとのことだった。

削除された289ページに関与していたグループの1つは、中央アジア、コーカサス、バルト諸国、中東欧諸国で活動していた。

同社はまた、特にウクライナ国内で運営された107ページと41のインスタグラムのアカウントを削除し、それらの活動を「素性や行動を偽るために、フェイク・アカウントのネットワークを作成していた」とした。これらのアカウントとページはロシアの政府系通信社スプートニク [7]の社員にリンクしていたが、彼らの背後で活動していたユーザーたちは自称ウクライナ人であった。

同社によると、ウクライナを対象としたネットワークは、様々なトピックの地元ニュース記事を拡散し、広告費用として約2万5000米ドル [6]を支払っていた。このグループの活動は2016年米大統領選中 [8]にオンラインによる影響力戦略を行っていたことが発覚した、ロシアのインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)の手法と類似していた。

ロシアのネットによるウクライナへの偽情報攻撃は今に始まったことではない

ロシア政府関係者および関連のある組織が、ウクライナをターゲットとした偽情報キャンペーンを少なくとも2014年を遡る前から行っていたという十分な証拠がある。

2016年、ウクライナのインターネットポータルTexty.org.uaは、2,000を超えるフェイスブック・プロファイルから構成された組織的ネットワーク [9]を発見したが、これはロシアのトロール・ファーム(情報工作組織)とリンクしており、8ヶ月近くウクライナ政府の転覆を目的としたオンライン・キャンペーンを主導していた。

ごく最近のVoxUkiraineの調査 [10]では、IRAにリンクする900万以上ものツイートを再検証したところ、そのうちの75万ツイートがウクライナ関連であった。この偽情報キャンペーンは、2014年ウクライナ騒乱 [11]によって火が付き、クリミアの占有と併合を通して着実に広まりを見せた。このキャンペーンは、マレーシア航空MH17 [12]がウクライナ東部で墜落した翌日、さらに拍車がかかった。

#Euromaidan protesters fill central Kyiv on Dec. 1, 2013. Photo by Alexandra Gnatoush. Used with permission.

2013年12月1日、#ユーロマイダンの抗議者がキエフ広場を埋め尽くしている。アレクサンドラ・グナトーシュ撮影。掲載許可済み。

上記およびその他の例はオックスフォード・インターネット・インスティチュート [13]の偽情報関連の研究者たちに、ウクライナアはおそらく「世界的に最も進んだコンピューター上のプロパガンダ活動のケース」であると言わせるものだった。

また、市民ジャーナリストや第三者機関の研究者たちは、ロシアの偽情報に対抗し、ウクライナ政府と国際的社会の両方へ偽情報の脅威を警告する重要な役割を担ってきている。 [14]ポロシェンコ大統領がフェイスブック社にウクライナ事務所を開設することを提案する [15]など、政府関係者の偽情報への取り組みや働きかけにも関わらず、同社は2019年までこの問題に対して積極的に行動 [16]を起こすことはなかった。

2016年米国大統領選挙にロシアが干渉したため、政治家だけではなく国民の世論が高まった米国では、フェイスブック社に偽情報の脅威に対して更なる積極的対応を強いているように見える。特にロシアが偽情報の発信元で民主的選挙を標的とするならば、尚更のことである。

しかし、同社の最近の取り組みが正しい方向へ向かっているとしても、いまさらどうにもならないかもしれない。

偽情報、サイバー攻撃、およびその他の選挙妨害が増加

フェイスブックや他のプラットフォームがポリシーを変更したり、特定の国でのユーザー活動監視のためにより多くの時間や労働を費やしたとしても、できることは限られている。その上、これらのポリシーのいくつかを変更することは、悪意ある活動を地下に潜らせることとなり、状況を悪くさせる可能性がある。

フェイスブックユーザーたちは、一見ウクライナの政治的コンテンツに見える人気ページのいくつか [17]にすぐに気がついた。それらは、フェイスブック社が人気の投稿ページと確認済みアカウントの管理者の身元と発信場所の検証を強化した後も、ロシアから実行されていた。2018年、ウクライナ国家保安局は、ロシアがウクライナ東部で人気のフェイスブックグループの管理者を「買収」 [18]し、ウクライナ国民を雇って国内向けニュース・ウェブサイトを開設し、登録することで今後の選挙へ影響を及ぼす準備を進めていると警告をした。雇われた人々は、自身のソーシャルメディアのアカウントやウェブのプラットフォームを通じてロシア人が作成したコンテンツを拡散し、見返りとして金銭的報酬を受け取っていた。このような事例では、ウクライナ国外からの政治的介入を暴き、反撃することはもちろんのこと、検出はさらに難しいと言える。

ウクライナ選挙タスクフォースのオブザーバーは、ロシアの目的は特定の候補者をサポートするのではなく、「選挙プロセスを完全に非合法化する [19]」ためのものだと語った。

国外からの介入だけでも十分大変なのに、政治的「botバスター [20]」のようなウクライナの活動家たちは、国内政治家が偽アカウントを使ってオンラインで世論を操作しようと試みる証拠を暴露し続けている。加えて、問題がある時代遅れな政治的広告規制を今のネット社会に適用することは、さらなる介入操作の機会を与えている。(訳注:ボット(bot)とはコンピュータを外部から遠隔操作するためのコンピュータウイルスで、バスターとはそれを駆除する人のことである)

現在、ウクライナに対する偽情報攻撃は相変わらず活発で [21]、他のテクノロジーに関係する事例もまた、増加傾向にある。選挙のわずか10日前、ウクライナのサイバーポリスの長官は、ロシアと関係を結んでいるハッカーグループがウクライナの選挙インフラに対し、さらなる攻撃 [22]を準備していると発表した。数日後、ウクライナの内務大臣名義で、選挙規則に関する偽の電子メール [23]が送信された。

選挙時、国外からの選挙介入に対抗しているウクライナ国家保安局だけでなく、活動家、研究者や市民社会団体は、投票日が近づくにつれて事実確認、公共コミュニケーション、現地での選挙の監視体制をサポートし続けている。

校正:Sumiyo Roland [24]