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コロナには効果がなくても長生きできる?日本発祥のスーパーフード

カテゴリー: 東アジア, 日本, 健康, 市民メディア, 意見, 食, COVID-19
natto over rice with miso soup

FlickrユーザーのMasafumi Iwai [1]による納豆ごはんの写真。CC BY-NC 2.0 [2]

COVID-19の世界的影響 [3]に関するグローバル・ボイスの特集記事をぜひご覧ください。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、とある日本の国民食が以前にもまして人気を集めている。3月から4月にかけて、日本ではトイレットペーパーや手指消毒剤、マスクなどの売り切れが続出したが、納豆も例外ではない。免疫力を高める働きがあるとされる、このネバネバと糸を引くにおいのキツい大豆発酵食品もスーパーマーケットの棚から姿を消した。しかし幸運なことに、納豆は誰でも自宅で作ることができる。

チーズと比較されることもある [4]納豆は、大豆を枯草菌 [5]の一種である納豆菌で発酵させた [6]伝統的な日本食だ。その豊かなうま味 [7]は多くの人に愛され、日本の多くの地域において安価で人気のある定番食品となっている。食べ方は様々で、ご飯やトーストの上にのせたり、巻きずしにしたり、はたまたスパゲッティに入れたりする。あるいは、からしやポン酢と混ぜて納豆だけを食べることもある。

日本の消費者リサーチ会社のNEXER(ネクサー)が3月中旬に実施した調査によると、調査を受けた日本人の40%近く [8] が「免疫力を高める」ために特別な食材を日々の食事に取り入れていることがわかった。ニンニクやショウガの人気が高い一方で、ヨーグルトや納豆などの発酵食品がトップにランクインした。

また3月には、納豆が新型コロナウイルス感染症を予防するといううわさがソーシャルメディアで広まった。これらのうわさが急速に広まった主な理由は、もともと納豆と所縁が深い [9]とされる茨城県 [10]や岩手県において新型コロナウイルス感染症の感染者率が比較的低かったからだ。買い物客による納豆の 買い占め [11]が始まると、消費者庁は注意喚起 [12]を発行し、食品が新型コロナウイルスを予防するという考え方を否定した。

納豆の品薄状態は4月下旬まで続いたが、その頃になると納豆は正露丸 [13]紅茶、ニンニクやコカイン [14]などと同じく偽のコロナ「特効薬」であることが報道 [15]され始めた。

日本人に長寿が多いのは納豆のおかげ?

納豆は新型コロナウイルス感染症の予防には効果がないが、最近の2つの日本の研究によると、この発酵した「スーパーフード」は寿命の長期化には本当に関係があるかもしれない。高山市で1992年から2008年まで [16]の間に29,000人の人々の食生活と健康状態を追跡調査した研究では、最低でも週に1回、1パックの納豆を食べた人は、ほとんど食べなかった人よりも心血管疾患で亡くなるリスクが25%も低い [17]ことがわかった。

natto strings

ネバネバと糸を引く納豆。今すぐに食べられる状態。ネヴィン・トンプソン撮影。

国立がん研究センターが約9万人の中高年を15年以上調査した別の研究 [18]では、大豆発酵食品、特に納豆の摂取量は心血管疾患とがんによる死亡リスクの低下 [19]と(直接的な関係がないとしても)相関関係があることがわかった。

納豆の摂取と寿命の長期化の関係はまだ解明されていないが、一説によると、納豆の糸に含まれるナットウキナーゼ [20]という酵素には血餅を分解する働きがあるため、心疾患を抑制 [21]する効果があるのではないかとされている。

「発酵に没頭し、喜び、自由を感じる」

我慢できないほど豊かなうま味を持ち、スーパーフードとして定評があるにもかかわらず、納豆の特徴的な木の実風のにおいやネバネバとした食感が苦手な人もいる。一般的に、納豆は東京をはじめとする東日本での人気が他の地域より高い。

natto starter

自宅で納豆を作る際は、発酵プロセスを簡略化するためにパック納豆を種菌として使用する。ネヴィン・トンプソン撮影。

私も初めのうちは、あまり納豆が好きではありませんでした。」こうグローバル・ボイスに語ってくれたのは、作家であり写真家でもあるジョン・アッシュバーン [22]氏だ。「サーシャ(アッシュバーン氏の妻)がにおいを消すために、ウズラの生卵と刻みネギをいれて出してくれたのですが、その時から段々と好きになりました。」

京都府に長く在住しキノコ栽培家と食糧ハンターを自称するアッシュバーン氏は、日本食に関する有名なライターでロンリープラネット社から日本食に関するガイドブック [23]も出版している。

アッシュバーン氏も家で納豆を作っている1人だ。

「発酵食品作りは没頭できて、楽しくて、自由になれるんだ。自分の納豆を作ることで食品業界の圧政からも逃げられるしね。」アッシュバーン氏は言う。「何か特別で、自分だけのもので、二度と同じものは作れない、そんなものを作っている感覚があるんだ。同じものを作りたいと願ったとしても、僕の納豆は毎回違うものになるんだ。」

アッシュバーン氏は、使う豆や作り方を変えてみるのが好きだという。豆を蒸したりゆでたり、また時には昆布 [24]と一緒に、もしくは豆だけでじっくりと加熱して作ってみたりするという。

「それぞれに心をもった、いたずらっぽい小さな生き物みたいだ。工業的な規模でない量で行う発酵の作業は、料理というよりは錬金術みたいなんだ。」

自家製納豆の作り方

日本以外では、納豆が人気の国であってもなかなかスーパーマーケットで手に入れることはできない。しかし、正しい材料と調理器具さえあれば、納豆は自宅でも作ることができる。

低温調理法 [25]を使えば、納豆はオーブンで作ることができる。容器は殺菌済みのガラス瓶もしくはプラスチック容器でも構わない。最も簡単な方法はInstant Pot [26] (マルチ電気圧力鍋の一種)または圧力鍋 [27]を使う方法だ。鍵となるポイントは発酵に必要な納豆菌を含む種菌 [28]を手に入れることだ。パック入りの納豆を最初の種菌に使って、より多くの納豆を作るのが手っ取り早い。

校正:Kiyoshi Harada [29]