ベネズエラ、人々が一丸となり、カラカスのお年寄りに食料供給活動

グッドネイバープログラムのメンバーたち。 写真、許可を得て使用、インスタグラムはこちら

ベネズエラ首都カラカス出身の90代女性、フリエタは、ヴィンセントが食料の入った袋を届けてくれるたび、喜びと感謝で満たされる。今週はチーズ、お米、焼き豚、スープやパンなどを受け取った。彼女のように、400人の「アブエリトス」(スペイン語で祖父母、またベネズエラで一般的に高齢者を指す言葉)が、グッドネイバープログラム(Plan Buen Vecino) のおかげで毎週食料の届け物を受け取っている。

グッドネイバープログラムに登録している、「アブエリタ」(お年寄り女性、またはおばあさん)。 写真、許可を得て使用、インスタグラムはこちら

新型コロナウイルスの拡散を抑えるため、政府は3月16日、施策の一つとしてソーシャルディスタンシング(距離を置くこと)を導入した。しかしその後、別の問題が浮かび上がってきた。社会で最も弱い人たちはどうやって食料を購入すればいいのだろう?外出を怖れる中、代わりに買いに行ってくれる人がいなかったり、それに必要な予算もなかった場合はどうするのだろう?
策がカラカスで導入された2日後、有志の集まりで結成されたボランティア組織、グッドネイバープログラムが誕生した。その目的は、周りから放棄されてしまったお年寄りに食料を届けるということ。ベネズエラでは、ある団体や報道機関が、国の社会政治危機や人道的危機で家族が移住してしまったり、国からの支援のない高齢者たちを指して「オルファンダット」(放棄)という言葉を使う。ベネズエラの民間団体コンヴィーテによると、家族の移住によっておよそ1億人の高齢者が取り残されている。

グッドネイバープログラムの物流担当の1人、ユライマ・メルカドは、社会的隔離の手段の一つとして各企業やレストランが閉鎖されたことに伴い、使いきれない食材が大量に余ってしまうレストランが出てきた、とグローバル・ボイスに語った。このようなレストラン関係者を知るプログラムの創設者、ヴェロニカ・ゴメスは、この食材を高齢者に配るプロジェクトを設置した。

グッドネイバープログラムを始めたゴメスに、メルカドとヴァレンティーナ・ガルシアが加わった。また友人や知人が、包装を担当したり、機材や調理場を提供したり、各自のオートバイで食料の配達を行うなどして、協力している。

その中の1人、ヴィンセント・ヴェルティーニが寄付を集め分配する役目を担っている。さらに彼は、寄付で賄っている貴重なガソリン代を節約できる効率的な配達順路の計画もする。現在ベネズエラでは、その寄付が非常に少ない

ヴィンセントはグローバル・ボイスに対し、グッドネイバープログラムがベネズエラのような国に及ぼす影響について語った。

No podemos curar la pobreza, pero sí podemos poner un granito de arena y ayudar a la gente que más lo necesita, que en el país es mucha. Por ahora, nosotros nos dedicamos a un pequeño grupo: los “abuelitos” más necesitados.

貧困に終止符を打つことはできない。だが、自分たちのできることとして、最も助けを必要としている人たちに寄り添うことはできる。この国にはそんな人たちが、あまりにもたくさんいる。今は、一番不利な立場にある「お年寄り」に重点を置いている。

ヴェロニカの善意と率先力で生まれたこのプロジェクトは、今現在およそ7人の配送担当、キッチンに3人、そして5人の物流担当が、全て基本ボランティアであたって成り立っている。彼らはみんな「ネットワーク」の一部だと、ヴィンセントは言う。

グッドネイバープログラムに登録している「アブリエト」(高齢の男性またはおじいさん)。写真、許可を得て使用。インスタグラムはこちら

初めはランチと数軒のレストランからの寄付の食料の配達だったが、今は各企業や市民組織団体からの寄付のおかげで10種以上の品と5食分の食事が届けられている。メルカドによると、目下グッドネイバープログラムは、1日に100人、1週間に400人の「お年寄りたち」に食料を届けている。

現在、プログラムは急激に広まっており、運営は100パーセント支えられている、とメルカドはつけ加える。5月半ばまでには、毎週1000食分の食事を配れるようになるつもりでいる。ヴェルティーニは、「優れた運営成長、素早い学習、さらに変化に対応する」ことがプログラムの成長過程で非常に大事だと考える。またベネズエラでのもう一つの情報源として広く使われているソーシャルメディアも重要な鍵となっている。

ヴェルティーニは、ソーシャルメディアにおけるグッドネイバープログラムの存在の与える影響が「雪だるま式に膨らんでいく」効果を生み出したと考えている。彼は、当初プログラムのメンバーが、ソーシャルメディアを通じて寄付を呼びかけていたことを思い出す。それが今ではソーシャルメディアを利用している人たちが、役に立つ製品を提供してくれる。プログラムの運営は、メンバーの熱心な働き、ベネズエラの社会、さらに技術の利用と共に成り立っていると、メルカドは説明する。

努力を続けています。そしてその内容をお伝えします。殺菌ジェル40個が一人暮らしのご高齢の人たちに@planbuenvecino #leatherheart2020 #Covid_19 pic.twitter.com/jFy1XjVcYh(訳注;6月7日現在、このリンク先は閲覧できない状態になっている) を通して寄付されました。                                                                                                                                                                                                                                   
– leatherheart (@leatherheartfun) April 16, 2020(訳注;6月7日現在、このリンク先は閲覧できない状態になっている)

市民が自発的に始めたにも関わらず、メンバーは目標を達成するために綿密に練られた手順に従っている。彼らは近所の住民たちから身寄りのないお年寄りの情報を得て、それを確認してデータに登録する。そして彼らを見つけ、プログラムの説明を行い、配達経路を設定する。もしお年寄りに家族、または援助してくれる人がいる場合、プログラムの利用はできない。

さらに別の方法も作り上げた。より多くの人に届け、役割分担をするため、高齢者の多く住む建物の住人に、「食料」の配達を任せることにした。それだけでなく、配送品の生産過程において、全て十分距離を取り、食料を洗い、包装作業をする時は手袋とマスクを着用するなど、生物安全性の専門家による厳しい衛生基準に従って行われている、とヴェルティーニは説明する。

メルカドとヴェルティーニはグッドネイバープログラムが、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行を乗り越え、国内の別の地域に広がって行ってほしいと願っている。

ヴェルティーニは希望と立ち直りの精神をこうまとめる。

De cada tragedia y cada caos pueden surgir maravillas.

悲劇と混沌から奇跡が起きることもある。

前代未聞の世界的健康危機と最悪の人道危機を同時に迎えている中、今現在グッドネイバープログラムの恩恵を受けている400人のベネズエラのお年寄りたちにとって、これは間違いなく奇跡のような心境であろう。

 

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