アフガニスタン、戦争は産科病棟の新生児をも犠牲に

(訳注:原文掲載は2020年5月14日。記事内容は当時の情報に基づく。)

5月12日、アフガニスタンの首都カーブルにて、新生児と母親が襲撃された現場で警備にあたる治安部隊。エッザトゥッラー・メフルダッド撮影。本人の許可を得て掲載。

5月12日の朝、アフガニスタンの人々は目覚めると、新たな2件のテロ攻撃について知った。そして、進行中の戦争において残忍性がこれまでにないほどのレベルに達していると思い知らされた。今回は新生児とその母親さえ容赦されなかったのだ。

攻撃にさらされるカーブルの産婦人科医院

その日、首都カーブル西部のバルチ地区で国境なき医師団が運営する産科病棟を、3人の戦闘員が襲撃した。グローバル・ボイスは、妊婦のソラヤ・イブラヒミ (31歳) の家族を含む、攻撃を目撃した複数の人たちから話を聞くことができた。ソラヤは11日の午後11時に病院に運ばれ、翌日午前1時に出産した。家族は彼女の帰宅を待っていたところ、近所の人から病院が襲撃に遭っていることを知らされた。

家族は病院に駆け付けたが、建物には既に戦闘員が突入し、母親の顔も見ていないような新生児を殺し始めていた。ソラヤの子は助かったが、彼女自身は死亡した

「病院の警備員は非武装で、戦闘員は難なく侵入することができたのです。」目撃者のハビブッラー・アミリ―はグローバル・ボイスに語った。「現場に警察が到着するのに30分かかりました。30分間、戦闘員は抵抗を受けることなく殺害を続けたのです。」

医者と看護師の多くは病院内の避難室を把握していたため逃れることができたが、新生児や妊婦、その他の女性患者は銃弾を避けることができなかった。ジャーナリストのアニサ・シャヒードによると、女性3人と子ども1人が入口付近で銃殺され、女性7人はベッドの上で殺害された。女性2人は手術室の床の上に倒れ、1人は我が子を胸に抱いたまま死亡したほか、看護師1人は焼死したという。

病院のスタッフであるワヒダ・ムフタ―ルはフェイスブックに投稿した。「私たちはどうして母親たち全員を避難室に連れて行くことができなかったのか。この後悔は私をひどく苦しめる。」また、ある女性は避難室に連れて行かれ、その場で出産した。その間も部屋の外では、戦闘員が人々の殺害を続けていた。

病院の外では何百人もの人々が、病院内に閉じ込められた愛する人の安否を心配する中、戦闘員は4時間にわたってアフガン治安部隊と銃撃戦を展開した。アフガン保健省は24人の女性と新生児がこの攻撃で犠牲になったと報じた 

エスカレートする暴力、死後も攻撃の被害に

東部のナンガルハール州では、地元警察のトップであるシャイフ・アクラムの葬儀に参列していた500人の人々の中に自爆犯が紛れていた。イマーム(イスラム教における指導者)が参列者に整列を促し、祈りを開始した直後だった。爆発が人々を切り裂き、30人近くが死亡、約70人が負傷した。

目撃者のナイーム・ジャン・ナイームはニューヨーク・タイムズ紙に語った。「シャイフ・アクラムの遺体は爆発地点の近くにありました。彼の身体は亡くなった後に傷を負ったのです。」

戦火の中の米タリバン和平合意

これらのテロ攻撃は脆弱な和平プロセスのさなかで起きた。タリバンと米国は今年2月29日、戦争を終結に近づけるための和平合意に署名しており、この合意によって国内の暴力が削減され、アフガン政府とタリバンとの対話が促されることが期待されていた。

しかし、タリバンの捕虜5000人の解放をめぐって、交渉は大きな行き詰まりを迎えた。アフガン政府はそのような多数の捕虜の解放を拒否し、最終的に解放されたのはわずかな人数にとどまった。

人道的な停戦を求める国際的な呼びかけにも関わらず、タリバンは地方部において戦闘を継続している。アフガン政府はカーブルの病院への攻撃とナンガルハールでの自爆テロに関して、タリバンを非難している。アシュラフ・ガニ大統領は政府軍に対して、それまでの「積極的な防衛」を脱し、タリバンへの攻撃に移行するよう指示した

これに対しタリバンは、政府は和平交渉を妨害しているとの声明を出し、病院への攻撃について政府を非難した。また、タリバンは政府と戦争をする準備は整っているとも述べた。

シーア派のハザラ人に繰り返される攻撃

国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)代表のデボラ・ライオンズは驚きを表明している。

誰が生まれたばかりの赤ちゃんとお母さんを襲うのだろう? 一体誰が? 限りなく無垢である赤ちゃんを! なぜ? 人間は、残虐行為を決して支持しない。

カーブルの産婦人科医院とナンガルハールの葬儀で本日発生し、多数の民間人犠牲者を出したテロ攻撃について、UNAMAはショックと不快感を表明する。アフガニスタンで活動する国連は、攻撃に関与した者たちが正当な裁きを受けることを要求し、犠牲者とその親族に哀悼の意を表する。

ナンガルハールでの自爆テロについては「イスラム国 (IS) 」が犯行を認めている が、カーブルのバルチ地区で発生した新生児と母親の銃撃に対しては、いずれの組織からも犯行声明は出されていない。バルチ地区はシーア派のハザラ人が主に居住するエリアであるが、2016年にISが犯行声明を出して以来、特に攻撃の対象となっている。

ハザラ人コミュニティーに対する過去の攻撃には、モスクや教育施設、スポーツ施設、結婚式場での自爆テロも含まれる。それらの攻撃により、祝うため、哀悼するため、学ぶために集まった多数の民間人が犠牲になった。

住民の一人であるアミリ―はグローバル・ボイスに語った。「病院で起きたことは苦しみの限界を超えています。これはもう破滅的な状況です。10代の若者たちは教育施設で虐殺され、私たちは結婚式場で殺されます。モスクも安全ではなく、今度は病院です。私たちは本当に絶望的な状況に置かれています。この手を伸ばしても大空には届かず、この足でしっかりと大地を踏みしめることもできないのです。」

校正:Yoko Higuchi

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