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中東の国々、テロやCOVID-19に乗じて非常事態措置を継続的に課す

カテゴリー: 中東・北アフリカ, アルジェリア, エジプト, スーダン, チュニジア, パレスチナ, モーリタニア, モロッコ, ヨルダン, Censorship, メディア/ジャーナリズム, 人権, 市民メディア, 言論の自由, COVID-19, GV アドボカシー
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チュニジアの首都チュニスの街を消毒する市の職員。写真提供者: [1] Lost in Tunis [2] ブログ[掲載許可済み]

世界中の政府は、COVID-19への対応として緊急事態を宣言し、パンデミックを阻止するための例外的な対策を取っている。

米国 [3]カナダ [4]欧州諸国 [5]マレーシア [6]南アフリカ [7]といった自由民主主義国家では、封鎖下での移動を制限する緊急措置を取った。同様に、中東や北アフリカ(MENA)でも、緊急事態を宣言し、夜間の外出禁止令や強制的な自宅待機などの例外的な措置を講じることとした。

数十年にわたり、政情不安と紛争に悩まされている地域では、政府当局は長期間、例外的 かつ一時的緊急命令を用いて抑圧を正当化し、人権を制限してきている。この先例に基づき、多くの政府は現在、コロナウイルス危機を利用して、人権、特に表 現の自由への取締りをさらに強化している。

緊急事態とは

病気や自然災害などの差し迫った脅威に直面した場合、国家は一時的に例外的権限を行使できるようにする緊急事態を合法的に宣言することができる。これには、移動の制限や集会の禁止など基本的人権および自由への制約が含まれる場合がある。

しかし、国連高等弁務官事務所(OHCHR)では、以下のように、政府はこれらの措置を発動する際には、「その実体的、地域的および時間的範囲に関連する措置を国民に知らせる必要がある」としている。

緊急時の権限は、政府への反対意見を押しつぶし、国民を抑制し、まさに権力保持の時間を持続させる武器であってはならない。 それらはパンデミックに効果的に対処するためだけに使用されるべきである、と @UNHumanRights [8] の長官は語った。

国際人権法の下では、緊急事態が政府に付与する権限には制限がある。「緊急時のルールに従い実施されるすべての措置は、状況の緊急性によって厳密に要求されるものに相当すべきで、限定されるものとする。(中略)軍は治安維持の機能を遂行すべきではない」と、OHCHRは推奨している [12]

特定の基本的人権を停止することはできない。3月20日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ [13]はヨルダンの緊急事態宣言に対して、基本的人権には「生命の権利、拷問および虐待の禁止、差別の禁止、および信仰の自由、ならびに公正な裁判の権利および恣意的拘留の禁止および拘留の司法審査の権利が含まれる」と述べた。

MENA [14]、緊急事態の権限を迅速に宣言

MENA地域では、COVID-19のケースが数件しかない場合でさえ、政府が迅速に対応し、全権を行使した。

3月5日、パレスチナのマフムード・アッバース大統領は、ベツレヘム [15]市でコロナウイルスの症例が報告された後、30日間の緊急事態を宣言した。そして、モーリタニア [16]は3月13日、国内での最初の症例が報告された後、先例に従い、緊急事態を宣言した。

3月16日、スーダン [17]は、COVID-19患者が死亡した後、緊急事態を宣言した。翌日、ヨルダンのアブドラ2世国王は、正当な理由を示さずに、「新聞、広告、およびその他のコミュニケーション方法を公表する前に監視し、マスコミを検閲および閉鎖する裁量 [13]」など、広範囲な権限 [18]を首相に付与する国王令を発表した。

モロッコ [19]では、3月20日にモハメド6世国王が緊急事態を宣言し、「COVID-19の流行に立ち向かうために必要なすべての措置を講じること」を政府に許可した。

政府は例外的な措置を迅速に採用できるようになり、議会または司法の監督なしに、一般的な封鎖と夜間外出禁止令を課し、集会を禁止し、法令により学校、企業、裁判所を閉鎖することが可能となった。

一時的なものから永久的なものへと

これらの措置はウイルスの蔓延を抑えるために正当化される一方、緊急時の権限は法の支配を損なう危険性をはらんでいる。

特にMENAでは、政府と権威主義的政権は、民主主義機関と人権を長期間にわたって停止するために、緊急事態を悪用した前科がある。

たとえば、MENAの多くの政府は、以前「テロとの戦い」を利用して権限を拡大し、一時的な緊急事態を数十年続く永続的な緊急事態へと変えた。

アルジェリアは1990年代のイスラム過激派との激しい紛争の後、ほぼ20年間 [20]緊急事態の支配下にあった。平和的抗議行動は禁じられ、政治的自由は抑圧され、メディアは検閲され、恣意的な拘留が一般的なものとなった。それは、2011年のアラブの春をきっかけに、解除された。

エジプトは、1981年にアンワル・アッ=サーダート元大統領が暗殺された後、30年間、緊急事態 [21]を続けていた。抗議者たちはアラブの春を機に緊急事態を解除するよう要求し、2012年、最終的に解除を手にした。しかし、2013年1月、ムハンマド・モルシー大統領が2013年に軍事クーデターにより解任されたため、新たな社会不安を抑えるために緊急事態法が発令された。

それ以来、エジプトは2か所の教会へのテロ攻撃が発生した2017年から、非緊急時と緊急時の期間を交互に繰り返し、定期的に緊急事態措置を延長した。これらの緊急措置は、公共の場での集会、報道の自由を制限し、いつ何時でも、事実上どんな理由があろうが、人々を拘束できる権力の体系的乱用をもたらした。 2か所の教会へのテロ攻撃 [22]が発生した2017年から、非緊急時と緊急時の期間を交互に繰り返し、定期的に緊急事態措置を延長した。これらの緊急措置は、公共の場での集会、報道の自由を制限し、いつ何時でも、事実上どんな理由があろうが、人々を拘束できる権力の体系的な乱用をもたらした。 

エジプトはほとんどの人権指数における下位国であり、世界報道自由指数は166位にランクされている [23]

チュニジアは大統領警備員を乗せたバスに対するテロ攻撃を受けて、 2015年から [24]緊急事態下にある。その後も緊急事態は継続的に延長され、2017年、人権に関する国連特別報告者はその延長が国際法違反 [25]であると公表 [25]した。

権力乱用の誘惑

MENA地域全体で、軍は緊急時のCOVID-19対策を実施する上で重要な役割を果たしており [26]、表現の自由に対する取締りを強化している。 

2020年3月、ヨルダン、アルジェリア、アラブ首長国連邦、オマーン、モロッコ、サウジアラビア、イエメンの各国は、新聞とCOVID-19の間に相関関係はないものの、追って通知があるまで新聞の発行禁止令を発令した [27]

さまざまな政府も、偽情報やフェイクニュースを犯罪とする広範囲なサイバー犯罪法を採用した。2020年4月、アルジェリア政府は「公の秩序と国家の安全」 [28]に有害と見なされる「フェイクニュース」を犯罪とする法律を可決した。 

偽情報への対抗処置は、国家の公式談話に異議を申し立てるコンテンツを投稿する人を犯罪者として扱う根拠として、この地域で使用されてきた。モロッコは、「うわさを広めた」か、ソーシャルメディア [29]でCOVID-19に関する「フェイクニュース」を広めたとして、少なくとも12人を拘束し起訴した。

各国はウイルスの蔓延を抑制しているにもかかわらず、依然として正常に戻るためのタイムラインを示すことなく、緊急事態を実施している。ヨルダン [30]チュニジア [31] は、コロナウイルスが「封じ込められている [30]」にもかかわらず、潜在的な第2波 [32]の懸念に基づいて、夜間外出禁止令を発令し続けている。

中東では、かつてテロとの戦いを盾に緊急事態を正当化し維持してきた歴史があるが、今まさに、COVID-19を口実に、圧倒的権限を新たに正当化している

国家安全保障と基本的権利のバランスを見つけることは、解釈の余地が十分に残るグレーゾーンである。

市民が最も脆弱で保護を必要とする事態に権力を乱用する誘惑は現実のことである。チェック&バランス (訳注:政治権力が特定部門に集中するのを防ぐために、権力相互間で抑制と均衡を保つこと)の強力なシステムは、緊急時に基本的な権利を保護する必要がある。結局のところ、「あらゆる国の試練は危機の際に国民をどのように扱うかである」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東地域副部長であるマイケル・ページ氏は語っている [13]

校正:Kiyoshi Harada [33]