香港:とにかく燃やす! 中元節に現世へのうっぷんを晴らすアーティストたち

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の肖像が印刷された冥銭。画像提供:立場新聞、掲載許可済み。

以下の記事は202091日、立場新聞に中国語で 公開された記事を翻訳したものです。コンテンツパートナーシップを介して、グローバル・ボイスに掲載しています。

今年の 中元節 は91日と2日に行われ、香港のアーティスト一団がこの際とばかりに政治に対する怒りを発散させた。

中国の民話では、中国の旧暦(太陰暦)の七月は鬼月であり、中元節はその月の14日目または15日目にあたる。

伝説によると、鬼月中は地獄の門が開き、腹をすかせた幽霊が現世をさまようとされている。幽霊によっては、この際に愛する人々を訪問したり、敵に復しゅうをしたりする。中元節は、現世の人が死者と交流できる日なのである。

多くの中国由来の文化では、鬼月中は帰ってきている霊のためにお香や 冥銭、 衣類の形をした紙細工、黄金そして携帯電話までを燃やす習慣がある。この伝統的な儀式は、先祖に対する尊敬の念を表すものと考えられている。また、死者に対して抑えている感情を浄化して解放するためでもあるとされている。

今年の旧暦714日の中元節は、91日にあたる。香港のアーティスト集団が太子(プリンスエドワード)の水渠(ヌラ)道公園に集合し、手作りの紙細工を燃やしてさまよう霊たちに捧げた。「燒數薄」と名付けられたこのパフォーマンスは、地元アーティスト集団「C&Gアートパートメント」が2016年以来率先して行っており、政治的な基盤がある。「燒數薄」とは「帳簿を燃やす」ことで、広東語の俗語では「ばか野郎」という意味合いがある。

自分の未来の霊のために防護装備一式を2組作った、黃國才 (ケイシー・ウォン)。 画像提供:立場新聞、掲載許可済み。

アーティストの黃國才 (ケイシー・ウォン)は、黄色のヘルメットとガスマスクを含む抗議用装備1式を2組制作した。これは火炎瓶を投げつける「火の魔術師」と呼ばれる抗議者たち、そして催涙ガス弾を不活性化させる「減煙小隊」が使用する道具の一部である。両団体ともに、香港で1年間にわたって行われている逃亡犯条例改正案への抗議で前線に立っている。

ウォンは自作の背景について、こう説明した。

滅煙小隊和火魔法師都是我非常敬佩的抗爭角色,他們冒住自己生命危險為香港民主自由奮鬥… 現實世界冇勇氣掟磚或汽油彈,但我希望死咗後做到,所以燒定比自己。

火の魔術師たちと減煙小隊をとても尊敬しています。香港における民主主義と自由のために命を危険にさらして戦っているからです。(中略)現実の生活でレンガや火炎瓶を投げる勇気は僕にはありませんが、死後の世界でその勇気を持ちたい、と願っています。だから僕は、自分の未来の霊のためにいま、燃やすのです。

ケイシー・ウォン同様に、アーティストのマン・チャンは、ガモン手りゅう弾を制作した。チャンは次のように説明した。

現實世界中政權與人民武力不對等,便自製了手榴彈,希望可在陰間派上用場。

現実の生活では、国家と民衆の武力の差は大きすぎるので、霊界に行ったらガモン手りゅう弾を自己防衛に使いたいと願っています。

アーティストのマン・チャン制作のガモン手りゅう弾。画像提供:立場新聞、掲載許可済み。

アーティストのペギー・チャンは、フランス革命で自由・平等・友愛を象徴するそれぞれ赤、白、青色の投票箱を3箱制作。投票箱は、普通選挙権を願う国民の大志を表現しているとチャンは言う。  

さらに3箱の投票箱には、香港人にとって重要な意義がある3事件を示す番号である8964721そして831が書かれている。

アーティスト、ペギー・チャンによる投票箱。画像提供:立場新聞。

8964すなわち198964日は、北京で民主化を求めていた平和なデモに中国政府が武力弾圧をは、行い、100万人の香港人が抗議した天安門事件を意味している。

721すなわち2019721日は、元朗地下鉄駅襲撃事件 が起きた日付である。北京支持派の暴徒が、警察の黙認を受けて地下鉄の利用客を襲撃した時のことだ。

そして8312019831日に太子地下鉄駅で起きた襲撃事件 を意味している。帰宅中の抗議者を逮捕しようとしていた機動隊が、地下鉄の利用者を弾圧した時である。

チャンは、これら事件の記憶を消し去ることはできないと語った。

先週、香港警察は、元朗襲撃事件に関連して「暴動」の疑いで12人を 逮捕した 。被拘束者の中には、その当日、北京支持派の暴徒による襲撃で負傷した林卓廷(ラム・チュクテン)議員がいた。活動家らは、警察は歴史を書き換え、被害者を死刑執行人に仕立て上げていると批判している。

アーティストのリー・マンホーは,鎚矛を手にした巨大なクマのプーさんを制作した。プーさんのキャラクターは、習近平国家主席をからかうため、ネット民に広く使用されている。

アーティストのリー・マンホーが制作したクマのプーさん。画像提供:立場新聞。

他にもヘルメット、マスクや鹿など、香港で大きな政治的な意味を持つ紙細工がみられた。「鹿を馬と呼ぶ」は、黒を白といいくるめるという意味のある中国の慣用句であり、ここで鹿は真実を意味している。鹿の多くは、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の肖像が印刷された冥銭と一緒に燃やされていた。

C&Gアートパートメント」のキュレーターであるクララさんは、この風刺をこめたパフォーマンスは、人々が不満を声に出し、怒りを発散させる舞台になると説明した。

人間搵唔到人回應訴求,唯有試下其他渠道,例如陰間。

現実の世界では、だれも私たちの要求に応じません。だから霊界と交信するなど、他の手段を見いださなくてはならないのです。

校正: Shigeru Tani

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