ロックダウン中のインド、低所得世帯の子供たちをインターネット以前のテクノロジーで教育

Screenshot from an YouTube Video by ThinkZone.

携帯電話からシンクゾーンの教材を受信し、子供と共に教育活動を行う母親。シンクゾーン提供のユーチューブ動画からのスクリーンショット。

COVID-19を理由にロックダウンが実施されたインドでは、授業がオンライン環境となった。そのため、インターネットにアクセスできない遠隔地や低所得世帯の子供たちは、勉強についていくのが非常に困難な状況となった。

インドは3月にロックダウンに突入し、6月になってようやく徐々に制限を解除し始めた。インドの全世帯の4分の1しかインターネットにアクセスできないにもかかわらず、学校の授業は仮想環境へと移行した。

こうしたなか、オリッサ州の都市カタックにて、受賞歴のある非営利スタートアップが、教育に苦労している家庭をサポートする方法を見つけた。音声電話、ショートメッセージサービス(SMS)やラジオなどインターネットを使わないテクノロジーを通して、400の村で5,000人以上の子供を対象に低コストの教育を提供するというものだ。

社会起業家のビナヤック・アチャリヤは、5年前にこの方法を思いついた。地域の教育者たち、アンガンワディ(農村部の児童ケアワーカー)、そして小学校の教師たちとともに、資金不足のコミュニティーに住む子供のために、シンクゾーン(ThinkZone)という幼児教育の方法を開発した。

ロックダウン中、シンクゾーンの方法は効果があった。学校が閉鎖される中、シンクゾーンはオリッサの地元局FM 104 Choklateと提携し授業を放送した。「タイムズ・オブ・インド」紙のチャンドリマ・バネルジー記者は「まるでビデオと相互作用のないズームのようだが、十分機能している」と、シンクゾーンのブログラムを評した。

This is the place where ThinkZone’s Early-Childhood Education program started five years ago. Image via Thinkzone. Used with permission.

5年前、シンクゾーンの幼児教育プログラムはここで始まった。画像掲載許可済み。

シンクゾーンの教育者たちは他にも音声通話、自動音声応答装置(IVR)、そしてショートメッセージサービス(SMS)を使用して 学習課題 を提供する。この無料システムは2つの方法で利用可能だ。一つの方法は「プル・コーリング」で、保護者が指定された電話番号に電話、あるいはSMSを送信すると、毎日の学習課題にアクセスでき、もう一つの方法は「プッシュ・コーリング」で、1~2分間のIVRベースの通話と生徒の年齢と学習レベルに合わせたSMSによる学習課題を毎日受け取ることができる。

また、アチャリヤ率いる組織は、保護者たちが家庭で子供たちと利用できるよう、インターネットを使用しないテクノロジーと組み合わせた「自分でやってみる(Do-It-Yourself)」アクティビティを開発した。

シンクゾーンのプログラムは、オリッサ州の4つの地域(カタック、ケンドラパラ、クルダ、バドラク)に住む子供たちの教育に役立っている。彼らの取り組みはまた、これらの地域から300人以上の女性を雇用している。

活動を続ける原動力とは? シンクゾーンの在宅学習プログラムに参加した保護者たちからの素晴らしい体験談やフィードバック、感想を読んでみてください。
#NationalParentsDayhttps://t.co/LfBUFYGPeO pic.twitter.com/lOcjmzkjzi

— ThinkZone (@ThinkZoneIndia) July 26, 2020

パンデミック中の学校教育

ユネスコによると、COVID-19のパンデミックが始まってから、世界138カ国で13億7,000万人以上の学生が学校や大学の閉鎖の影響を受けている。6,020万人以上の教員が教室を離れ、その多くが何らかのテクノロジーを使って授業を行っている。

インドでは9月に学年が始まるが、オフライン授業を再開するための明確な国家的計画は未だない状態である。

アチャリャは、国際青少年財団とのインタビューで「親は子供の安全を確保したいと思い、ためらうため、子供たちの多くはすぐには学校に戻らないだろう」と語った

インドには、低帯域幅の人気アプリ「ワッツアップ」を利用して遠隔授業を提供するなど、同様の方法を用いる非営利団体がシンクゾーン以外にも存在するが、大規模なソリューションは容易ではない。3億2,000万人の学生がインドのロックダウンの影響を受けたことを考慮すると、シンクゾーンの活動対象である5,000人の子供たちは氷山の一角にすぎない。

一方でツイッターのユーザー、サングサンはカルターナカ州マンガロールの学生がオンライン授業に参加するには、インターネットに接続できる丘の上まで行かなければばならないとツイートした。

親愛なる@narendramodi @HPoonja様 教育を受ける権利はすべての生徒または子供にあります。この辺ぴな村に住む100人以上の子供たちは、野生動物に襲われる危険を犯しながらも、教育を受けるために森林地帯の丘を必死に登っています。どうか助けてください。https://t.co/u8RDH4MxeR pic.twitter.com/NQEB7ipCGd

— Sangsan (@Sangsan31796804) July 28, 2020

Barsha can communicate better with her family and friends after she joined the ThinkZone education program.

バーシャは、シンクゾーン教育プログラムに参加してから、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいくようになった。写真は掲載許可済み。

さらに、低所得地域に住む子どもたちだけが仮想環境への移行に苦しんでいるわけではない。学習障害のある子どもたちも、適応するのが難しいと研究者のシーマ・ナス氏はツイートしている。

オリッサを含むインドのいくつかの州において障害を持つ子供たちが、Covid-19のパンデミックの間、オンラインまたはデジタルメディアでの授業に対応できず、学校を退学するという大きなリスクに直面しています。https://t.co/LPStlO3X48

— Seema Nath (@seemanath) July 27, 2020

ジャンハビ・アプテは、「ステイトクラフト」(南アジアと世界の政治の関係を模索する世界情勢オンライン日刊誌)に論説を執筆し、遠隔学習に対応するより良いインフラを整備するべきだと政府に求めている。

COVID-19のパンデミックは、富裕層と貧困層、農村部と都市部の家庭、男性と女性の間に存在する深刻な不平等をさらけ出した。こうした格差は、仮想プラットフォーム上でさえ、インドでは教育へのアクセスに落とし穴があることをさらけ出している。このような試練の時代に遠隔学習を推し進めることは理解できるが、現在のシステムは対面授業の適切な代替手段として役割を果たすには不十分である。

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