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チェコの人々は詩に心を動かされワクチン接種を受け入れるだろうか?

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, チェコ, デジタル・アクティビズム, メディア/ジャーナリズム, 健康, 市民メディア, 文学, 行政, COVID-19

チェコ国民にワクチン接種を奨励しようと政府の担当局が発信したTwitterビデオ [1]の画像。この文章はキャンペーンに使われた詩の1節で、「おそらくそれは僕らが流した涙 しかし今は生きたいと思う!」と語られる。

新型コロナウイルスのワクチン接種がEUで認可されると、チェコ政府は新たな広報活動を始め、ワクチン接種に対する国民の恐怖と疑念を克服しようと目論んでいる。今回のキャンペーンの材料は公衆衛生の公示には似つかわさない分野から引用された。それは詩である。

12月27日、チェコ政府は次のような30秒間のビデオとメッセージをツイートした。

最初のワクチンが我が国に到着し、医療関係者と高齢者が接種し始めている。長期的に見てワクチン接種はパンデミックを止め、以前の生活に戻るための最も効果的な方法だ。

このビデオでは、人生や社会生活でよく起きるシーンを描いた様々な映像をバックにイジー・ヴォルケル [4]作の詩が朗読される。ヴォルケルは20世紀初期のプロレタリア派のチェコ詩人である。

元の詩はこのようなものだ。

Nesmělé jitro do tváří nám dýchlo
snem volných lesů, luk a dálných hor.
Vše divnou vírou v duši naší ztichlo,
i bolest krvavá i těžký vzdor.

Radostně klidni brouzdáme se bosi
chladící trávou, lesní přes pažit.
Osení stříbří slzy ranní rosy.
Snad plakali jsme, – ale teď chcem žít!

おずおずと顔に吹きつける朝の空気

疎林や草原や遠くの山々を夢見るように

奇妙な信念が心の静寂を取り戻す

ひどい痛みや激しい反抗心さえも静まって

 

満ち足りて心静かに裸足になり

森の草地でひんやりとした草を見てまわる

朝露の涙に濡れて光る若草よ

おそらくそれは僕らが流した涙 しかし今は生きたいと思う!

しかし原詩の最後の第3節は、ビデオではワクチン接種奨励のスローガン”A budeme. Tak jako dřív! Díky očkování”と置き換えられている。それは「そして我々は生きる。以前同様に!ワクチン接種のおかげで」という意味だ。

このビデオは2日足らずで2万回も再生され、あらゆる主要新聞やニュースサイト [5]で広く論評された。主な問題点はこのビデオがチェコ人を十分に納得させられるかどうかだ。最新の世論調査では、1千万人の人口の3 [6]分の2 [6]という大多数の国民がワクチン接種に反対しているのだ。この国は20203月には、パンデミックをどうにか押さえ込んでいる僅かな国々のひとつによく挙げられていた。それが秋には、感染率世界第2位の国 [7]になってしまった。

こんな中でこの潮流を変えて、いまだに非常に高い感染率が続いている状況を覆すに十分な効果を詩に期待できるのだろうか?

校正:Shigeru Tani [8]