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ジャマイカ:カメラが捉えた、霧にかすむブルーマウンテンの美

カテゴリー: カリブ, ジャマイカ, 写真, 市民メディア, 環境, 芸術・文化

ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ国立公園指定28周年に当たり、ジャマイカ環境保全・開発トラスト(JCDT)は写真コンテストを開催した。写真提供:JCDT 掲載許可済み

ジャマイカのブルーマウンテン [1]では何処に行ってもきれいな写真を写せる場所がある。森に包まれた急峻な稜線がジャマイカ島の中央部から東部にかけて延びており、首都キングストンから地平線の彼方に高くそびえるその姿を望むことができる。この山稜の一角にジャマイカの最高峰、ブルーマウンテン [2]2256m)がある。

ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ国立公園 [3]1993年に国立公園に指定された。その指定は、ブルーマウンテン一帯を管理する非営利団体のジャマイカ環境保全・開発トラスト [4](JCDT)が、英語を公用語とするカリブ諸国内で最初に自然保護債務スワップ [5]により、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)、プエルトリコ自然保護トラストおよびザ・ネイチャー・コンサーバンシーから寄付を受けた2年後であった。

ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズは、自然および文化的遺産としての価値が認められ、2015年にユネスコの世界遺産に登録された [6]

今年は国立公園指定28周年を祝う年である。JCDTは、28年を祝う事業として写真コンテストを開催し、226日に受賞者を発表した。審査委員の中には、ジャマイカ写真協会の創設者 ドネット・ザッカ [7]や英国で活動している写真家のギャリー・ラングレイがいる。

JCDTが設定した若者、自然および文化の3つの部門に86の応募作品が寄せられた。JCDT事務局長のスーザン・オツオコン博士 [8]は、このコンテストの究極の目的は優秀な作品を集めて、リビングテーブルに飾っておけるような豪華な写真集を作ることだと言っている。

若者部門

カブリナ・ヒルトン作 ジャマイカ環境保全・開発トラスト(JCDT)主催のブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ国立公園指定28周年記念写真コンテスト若者部門で最優秀賞を受賞 写真:JCDT提供 使用許可済み

ブルーマウンテンの頂上に到達するには、7マイル(約11kmの道のりを歩かなければならない。この山の見事に澄み切った光景は頂上から下るときに目の前に現れる。写真家志望のカブリナ・ヒルトンは「頂上を後にしたときに木々の間からこの素晴らしい光景が目に入りました」と語った。そして、思わずその光景を写真に収めた。その時の写真が若者部門で最優秀賞を獲得した。

ジェイド・モイストン作 若者部門第2位 写真:JCDT提供 使用許可済み

ジェイド・モイストンは山を流れ下る多くの渓流のひとつを写真に収め、若者部門の2位を受賞した。審査委員は、この作品は「すがすがしくて素敵だ」と評価した。また、シャッタースピードを遅くすることで渓流の流れを巧みに捉えている点もモイストンの技量の高さを示すものと評価された。

写真には、ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズの高所から流れ下る豊かな水の姿が収められている。この流れは渓谷を流れ下り麓の村に流れ着くと、住民たちにとって清潔で頼りになる水源となることは間違いない。

ジャマイカの山地性雲霧林 [9]は、世界的に重要な意味を持つ生物多様性を守る役割をしている。ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ国立公園内の顕花植物の1/2以上はジャマイカ固有種である。そして1/3は国立公園内でのみ見られる。それ故、このコンテストの応募作品の中には、木生シダ、地衣類、アナナスそして木からつり下がるコケを題材にして、同公園の優美な景観を写しだしたものが多い。

ザビエル・アレン作 発芽したばかりのシダの優美な巻芽 若者部門で第3位を獲得 写真:JCDT提供 使用許可済み

自然部門

シェラード・リトル作 自然部門最優秀賞 タイトル:静寂 写真:JCDT提供 使用許可済み

シェラード・リトルは、人里離れた1868年開設の歴史あるシンショーナ・ボタニカル・ガーデン [10]を題材にして自然部門の最優秀賞を獲得した。「静寂」というタイトルを付すことで、ブルーマウンテンが示すさまざまな側面をひとまとめに表現している。この作品の中に、高さを誇る山々、写された木の際だった形や周辺の植物が示す独特な生物多様性、またその山々の長い歴史と人間との共生を特徴付ける建物と煙突の煙、さらに人間の内省を示すベンチを写し込むことにより人間と自然との共生が巧みに表現されている。

レイチェル・ニール作 オートリー・マウンテン・トレイルの写真 自然部門第2位 写真:JCDT提供 使用許可済み

自然部門のコンテストで第2位を受賞したレイチェル・ニールの魅惑的な「オートリー・マウンテン・トレイル」について、審査員のドネット・ザッカは、「ドラマチックで風情の豊かさが感じられる」と評している。

バンドラ・ホートン-ウォルターズ作 樹木の写真 自然部門第3位 写真:JCDT提供 使用許可済み

霧の中に幻想的に林立する樹木の写真は「ふもとの街とまったく対照的である」と、バンドラ・ホートン-ウォルターズは語った。

文化部門

メラニー・テイラー作 この穏やかな光景を写した写真が文化部門最優秀賞を受賞 写真:JCDT提供 使用許可済み

「自身を見つめ限界に挑む、そして充足感を味わう」と題した、写真家メラニー・テイラーの穏やかで神秘的な印象を醸しだす画像は審査員の心情に訴えるものがあり、文化部門で最優秀賞を受賞した。

シェラード・リトル作 農夫とロバ 文化部門で第2位を受賞 写真:JCDT提供 使用許可済み

シェラード・リトル作のロバを引いて麓へ急ぐ農夫のセピア色の写真が、僅差で惜しくも文化部門の2位となった。審査委員はこの作品には「時代を超越した」雰囲気があると評している。

かつて、ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズは奴隷支配から逃れたウインドワード・マルーン [11]の人たちの避難場所であった。そのため、この地域には彼らの生活の歴史に関連した文化的な痕跡が目に見える形で残されている。例えば、彼らが行き来した跡や遺跡、集落などがある。マルーン [12]文化は幾世紀も経た今も健在である。

ピーター-アン・ヒギンズ作 空高く掲げられたベンチドラム 文化部門第3位 写真:JCDT提供 使用許可済み

ピーター-アン・ヒギンズ作のこの写真は文化部門で第3位を受賞した。チャールストン・マルーンの人々に愛された指導者カーネル・フランク・ラムスデンの通夜 [13]の際に掲げられたグンベ [14](ベンチドラム)を写したものである。

選外佳作

シェラード・リトル作 コーヒー挽き小屋の水車 写真:JCDT提供 使用許可済み

シェラード・リトルが写したクライズデールにある古びたコーヒー挽き小屋と水車のセピア色の写真には、親しさと粗い質感がにじみ出ている。

マリー・ベイリー作 自然部門第3位 山腹にたたずむ家屋 写真:JCDT提供 使用許可済み

マリー・ベイリーの作品は人と自然との共生を捉えている。この写真を見れば、彼女が言う「ブルーマウンテンでは自然と調和を保ちながら生活できる」ということが明らかである。

応募者のそれぞれが、ブルーマウンテンは静寂な場所だということを感じ取った。審査員のドネット・ザッカは、応募者にこれからもブルーマウンテンのたぐいまれな雰囲気、そして「この山の持つオーラと美しさを特徴付ける静けさ」を写し出すよう努力し続けてほしいと促した。そして、「どうぞ、この美しいブルーマウンテンのことをいつまでも忘れないでください」と結んだ。

校正:Moegi Tanaka [15]