Clubhouseでは、人の声にこそ力がある

画像提供:立場新聞。使用許可済み。

以下の記事は、2月12日立場新聞に掲載された 、2021年2月初めクラブハウスで行われた中国の政治についての議論に関する中国特集報告の第2部です。 ネリス・ジョナサンによる英語翻訳版を、共同制作パートナーシップ契約に基づいてグローバル・ボイスに掲載しています。第1部をお読みになりたい方はこちらへ

クラブハウスが他のソーシャル・メディアと比べてひときわ異彩を放つのは、音声を媒体とする点である。

ジェーン・ウォンは、トライアル期間中にクラブハウスに招待された最初の香港在住のITエンジニアである。彼女が最初にプラットフォームに参加した時は、基本的にシリコンバレーの技術者で構成されており、何人かの著名人たちがそれぞれのスタートアップ体験について話をするのに使われていたということである。ただ2021年2月には、香港ではかなり注目を集めていた。その注目の理由について、彼女はクラブハウスが提供するオーディオインターフェースにあると強調した。

Audio communication generates a sense of authenticity and people are more willing to discuss in an orderly manner… Audio communication makes you realize that on the other side of the screen, there is a real person speaking.It generates a sense of intimacy.Hence, people are very respectful when speaking and seldom argue.

音声コミュニケーションは信頼感を生み出し、人々は秩序ある議論をしようとします。[中略]音声コミュニケーションは、画面の向こう側で、今まさに誰かが話をしていることを実感させてくれます。親近感が湧いてきます。ですので、話している間相手を尊重しますし、感情的になって主張し合うことはめったにありません。

ウイグル自治区に関するチャットルームの主催者チャールズも、同じように考えていると述べた。

One would not face any consequence using text as medium as they were hiding behind the screen; however, if thousands of people hear one’s voice and the speech was hurtful and indecent, others will react instantly.

これまでは、画面に登場せずに文字を使ってコミニュケーションをとっていたのが、音声を使うことで何千もの人々が誰か一人の意見を聴くことができるのです。だから、誰かが他の人傷つけたり、内容が下品であったりしたときには、反論を返すことができます。

著名なジャーナリストでコミュニティコンテンツ・プラットフォーム「Matters」の創始者であるチャン・ジャピンもまた、音声コミュニケーションはそこにいる人同士の実際のコミュニケーションに温もりを取り戻せると指摘した。

People’s accents, the slang they used, the speed at which they were speaking, the breaks they took to breathe – all these details were concealed in written texts.

彼らの訛り、スラング、話す速度、息継ぎの間合いなど、これら一つひとつが、書かれた文字の中に埋もれていました。

クラブハウスがブロックされる前の3日間、彼女は休む間もなくほとんどクラブハウスに接続し続けていたため、約3時間から4時間しか睡眠をとっていなかった。

彼女は一つの注目すべき意見に引きつけられた。その声の主は、湖北省(中国本土)の山岳地帯にある集落の村民委員会の役人で、「ウイグル問題ルーム」そして「天安門事件ルーム」の議論を聴いたことで、わかったことやショックを受けたことについて発言していた。

[His voice] it was so authentic…his accent and the way he spoke was not like that of the city folks we hear all the time, his voice was very touching. He was speaking from his heart. A Taiwanese writer who happened in the same discussion room said it felt like watching one of Jiang Zhanghe’s movies [on China rural grassroot community] when he heard the man’s voice.

[彼の声]それは偽りのないものでした…私たちがいつも聞いている都会の人のものではない彼の訛りや話し方、その生の声に心を動かされました。 たまたまそのチャットルームに居合わせた一人の台湾人ライターが、その中国人男性の声を聴いて、まるで [中国の地方の共同集落で撮影された]ジャ・ジャンクーの映画を観ているような感じがすると発言しました。

チャンは、クラブハウスがソーシャル・メディアの進化にひとつのパラダイム・シフトをもたらし、インターネット上のソーシャルインタラクションは、文字をベースにしたコミュニケーションから音声をベースにしたものへと移行していくに違いないと考えている。

Perhaps Clubhouse will mark the beginning of the audio social network community… The main medium for our social interaction has always been our voices. The fact that we have shifted to use text for our communication is due to the technological restriction of the Internet…. the popular use of SMS and emoji in all these years has reflected that text based communication is nothing natural.

おそらくクラブハウスは、音声によるSNSコミュニティの幕開けを告げることだろう[中略]人と人が関わる時に主要な媒体というのは常に私たちの声でした。私たちがコミュニケーションに文字を使うようになったのは、インターネットの技術的制約によるものです[中略]SMSや絵文字の普及は、文字をベースにしたコミュニケーションが自然なものではないことの表れといえるのではないでしょうか。

彼女は、音声へシフトすることで、コミュニケーションの敷居がさらに低くなることを確信した。書き方を知らない人や書いて表現することが難しいと感じる人が、公での議論に加わることができるからだ。

Whenever the breakthrough of communication technology could bring along the lowering of threshold in communication, it could always unleash people’s creativity that couldn’t have ever imagined.

コミュニケーション・テクノロジーの新たな面が開かれて、コミュニケーションの敷居が低くなる時、それは常に人々の想像を超えたクリエイティブな力を発揮します。

ジェーン・ウォンと同様に、チャンもまた音声が一つの新しいコミュニケーションの流れを生み出したことを目の当たりにした。

Sound is linear, unlike written text with which we can read ten lines at a glance. In Clubhouse, the participants can only listen to one person at a time to effectively receive the message. Very naturally people have to speak one after another. Everyone has to wait for their turn to speak and the rule is embedded in the medium.

一目で10行読めてしまう文字とは異なり、音声は直線的、つまりダイレクトに伝わります。クラブハウスでは、メッセージを効果的に受け取るために、参加者は一度に一人の話しか聴くことができません。必然的に人は順々に話すことになります。全員が自分の話す順番を待たなければならないというルールなのです。

彼女は話をする順番をとばして割り込むことが多い人は、大抵話が下手であることに気づいた。逆に、自分の順番をじっと待っている人は、どちらかというと心が広く、自分の意見に関係なく、他の参加者に敬意を持って話をしようとしていた、と述べている。

しかしながら、中国でクラブハウスがブロックされた後、本音で政治的な話ができる関係も損なわれてしまった。 チャンは次のように話した。

I wasn’t as hooked as I previously was after Clubhouse was blocked in China, I couldn’t listen to the voices I wanted to listen to.

中国でクラブハウスがブロックされてからは、聴きたいと思う声が聴けなくなったので、私はかつてのようにのめり込んでいません。

チャンの心に今も残っているのは、新彊ウイグル自治区や天安門広場での事件を始めて知った時の、一般の人々がショックを受けて発した言葉の数々だった。チャンは次のように述べた。

You could hear the shock from their voices that they were hearing these things for the first time. Regardless of their opinions, whether they defended against or denied or accepted what they had heard, you could definitely tell from their voices that they were shocked and confused about the reality that they had imagined. In my opinion, these moments are invaluable. The discussion has shaken their belief system, this is what we call communication. On the other hand, many people from Taiwan and Hong Kong said that for the first time they had the chance to hear such authentic voices coming from ordinary mainland Chinese people, which is far different from the kind of stereotypical Chinese people that they usually think of… But there will be less moments like these now that Clubhouse is blocked in Mainland China. More frequently she heard ‘don’t try to fool us, I also had overseas living experience.’

こんなことは今まで知らなかったという彼らの声から衝撃が伝わってきました。それぞれの意見がどうであれ、他の参加者の意見を擁護したり、否定したり、受け入れたりしつつも、自らの想像を超える現実にショックを受け戸惑っていることが、彼らの声から確実に伝わってきました。これは私の意見ですが、これらの瞬間はかけがえのないものです。議論は彼らの信念体系を揺るがしています。これが私たちがコミュニケーションと呼ぶものなのです。一方で、台湾や香港の参加者の多くが、中国本土に暮らす一般の人の生の声を聴く機会を持ったのは初めてで、それは普段自分たちが考えているステレオタイプの中国人といったイメージからはとてもかけはなれていると発言していました。[中略]しかし中国本土でクラブハウスがブロックされた今となっては、このような機会は失われようとしています。 「騙されないで。私も海外で暮らした経験があります」と発言している人が多くなりました。

ブロックされたとしても、チャンは文字から音声へのソーシャルメディア・コミュニケーションのパラダイムシフトは始まっており、クラブハウスはその始まりに過ぎないと思っている。

校正:Sumiyo Roland

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