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COVID-19: スペインの町は経済危機打開へと仮想通貨を投入

カテゴリー: スペイン, テクノロジー, 市民メディア, 経済・ビジネス, COVID-19

提供: Pixabay [1] 許諾条件 [2]

この記事は2021年3月3日に最初に公開されました

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 拡大防止措置による深刻な経済停滞から、地元の商業 [3]を救う手段として、スペイン・アンダルシア州のある町は暗号通貨に期待を寄せている。

セビリア県に位置する人口27,000人の町レブリハ [4]は、独自の仮想通貨を使って地元経済を活性化するという、今までにない挑戦の最中だ。「エリオ」と言うデジタル通貨を使って、地元商業と生活困窮家庭を結びつけながら、地元の小さなお店がニューノーマルと言われる経済状況に適応して、需要を取り込む手助けするのだ。この地域限定型仮想通貨は、大規模チェーンのから着想を得て、小規模事業向けに手直ししたものだ。

「レブリハの新しい通貨」であるエリオ [5]はユーロに連動している。町の第一助役 [6]兼ニューテクノロジー代表委員のダビド・ペレスとそのチームのサポートを受け、2020年のロックダウン下にエリオはアプリとして登場した。
「エリオ」という名前は、町の最も有名な歴史上の人物 [7]、人文主義者でカスティリャ語(訳注: スペイン語のことです)文法について初めて記したエリオ・アントニオ・デ・ネブリハを表敬したものだ。

収入を基に選ばれた対象家庭は、地域の対象店舗の買い物でエリオを使える。つまり地域経済を活気づけると同時に、困窮家庭の支援も目指している。エリオは2020年末に開始され、600以上の家庭がすでにこのアプリを使用している。

1エリオは1ユーロと等価で、商品やサービスの金額の半分をユーロで、残り半分はエリオで支払い可能だ。エリオを使うにはアプリをダウンロード後、登録が必要 [8]だが、自分があと何エリオ使えるのか、またどこの店舗で使えるのかも教えてくれる。

各家庭は、議会から50から200エリオの補助を受け取り、エリオ払いができる商店で使用する。販売後、商店側は明細付き請求 [7]書を議会に提示して、受け取ったエリオをユーロに替えてもらう。

この仮想通貨はレブリハでのみ有効 [9]である。エリオプロジェクトは、祝祭行事の費用など他の活動のための基金の一部を取り崩して、市民の援助に優先的に振り向けるという議会の決定から始まった。この結果60,000エリオの規模でプロジェクトがスタートした。

現在までに50,000ユーロがレブリハの商業活動に投じられ、そのうち25,000ユーロ分はエリオで行われた。この試みは地元住民からも好意的に受け止められており、スペインのテレビでは「この施策のおかげで1ヶ月うまく切り抜けることができたと話す商店や、売り上げが2倍になったと言った声」が報じられている [9]
今回の施策はレブリハの議会にとっては新しい技術を利用した初の施策というわけではない。町ではすでに多くのサービスをTelegram [10] (訳注: LINEやWhat's upのようなアプリです)を使って提供している。

世界規模の感染症がもたらした経済危機はスペインのビジネス基盤を大きく損なうとともに、庶民の生活にも大ダメージを与えた。非常に多くの家庭が不安定 [11]な状況に直面しているのだ。COVID-19により2020年に生じた11パーセントもの経済活動の「歴史的な落ち込み [12]」の結果、スペインでは貧困とされる [13]層が80万人も増加している。

感染爆発にみまわれたスペインでは、エリオのほかにも相互扶助を目的とした新サービス [14]が生まれている。La Noria Social Hub [15] (ラノリアソーシャルハブ) はソーシャルイノベーションと地域の発展の支援をマラガで目指し、マドリード、バルセロナ、バレンシアではGot Salt? [16] (訳注:お醤油ある?といった意味です)が住民間相互扶助の連絡手段として登場した。新サービスは近所の人たち同士が気軽にとり、連帯や誰もが参加できる持続的な社会をめざしている。

エリオは3月31日をもって終了するが、この成功をうけて議会は仮想通貨の将来的な導入を研究中だ。レブリハにとっては、エリオは社会連帯と技術は相伴うことができるという証であり、また、経済不況から脱する方法はデジタル化によって実現されるだろうという証でもある。

校正: Mitsuo Sugano [17]