エベレストの標高が改訂される 同時にネパールへの観光が解禁 観光客増加に望み

訳注:この記事の原文は2020年12月23日に掲載されました。

Mount Everest. Image from Flickr by Christopher Michel. CC BY 2.0

エベレスト 写真: クリストファー・ミシェルから転載 CC BY 2.0

世界最高峰エベレストの真の標高については、10年以上にわたり論争が続いていたが、このたび従来の数値に86センチ加算されて8,848.86メートルが公式の標高ということになった。

今回発表された測定値は、ネパールと中国の国境線上にあるエベレストに接する2カ国が、12月8日に合同で行ったリモートの記者会見で公表された。測量は両国の測量隊が実施した。

地質学者は、2015年のネパール地震でエベレストの標高が低くなった可能性を指摘していた。しかし、今回の測量でそのようなことのなかったことが確認された。

3月以来、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によりネパールへの観光のための入国は閉ざされていた。しかし、ネパールが観光客への門戸を徐々に開こうとしているこのタイミングで、エベレストの標高に関する最新情報が公表されたことは時宜を得たことといえる。

世界の標高トップテンに入る山のうち8座が ネパール国内にあるので、当然のことながら同国にやって来る観光客のうち16パーセント以上は登山客である。

山岳の標高測定

ネパールと中国の測量当局は、2017年にエベレストの標高測量事業を開始した。山岳の測量には最先端の測量機器と適切な測量技術が求められるで完了までにはさまざまな困難が伴う。この測量事業を完遂するまでに3年間を要した。その間、悪天候、頂上に突起する岩、また氷層その他の環境上の問題など幾多の困難を克服しなければならなかった。

このたび両国が協力して行った測量事業に先立ち、イタリア、 ニュージーランド、インドおよび米国を含むその他の国々の測量隊がエベレストの標高測定を実施している。

今回の公表はネパールにとって誇りに足る瞬間だった。ニュースが伝わるとすぐにネパールのネット市民や山岳愛好家が、ソーシャルメディア上で喜びを表明した。

エベレストの新しい標高は8848.86メートルだ。政府が公表した。全ネパール人の望みが、偉大なエベレストの標高のように抜きん出るように祈る!

カトマンズで教師をしているツイッターユーザーのラブ・ジョシーは、エベレストの新しい標高と民度向上の必要性との間には類似点があると見ている。

すごい。エベレストの新しい標高は8848.86メートルになった。次は、ネパールの国と国民のレベルアップだ。

イタリア在住のネパール人ディーペンドラ・シャーは、86センチ加算されたことに対して冗談を言っている。

これからのエベレスト登山者は、以前の8848メートルを破り8848.86メートルの新記録を作れるぞ。

ネパールと中国の関係はどうなるのだろうか

今回の提携は中国とネパールの結びつきを 強化した前中国国家主席が同国を最後に訪問してから23年ぶりの2019年に習近平・国家主席がネパールを訪問した。そのときに、両国は18項目の覚書に署名をすると同時に、農業、商業、製造業および運輸業を含むさまざまな分野に関する二つの文書を交換した。

ネパールはインドと中国の両国と国境を接している。そのため、多くのソーシャル・メディアユーザーが以前からネパールと中印両国との関係に関心を寄せている。両国との関係は戦略上重要な意味を持っていると考えられているからである。

過去数年の間、インドのネパールに対する干渉に対して批判が広まっていた。両国の見解の違いは、2020年5月にネパール政府がリンピヤドゥラ~カラパニ~リプレク地域はネパールの領土とする地図を公表すると、さらに顕著になった。両国が、この地域は自国の領土であると主張しているなかで、ネパール側の地図公表により両国の間に亀裂が生じる結果となった

最近、インドは和解に向けていくつかの行動をとった。専門家の間では、これらのインドの行動は、ネパールと中国の接近をくい止めようとして意図的に行ったものと考えられている。

あるツイッターユーザーは記している。

エベレストの標高改訂には、地政学的な意味が込められている。

世界最高峰の標高に86センチ加算することで、中国 とネパールは論争をやめると同時に結びつきを増強した。

しかしインドは、中国がネパールに近づこうとするのを快く思っていないだろう。

パンデミックの中で観光産業が再開

ネパールでは、ヒマラヤトレッキングから文化的な観光スポットまで、観光客がワクワクする体験ができる場所が幅広く存在する。

2019年には117万もの観光客が、海外からネパールを訪れた。ネパールは、今年の年頭には観光客を引き寄せるために世界に向けて様々な観光客誘致キャンペーンを実施した。しかし、その努力も新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行したために無に帰してしまった。

野外活動を控えたり旅行を取りやめたりする人がたため、ネパールの観光産業は最も打撃を受けた産業の一つとなった。このような悪条件の中で、多くの観光産業従事者が一時解雇されることとなった。

ネパール政府は観光産業の活性化をはかるため、観光客を呼び込む方向へと再度、政策を変更した。しかし、ネパール政府はいくつかの旅行制限を緩和したものの、国境検問所は閉鎖されたままである。国外からの旅行者は有効なビザを所有しなければならない、入国前72時間以内に取得した新型コロナウイルス陰性証明書を提出しなければならない、また、政府が勧告する健康保証手続きを踏まなければならないといった制限がある。

とはいうものの、旅行業者は政策転換を歓迎している。

今日は、エベレストへ8回のフライトがある。

観光客が再び増加することを期待して、多くの観光地では社会基盤の改良が行われた。また、新しい企画が計画されている。しかし、そういった社会の動きに対していち早く、ソーシャルメディア上で新型コロナウイルス感染症予防のための旅行規制のプラス効果を訴える人たちもいる。

エベレスト・トゥデイのブログはツイートしている。

覚えていますか、皆さんご存じのロックダウン中のエベレストの写真です。今日もまたカトマンズから、澄んだ空気の向こうにエベレストが見えます。

観光客の増加が見込まれる中で、ネパール経済は活況を取り戻すと期待されている。また、観光客増加への期待感は、新型ウイルス感染症大流行の影響を受けて萎縮したネパール経済を蘇らせる効果があると考えられている。標高が86センチ加算されたことにより、エベレストは、一生のうちに一度は行ってみたい旅行先のトップにリストアップされるであろう。

校正:Ayumi Oda

コメントする

Authors, please ログイン »

コメントのシェア・ガイドライン

  • Twitterやfacebookなどにログインし、アイコンを押して投稿すると、コメントをシェアできます. コメントはすべて管理者が内容の確認を行います. 同じコメントを複数回投稿すると、スパムと認識されることがあります.
  • 他の方には敬意を持って接してください。. 差別発言、猥褻用語、個人攻撃を含んだコメントは投稿できません。.