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トバゴ島北東部 人と自然の共生を目指すユネスコエコパークに指定される

カテゴリー: カリブ, トリニダード・トバゴ, 市民メディア, 朗報, 環境
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トバゴ・メイン・リッジ森林保護区にある熱帯雨林内ハイキングコースのギルピン歩道を歩く自然保護活動家  写真 [1]アイバー・ルーケル [2] フリッカーから転載 CC BY-SA 2.0 [3].

この記事は、当初ショーン・マックーンがカリ=ボイスニュース [4]に掲載した。グローバル・ボイスとの記事共有合意の下に編集し再掲するものである。

トバゴの持続可能な発展を提唱する人たち [5]は、トバゴ島北東部がユネスコの人間と自然の共生(MAB)計画 [6]のユネスコエコパークに指定されたことを祝った。トバゴは、待ち望んでいた指定を受けたことで、莫大な恩恵に浴することができるようになったと、彼らは語る。

この栄誉ある指定により、トバゴ島北東部は全世界に714箇所あるユネスコの生物圏保護地域 [7](訳注:日本での通称はユネスコエコパーク [8])の一つになったと、10月28日 [9]に人間と生物圏国際調整委員会が公表した。このほかのユネスコエコパークには、ギリシャのオリンポス山 [10]やインドネシアのコモド国立公園 [11]など、よく名の知れた場所がある。

ユネスコエコパークの特性とは

ユネスコエコパークとは、その地域独特の生物多様性を有し、環境の価値が評価され、そして地域住民の生活が持続可能性を意識した様式であると認められた地域である。ユネスコは、人間と自然の関係をより調和のとれたものにしようとして、ユネスコエコパークを指定している。ユネスコの目指すものは、人間活動と生物多様性を保全し調和させること、また、生物圏内にある自然資源の持続可能な管理手法を科学的な根拠を基に確立することである。

トバゴ島北東部のメイン・リッジ森林保護区 [12]は、西半球で最古の熱帯雨林保護区 [13]として知られ、トバゴ島北東部がユネスコエコパークの指定を受けるにあたって欠くことのできない重要な役割を果たした。

トバゴの中軸

この熱帯雨林は、トバゴ島の脊梁となる長く狭隘な山稜で構成されたメイン・リッジ [14]の一部であり、カリブ島の山域から海域にまで広がるこの一帯には希少でほとんど人の手の入っていない生態系が残っている。

トバゴ島北東部のユネスコエコパークは様々な生命にあふれ、その面積は83,488ヘクタールであり、そのうち68,384ヘクタールは海域である。19のそれぞれ異なった特徴を持った生息環境に1774種に及ぶ動植物種の生息圏が広がっている。これら動植物の生息圏はトバゴ島北東部に住む1万の島民の生活圏ともなっている。そして、多くの場合、彼らの生活は、生物の多様性を保護することによって維持されている。

このユネスコエコパークの特徴として挙げられるのは、41の生物種がこのエコパークの固有種であることと、83もの生物種が国際自然保護連合 [15](IUCN)の絶滅危惧レッドリスト [16]に掲載されていることである。ユネスコによると、この地域で一番目立つ種はオジロケンバネハチドリ [17]( Campylopterus Ensipennis)である。トバゴ島固有種の希少で見事な特徴を持ったこの鳥は、1963年のハリケーン・フローラ [18]がトバゴ島の熱帯雨林の生息環境に大打撃を与えた際に一度は絶滅したと考えられていた。

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オジロケンバネハチドリ( Campylopterus Ensipennis)トバゴ島メインリッジ熱帯雨林保護区のジルピン歩道にて 写真 [19]スティーブ・ガルビー [20]がフリッカーに投稿したものを掲載 CC BY-SA 2.0 [3].

その後、この熱帯雨林は目覚ましい再生を遂げた。トバゴ島ユネスコエコパークは、トバゴ島東部のベル・ガーデンから北部のモライアまでの15の町村にまたがり、カリブ海の英語圏諸国では最大のユネスコエコパークである。カリブ海域でここよりも広い面積を持つユネスコエコパークは、フランスの海外領土にあるグアドループ諸島 [21]だけである。

持続可能な発展を勝ち取るために

ユネスコは、ウエブサイト上でユネスコエコパークを「地球上の問題を地域ごとに解決する」ことを目的とした持続可能な発展の仕方を学ぶ場所でもあると紹介している。ユネスコエコパークの指定には、人間生活の改善や自然のままの生態系及び人の手の入った生態系の維持のために、自然科学と社会科学の両分野を連携させ、自然と人との共生の取り組みを前進させようとする思いが込められている。ユネスコは10年ごとに、エコパークの機能と現地住民のエコパークへの関わり方について見直しを行っている。

トリニダード・トバゴの環境問題研究家は、ユネスコエコパークという称号が冠されたことに期待を寄せている。この称号を得たことにより、持続可能性に向けて経済を多様化させようとする住民意識が高まり、結果として何世代にも渡りこのエコパークを維持していくことが期待できるからである。

シャーロッツビル環境総合研究センター [22](ERIC)最高経営責任者のアルジョシャ・ウォスキーは、今実施されている取り組みを「道具」に例え、トバゴ人はこれを「手に取り、有効に使用」しなければならない、つまり政府、民間そして市民社会は力を合わせて人と自然の共生(MAB)がしっかりと機能するようにしなければならないと、述べている。

公共機関、民間、市民社会それぞれのかかわり方

トバゴ議会(THA)総務長官アンシル・デニスは、トバゴ島北東部がユネスコエコパークに指定されたことを喜び [23]、この指定は、持続可能な発展がトバゴ島にとって最も優先させなければならない課題である、と認識された証であると述べている。

This man and biosphere designation is only an opportunity for us to improve the management and protection of our natural and cultural heritage — two areas that have always been extremely important to us here in Tobago.

ユネスコエコパークへの指定は、トバゴ島民にとって、自然遺産及び文化遺産の管理・保護を拡充させるためのまたとないチャンスである。これら二つの遺産は、我々トバゴ島民にとってこれまで決して忘れたことのない重要な存在である。

この節目を祝うもうひとつのTHAの動画の中で、漁師のオジャニ・ウォーカーは、トバゴ島がユネスコエコパークに指定されたことにより、海岸線周辺の環境が大幅に改善されるようになる、と語った [24]。また、ツアーガイドの資格を持つダーリントン・チャンスは、指定により島内に多くの利益がもたらされることになり、島内観光業の収入増につながると考えている [25]。また、彼は、「自然保護に力を入れなければ、自然は失われてしまう」と、持続可能な将来の見通しに関して持論を述べている。

非政府組織「トバゴの環境 [26]」の副会長パトリシア・ターピンの活動も動画シリーズに取り上げられている [27]。トバゴ島は、いま気候危機の影響 [28]と格闘している最中である。彼女はそのようなトバゴ島の北東部で、これまで45年間生活してきた。その間に気心の知れる間柄になった住民に、この地域の美しさと生物の多様性を維持するために「活動している人たちとともに行動する」よう呼び掛けている。

ユネスコエコパークへの指定により、トリニダード・トバゴ国民の、環境保護の緊急性に対する意識と国家威信に関する関心が刺激されたに違いない、といった考えが環境にかかわる人たちの間に広がっている。

校正:Moegi Tanaka [29]