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カリブ地域の湿地巡り―湿地は気候変動の影響を和らげ、生物多様性を守っている

カテゴリー: カリブ, ガイアナ, ジャマイカ, トリニダード・トバゴ, バルバドス, デジタル・アクティビズム, 健康, 市民メディア, 教育, 環境, グリーン・ヴォイセズ

ジャマイカの南海岸、グレート・ゴート島 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

2月2日は「世界湿地の日 [1]」である。この日は、1971年イラン、ラムサール [2]で湿地に関する条約が採択されたことにちなんで制定された。地球上の生命やサステナビリティにとって、いかに湿地が重要であるか人々の認識を促す日である。2022年のテーマとして、世界の貴重で脆弱な湿地の生態系を回復させ、さらなる劣化を防ぐため、行動・活動・金銭的投資や政治的な支援が呼びかけられている [3]

湿地は地球の表面積の10パーセントにも満たないが、すべての動植物種の40パーセントという途方もなく多くの生き物が湿地に住み、あるいはそこを成長の場としている [1]。人間や動物の食料源であること以外にも、湿地は、水の循環、ろ過、洪水管理など気候バランスの上で重要だ。

カリブ海諸国のような小島嶼開発途上国は、気候変動の被害を一番に被っている。気候変動がすでに淡水の減少、森林破壊、海面上昇 [4]といった負の要素をもたらしている状況にあるなかで、湿地は、温室効果ガス排出を抑制し [5]、バイオマスや土壌に炭素を蓄え [6]炭素吸収源になることによって、地球温暖化と戦うのに不可欠 [5]なのである。

残念なことに、諸島の南端にあるトリニダード・トバゴのマングローブ林のように、多くの湿地帯は土壌汚染 [7]や気候変動による海水温の上昇が引き起こすサーギャサム [8](訳注:ホンダワラ属の海藻)の異常繁殖 [9]により脅かされている。

トリニダード島のポインタピエール・ワイルドファウル・トラスト [10]は、国内で最も知られた湿地保護団体の一つで「湿地とそこに住むすべての生き物の保全と保護」を続けることを誓うとともに、フェイスブックに「世界湿地の日」を祝して [11]画像を掲載 [12]した。

トリニダード島を拠点とする別のNGO SpeSeasはツイートした。

「世界湿地の日」に私たちの湿地であるナリバ沼地、カロニ沼地、ブックー礁=ボン・アコード・ラグーン複合体の持続可能な利用に注意を促し、保護と保全をすすめたいと考えています。

海洋生物学者ジェイソン・B・アレムはこう記した。

この「湿地の日」に、認識と行動のギャップ、それから「湿地のための行動」と「気候変動」に対して何ができるかについて多くのことを考えています。まずカリブに住む私たちと湿地の結びつきについて、広く探って伝えていきたいと思います。
「世界湿地の日」おめでとう。

湿地は大事な役割を担っているが、湿地そのものも大変美しい。「世界湿地の日」にちなんで、カリブの息をのむような湿地を南米ガイアナから島々を北上して紹介してゆく。

ガイアナ

[23]

東デメララ水保護区、ガイアナ 写真 [23]:ジョン+エレイン・チェスタートン フリッカー CC BY-SA 2.0. [24]

カリブ海の一部とは言っても、ガイアナは南アメリカ大陸の広大な国で、沼地や湿地が何マイルにもわたって広がっている。

トリニダード・トバゴ

トリニダード島のポインタピエール・ワイルド・ファウル・トラストの鳥、写真:ジャニン・メンデス・フランコ 許可を得て掲載

ポインタピエール・ワイルド・ファウル・トラスト [10]では、傷ついた [25]を保護しリハビリを行うことに加え、環境全般また特に湿地 [26]についての多くの研究、支援、さらに教育普及活動を行っている。

トリニダード島、カロニ沼地の夕暮れ時、鳥たちはねぐらに帰る。最も目を引くのはショウジョウトキだ。 写真:ジャニン・メンデス・フランコ 許可を得て掲載

河口域に広がる貴重なマングローブの森を含み、西海岸パリア湾 [27]に面したカロニ沼地 [28]はトリニダード島の2つのラムサール条約指定地域 [29]のひとつである。2つ目は東海岸の主に淡水から成るナリバ沼地 [30]だ。(トバゴ島のブックー礁 [31]はこの国で3番目のラムサール条約指定地域となっている) 

湿地は水を浄化し、海岸線を侵食や嵐、洪水などの悪影響から守っているだけではなく、エコツーリズム [32]の目的地や環境教育の場としても最適と言える。

ペティ・トラウ・ラグーンの日暮れ トバゴ島ウインドワード海岸、ローランズ、写真:ジャニン・メンデス・フランコ 許可を得て掲載

トバゴ・プランテーション保養地内に位置する絵のように美しいラグーン(潟)は、マングローブに覆われ、マングローブの根をまたぐようにボードウォークが整備されている。ここには淡水と塩水が混在する。

バルバドス

グレイム・ホール自然保護区はバルバドス最後の大規模なマングローブ湿地を含む。ここは数千羽の渡り鳥の飛来地であったが、バルバドス政府との論争の末に2019年に閉鎖された。写真 [33]:デイビッド・スタンレー、フリッカー CC BY 2.0. [34]

「世界湿地の日」の1週間ほど前「バルバドスの最後のマングローブ林を永久に失わないために」と訴える [35]バルバドス人のグループがオンラインによる署名活動 [36]を開始した。これによりグレイム・ホール沼地がOS-2 [37]保護地域の指定を受けることを目指している。記事の公開時点で、4000名の署名を集めている。

ジャマイカ

ジャマイカ、ヤラス・ソルト・ポンドのシラサギ 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

湿地帯が直面する脅威には、宅地造成、観光産業や農業のための開発によって生態系のバランスが崩れてしまう問題がある。さらに農薬や肥料に含まれる化学物質が湿地に流入して、動植物に悪影響を与えている恐れもある

ジャマイカ、ヤラス・ソルト・ポンドに集まる鳥、ソルト川のアメリカン・クロコダイル 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

湿地は鳥類、爬虫類、ワニ、カエル、カキを含む生物多様性の宝庫であるが、それらのすべてが外来種の侵入により脅かされる可能性がある。

ジャマイカ、ソルト川のマングローブ林 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

カリブの湿地保護で最も緊急の課題のひとつは汚染である。とりわけ固体の廃棄物 [7]は一旦樹木の根系に入り込むと、マングローブ林全体を枯らす恐れがある。マングローブは稚魚や他の海洋生物が育つ場でもある。

ジャマイカ、メイソン川保護区の湿地 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

カリブの湿地は極めて多様である。ジャマイカ唯一の内陸湿地(写真上)は、メイソン川保護区のクラレンドン丘陵地帯に位置しており、泥炭湿地の一種と表現するのがふさわしい。一方島の南岸にあるソルト川沿い(写真下)は、より海岸のような景色である。

ジャマイカ、ソルト川の湿地 写真:エマ・ルイス 許可を得て掲載

湿地がどこにあろうと、またどのような湿地であろうと、世界湿地の日2022のメッセージ [1]は、湿地は注目され保護を受けるに値するということである。

校正:Mitsuo Sugano [38]