バンコクかクルンテープ・マハナコーンか?タイの首都名はどちら?

バンコク方面行を示すタイの道路標識

バンコク方面行を示すタイの道路標識。 撮影はファースト・タナポット。引用元: Wikipedia (CC BY-SA 4.0)

タイの首都の呼び方はバンコクか、クルンテープ・マハナコーンか?公式情報によると、どちらも正しい。

タイのロイヤルアカデミーは2022年2月に、首都の由緒正しい名、クルンテープ・マハナコーン(天使の都)の使用を公式に推進すべきだと政府に提唱した。この提言は直ちに閣議で了承され、検討のために外務省へ送られた。

世界中で知れ渡っているバンコクに代わって、クルンテープ・マハナコーンを採用するこの提言に、ネット市民は強く反応して意見や懸念を共有して、活発な議論を巻き起こすことになった。

タイの歴史に詳しいパッチャラポーン(パチャー)パノムワンのツイッターは、タイの首都の成り立ちと、植民地主義がのさばる時代にバンコクがどのようにしてタイの首都の正式名称となったかを理解する助けになる。

やっとバンコクの英語表記がクルンテープ・マハナコーンに変更されるようで嬉しい。私からすると、遅すぎたとは言えこれで言葉の上でも脱植民地化が進むことになる。タイでは誰ひとりとして首都をバンコクとは呼ばない。実はバンコクとは17〜18世紀に外国の商館があったトンブリーの2地区のことだ。

また旅行ブロガーのリチャード・バローのツイッターを見ると、バンコクの名を使用しているのは外国人だけで、住民たちはずっとクルンテープ・マハナコーンと呼んできたことがわかる。

タイの首都の英語名をバンコクからクルンテープ・マハナコーンに変更する提言は、ソーシャルメディア上でたくさんの議論を巻き起こった。しかし政府報道官はどちらの名前も英語で使用可能であると明言している。

(訳注:右側写真で表記が「クルンテープ・マハナコーン; バンコク」から「クルンテープ・マハナコーン (バンコク)」に変わっています)

また政府当局も、バンコクの名称はタイで引き続き使用されることを発表した。

ジャーナリストのプラヴィット・ロジャナプルクは、タイの英語ニュースサイト、カオソッド・イングリッシュで首都名変更への提言への賛否の声を紹介している。こちらは提言を支持する賛成派の主張だ。

For around two centuries, we have allowed Westerners to refer to our great capital city as Bangkok, a mere district of olive trees according to one version of history. Bangkok is an old name of the place before the city became the capital of Siam and subsequently Thailand.

およそ2世紀にわたって、われわれは偉大なる首都をバンコクと呼ぶことを欧米人に許してきた。一説によると、バンコクとはオリーブ並木のあった1地区の名称に過ぎない。バンコクとは、この地区がシャム、そしてタイ王国の首都となるよりも前に使われていた古称だ。

そして、こちらは反対派の主張である。

It took two centuries to build a great catchy brand that is Bangkok, which is filled with lores and myths associated with it through literature, films, music, and popular imaginations, so why throw the name down the Chao Phraya River?

I think some people in power should learn to prioritize. If something are not broken, why fix or even change it?

文学、映画、音楽などの人気の創作物を通じて、伝承や神話であふれたバンコクというキャッチーで素晴らしいブランドを築き上げるまでに2世紀もの時間がかかった。なのに、なぜこの名前をわざわざチャオプラヤー川に投げ捨てようとするのだろうか?
権力者達は優先順位というものを学ぶべきだ。壊れていないものを、どうして直したり、変えたりするのだろうか?

ツイッター上では、大雨ですぐ被害が出る、首都の脆弱な治水などの環境整備の方が、首都の名称変更よりずっと急いで取り組むべき課題ではとの意見がでた。また経済的困難に直面する市民のことを考える方がもっと重要だとの主張も見られる。

バンコク・ポストは社説で、もし政府が最初に国民の声をちゃんと聞いていたなら、提案が混乱と怒りを引き起こした、今回のような事態は避けられたのではと述べている。

The authorities need to understand that the capital is more than words and spelling. It's a name derived from the fact that people recognise where they live and decide to call it as such. If the authorities decide to change it, they should consult people first and ask before making decisions.

政府がまず理解すべきは、首都には言葉やつづり以上の重要な意味があると言うことだ。地名とは人々がそこに暮らし、ある場所をそのように呼んだことに由来するのだ。もし政府が地名を変えたいのであれば、まず人々の考えを聞いてから決定すべきだ。

すべてのことを考慮した後なら、タイ人には首都をバンコクと呼ぶかクルンテープ・マハナコーンと呼ぶかを決める権利がある。 ところで、儀式で用いる名称はもっと長い。クルンテープ・マハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット。これが正式名称だ。

みなさま、当機はまもなくクルンテープ・マハナコーン・アモーンラッタナカーシン、ではなくてラッタナコーシン、マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブローリム、違ったブリーロム、ウドムラーチャニワ、ではなくてウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アタワ、すいませんアワターンサティット・サッカタッティータいや、またすいません、サッカタッティヤウィサヌカムプラシット空港に到着します!(ふ〜っ)」

「バンコクが実は寿限無だったとは、人の考えることはどこでも同じか!?」

この記事は翻訳ワークショップ(2022年9月3日開催)で使用した原稿より作成しました。原稿はタハラ様、マサムラ様、エノモト様、クワヤマ様、ヒグチ様より提供いただき、スガノがまとめました。

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