ベラルーシ当局 東京オリンピックに参加した同国短距離選手を本国へ送還するために羽田空港へ強制連行 選手は亡命を求める

(訳注:この記事の原文は2021年8月1日に掲載されました)

Belarusian sprinter Krystsina Tsimanouskaya at Tokyo's Haneda airport on August 1, 2021. Screenshot from video by Reuters on YouTube.

羽田空港で警察に保護を求めるクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手 2021年8月1日 ロイター通信オンラインビデオのスクリーンショット

クリスツィナ・ツィマノウスカヤ(24歳)は、ベラルーシの短距離陸上選手として2020年東京オリンピックに参加した。伝えられるところによると、彼女はベラルーシ当局から本国へ戻るよう命じられ、本人の意に反して羽田空港へ連行された。連行の理由は彼女がベラルーシチームのコーチを批判したからだという。しかし彼女は、帰国便への搭乗を拒否した。帰国すれば刑務所送りになるからである。

彼女は、7月30日に女子100m予選に出場した。また、8月2日には200m予選、8月5日には1600m(4×400m)リレーに出場する予定であった。

数日前彼女は、リレーに参加することも知らされていなかったしリレーの練習もしていなかったとして、コーチが独断で決めたことを批判する動画をインスタグラムに載せた。しかし後日、コーチや本国関係者らから圧力を受けてこの動画を削除した。

ツィマノウスカヤの語るところによると、8月1日(日)にコーチが彼女の部屋へきて荷物をまとめるよう告げた。そして、ベラルーシ・オリンピック委員会によって羽田空港まで強制連行された。ジャーナリストのハンナ・リウバコワによると、ツィマノウスカヤはトルコ経由便への搭乗を拒否し、警察へ保護を求めた。

ツィマノウスカヤは、2人のベラルーシ・オリンピック委員会役員に伴われ羽田に到着した。現在、彼女は警官やボランティアの人たちに見守られている。ベラルーシに戻るのは怖いかと問われ、「もちろん」と答えた。

ベラルーシ・オリンピック委員会のフェイスブック上の声明によると、コーチ陣が医師からツィマノウスカヤの「情緒的、精神的状態」に関するアドバイスを受けて、彼女をオリンピック競技から身を引かせることとした、ということである。しかし、ツィマノウスカヤは医師の診断を受けたことはないと語った。また、彼女がオリンピックチームから外されたのは、自分がインスタグラムで「コーチ陣がきちんとした手続きを踏まずに処理したこと」を公に批判したからだと語った

ベラルーシの独立系メディア「ネフタTV」(訳注:ベラルーシの反体政派メディア。現在ポーランドへ退避中)の編集長タデウシュ・ギチャンは、ツィマノウスカヤが、国際オリンピック委員会(IOC)へ訴えるために羽田空港で録画した動画をツイッターに投稿した。

ツィマノウスカヤがIOCに向けた要望を録画した。「IOCへ支援を求めます。ベラルーシ・オリンピック委員会から圧力を受けています。彼らは私の承諾なしに私を日本から連れ出そうとしています。IOCに仲裁を求めます」

ギチャンはその後、次のように伝えている。ターキッシュ・エアラインズは、ツィマノウスカヤを乗せずに日本を発った彼女は警察に保護されて羽田空港に残り、日本の外務省担当官の到着を待っていた。彼女は、ベラルーシのスポーツウエブサイト「トリビューン」への電話インタビューで、ベラルーシに戻ると投獄される恐れがあると語った。

Я боюсь, что в Беларуси меня, возможно, могут посадить в тюрьму. Я не боюсь того, что меня уволят или выгонят из нацкоманды. Я беспокоюсь о своей безопасности. И думаю, что на данный момент в Беларуси для меня небезопасно.

ベラルーシに戻ると投獄も考えられます。オリンピックチームから外されてもなんとも思いません。しかし、ベラルーシに戻ると、いまのところ私の安全は確保されないと思います。

ツィマノウスカヤの行動に対して、ベラルーシの国営メディアから数々の批判が寄せられた。一方、ソーシャルメディアユーザーや市民社会からは、国から彼女にかけられた圧力に反対する声が寄せられた。

いま東京の午前1時15分である。ツィマノウスカヤは、たったいま羽田空港の交番から出て行った。彼女は「安全な某所」へ移送されたと、日本のスポーツ報知は伝えている。彼女は引き続き亡命を求めているが、それ以上のことは分かっていない。

ベラルーシ・スポーツ・ソリダリティ・ファンデーション個人の政治信条のために投獄されたり圧力をかけられたりするベラルーシの運動選手を支援するための団体)の広報担当者がロイター通信へ語ったところによると、ツィマノウスカヤはドイツかオーストリアへの亡命を申請する意向だということである。

2020年のベラルーシ大統領選で行われた不正を糾弾する運動に参加したベラルーシの選手の何人かが、拘束されたり投獄されたりあるいはナショナルチームの選手資格をはく奪されたりした。オリンピックのバスケットボール選手アレーナ・レフチェンコや十種競技選手のアンドレイ・クラウチャンカなどの有名選手が現在刑務所に入っている。

オリンピック大会を統括するIOCは、メディアが報じた事項については承知している、そして、ツィマノウスカヤの件については調査中であると述べた。反体制派リーダのスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤは、IOCの対応を歓迎しており、ベラルーシ・オリンピック委員会が行った、選手の権利の侵害について調査することは重要な意味をもっていると述べた。

ベラルーシのクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が抱える問題に対して、IOCが迅速な対応したことに感謝します。彼女は、国際社会から保護を受ける権利および今後もオリンピックに参加する権利を持っています。また、ベラルーシ・オリンピック委員会による選手の権利の侵害について調査することは重大な意味があります。

校正:Eiko Iwama

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