国民的詩人ミス・ルーの生誕103周年を祝うジャマイカ ドゥードゥルで偉業をたたえるグーグル

ルイーズ・シモーネ・ベネット=コヴァリーの墓所に献花するジャマイカの文化・ジェンダー・エンタテインメント・スポーツ担当大臣オリビア・バブシー・グランジ。2022年9月7日はこの詩人の生誕103年にあたる。写真提供 ジャマイカ国立図書館 使用許可済

ジャマイカ国民最愛のこの詩人は、名誉博士ルイーズ・シモーネ・ベネット=コヴァリー、OM(メリット勲章受章者)、OJ(ジャマイカ勲章受章者 )、MBE(大英帝国勲章受章者)、名誉文学博士などのさまざまな敬称で呼ばれ、さぞかし立派な人に聞こえる。しかし彼女はジャマイカ人の間では「ミス・ルー」の名で通っていたし、それはこれからも変わることはない。彼女は自分たちのジャマイカ・クレオール語(パトワ語)で人々に話しかけた。生誕103周年にあたる2022年9月7日、Google Doodleの発信に人々が喜びと感謝の気持ちでいっぱいの反応を示したのは当然のことだ。

ルイーズ・ベネット=コヴァリー、つまりミス・ルーはジャマイカ・クレオール語を芸術の表現手段として使った先駆者のひとりでした。

ジャマイカの愛すべき詩人で歌手、そして活動家でもあったミス・ルーから私たちがどんな力をもらって、このかけがえのないジャマイカの言語に誇りを持てるようになったのかを探っていきましょう。

ジャマイカ文化の象徴的人物を描いたこのイラストは、ミス・ルーのユーモアと力強さやジャマイカの口頭伝承を受け入れようという姿勢を表現したものだ。ミス・ルーは木の下に座り、夢中で聞いている3人の子どもたちにお話をしている。フクロウのパトゥーは木の枝にとまり、クモのアナンシーは木の幹にもたれかかって、その話を盗み聞きしている。この絵の元ネタはアナンシーの物語にある「アナンシーとパトゥー」だ。この話は彼女が詩人・語り手・俳優としてよく語っていた多くの民話のひとつである。ジャマイカ民話では有名な登場人物のひとり、アナンシー(英語の綴りはAnancyだが、カリブ地方の中にはAnanciと綴るところもある)は欲深い日和見主義者の詐欺師で、その起源は西アフリカのアカン族の文化までさかのぼる。様々なお話や詩や歌の場合と同様に、ミス・ルーは誰にも真似できない独特の語り口で、あらゆる年代のジャマイカ人、特に子供たちの心にアナンシーを生き生きと蘇らせた。

このDoodleを作成したロビン・スミスは、作成依頼を受けた時には嬉しくてテンションが上がりっぱなしだったそうだ。

I screamed. I was just so excited about getting to work with Google, but then on top of that to have it be about a Jamaican subject, and that subject being Miss Lou, I was washed with pride for Jamaica.

うれしくてたまらず叫んじゃいました。Googleの仕事にありつけただけでもドキドキなのに、その上ジャマイカものでしょう。おまけにミス・ルーなのよ。私までジャマイカ愛でキラキラと輝いています。

スミスは次のようにツイートした。

わが尊敬する名誉博士ルイーズ・ベネット=コヴァリー様。103回目のお誕生日、おめでとうございます。今日のGoogle Doodleにあなたを描けるとは(それもここジャマイカで)なんて名誉なことでしょう!

このGoogle Doodleに後押しされて、この9月の間ずっと政府の注目がミス・ルーに集中することとなった。ジャマイカのいろいろな場所でイベントが毎日のように進行中である。

その誕生日には西インド諸島大学で胸像の除幕式があり、ミス・ルー展示会の開催とともに大学の言語研究講座の開講20周年記念行事が始まった。この講座はジャマイカ・クレオール語を推進し、言語を根拠にした根強い差別を払い除けようと努力している。

ナショナル・ヒーローズ・サークルにあるミス・ルーの墓所に献花している文化・ジェンダー・エンタテインメント・スポーツ担当大臣、オリビア・バブジー・グランジからのツイート。

今日は好天気に恵まれたミス・ルーの日です。ナショナル・ヒーローズ・パークで記念式を行い、ルイーズ・ベネット=コヴァリー名誉博士の生誕103周年を献花で祝っています。

彼女の誕生日の夜のFacebook Liveには、ジャマイカのアーティストたちが延々と賛辞を発信し続けた。一方Twitterでは、この若い姉弟コンビが詩の朗読を披露した。

小さなダブ詩人、ヌゴジ&タファリのライト姉弟は、ジャマイカの有名な民俗学者で詩人でもあるミス・ルーの生誕103周年を祝って、この詩人の作品「新しい学者(”New Scholar”)」を披露している。

ふたりはセント・アンドリュー教区のゴードン・タウンにあるミス・ルーの像の前でこの詩を捧げた。

芸術活動集団「キングストン・クリエイティブ」の投稿。

ミス・ルー、お誕生日おめでとうございます!あなたはジャマイカ文化の価値と美を認めた先駆者のひとりです。そんなあなたに敬意を表して、ジャマイカ文化の美に光を当てたあなたの足跡を私たちも頑張ってたどっていきたいと思っています。

ジャマイカの作家で詩人のパメラ・モーディカイのツイートは次の一言に尽きる。

ミス・ユー、ミス・ルー……

文化評論家ウェイン・チェンは、独立後時代のカリブ諸島の詩人たちに与えたミス・ルーの影響をこう指摘した。

ミス・ルーのおかげで我々は自分の言語でうまく文学表現ができるようになったし、彼女は多くのカリブ諸国の詩人たちに影響を与えました。例えばマイケル・スミス、ムタバルーカ、ポール・キーンズ=ダグラス、カモー・ブラスウェイト、デニス・スコット、ローナ・グディソンといった人たちです。

若手コメディアンでSNSタレントのGoogleへの感謝の言葉。

 Googleのジャマイカ人スタッフの皆さんに感謝。見逃しませんよ!これからも素敵なニュースをおねがいします。ミス・ルー、お誕生日おめでとうございます。

こんな感謝の気持ちを投稿したジャマイカ人もいる。

ルイーズ・ミス・ルー・ベネット=コヴァリー、OM、OJ、MBE。あなたの偉大さがGoogleに認められた時、あなたがいてくれてよかったとみんなが思いました。私たちのペトワ語を元気にしてくれてありがとう。ゆっくりとお休みください。

Tik Tok動画サービスで活動しているジャマイカ人コメディアンのジュリー・マンゴもミス・ルーの愉快な詩『ノー・リックル・トゥワング(Nuh Likkle Twang)』の朗読を捧げた。

ルイーズ・ベネット=コヴァリー、いやミス・ルー、OM、OJ、MBEでしたね。103回目のお誕生日、おめでとうございます。

ところで、ミス・ルーはなぜ特別なのだろう。著述家のジーン・ロウリー=チンが主張するように、ミス・ルーのおかげで私たちは「スマディ」(’Smaddy’)になったのだ。このジャマイカ語はほとんど翻訳不可能だが、威厳と地位のある尊敬すべき人という意味だ。

大学講師のダミエン・キングも同様の指摘をした。そしてミス・ルーが住んでいたゴードン・タウンにある彼女の胸像の写真もアップしている。

1960年代に育った人はテレビやラジオでジャマイカの言葉を聞くことはなかったでしょう。「下品な英語」として放送されなかったのです。今日みんなでその誕生日を祝っているミス・ルーはそれを変革し、ジャマイカの言葉の美しさや詩心を私たちに示してくれました。政治家たちの像なんかよりミス・ルーの像をもっと建てて欲しいですね。

ミス・ルーの息子のファビアンはGoogle Doodleが配信した回想録の中でこう語っている。

My mother was kind and loving. She was not tribal. But she always sided with the ordinary people. She believed in them unconditionally. And she valued the language they spoke. Because of Miss Lou, our language is respected and celebrated on the international scene, particularly in music and sports. The world has adopted many of the sayings she promoted such as, ‘Wa a gwaan?’ (What’s happening?). Her favorite was, ‘Walk good an good duppy walk with you’ (Take care as you go and may good spirits keep you company).

My mother was a trailblazer and pathfinder. Her legacy is long-lasting. I am blessed to have had such a mother and to have shared her with the world.

優しく愛情に溢れた母でした。先住民の出身ではありませんでしたが、常に大衆の味方でした。母は無条件でそんな人たちを信頼していました。そしてその言語を尊重したのです。ミス・ルーがいたおかげで、私たちの言語は国際的に、とりわけ音楽とスポーツの分野で敬意を払われ称賛されているのです。母が流行らせた’Wa a gwaan?’(「どうしたの?」)などの言葉の多くは世界中で使われています。母のお気に入りは’Walk good an good duppy walk with you.’(「気をつけて行ってらっしゃい。神の御加護がありますように」)でした。

母は先駆者であり開拓者でした。その遺産は失われることはありません。私にはこんな素晴らしい母親がいて、世界の人たちにも母を大切に思ってもらえてとてもよかったです。

ミス・ルーは独立後のジャマイカで重要な役割を果たした。植民地支配の手かせ足かせが緩みつつある時代に言語や文化が果たす可能性を表す例として、今こそ彼女は国民的英雄として認められる時ではないだろうか。最近の世論調査によると、ボブ・マーリーも同様にその有力候補とされているが、ジャマイカ人の三分の一がミス・ルーを国民的英雄に選んでいるのだ。

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