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母語を絶やさないために:ムロ語でつづる物語を初出版

カテゴリー: 南アジア, バングラデシュ, 人権, 先住民, 市民メディア, 教育, 文学, 朗報, 民族/人種, 芸術・文化, 言語, 開発

原文掲載日:2019年3月2日

ムロ語で初出版された本を手に持つ、先住民族ムロ族の人々。許可を得て掲載。

2019年2月21日、「国際母語デー [1]」のこの日、ムロ語の文字で書かれた物語 [2]が初出版された。出版したのは、ある慈善団体だ。その本は、ミャンマー、バングラデシュ、インドの国境地帯に暮らすムロ族に配布された。

[3]

バングラデシュにおけるムロ族の分布図。出典:Wikipedia。CC: BY-SA

ムロ族は、バングラデシュ南東部の丘陵地帯にあるバンダルバン地域 [4]に暮らす先住民族である。1991年の国勢調査では、人口はわずか22,178人だった。ムロ族はかつてチン族(訳注:バングラデシュおよびインドと国境を接するミャンマー西部のチン州に暮らす先住民族)から枝分かれし、その言語であるムロ語はシナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派に属する。

「ムロ族の童話」と題したその本には、ムロ族の信仰、寓話、文化、風習に関する物語が書かれている。この本はベンガル語でも出版されており、ムロ族以外の人々も読むことができる。著者はヤンガン・ムロさんで、これがムロ文字で出版された初めての物語である。この本は、無料で配布された [2]

「世界中の全ての言語に保護が必要です」とフェイスブックで語るのは、ニアズ・モーシェッド [5]さんだ。

ম্রো ভাষায় প্রথম ছাপানো বই !!! এটাই হচ্ছে আমাদের একুশে ফেব্রুয়ারির উদযাপন।

যে দেশের মানুষ মাতৃভাষার জন্য প্রাণ দিয়েছে, সে দেশের কিছু মানুষ মাতৃভাষা হারাচ্ছে যুগে যুগে। এগুলো সংরক্ষণের কোন কার্যকর পদক্ষেপ চোখে পড়ে না।

ムロ語での初の本!!! 記念すべき2月21日(国際母語デー)。

自分たちの母語が正当な地位を獲得するための戦いに市民も殉じてきたこの国にあって、いくつかの少数言語は消えつつあります。言語を守るための対策が全く取られていないように思います。

ムロ族の人に本を手渡すビディアノンド財団のボランティア。許可を得て掲載

ビディアノンド財団 [6]は、貧困やホームレス、特に孤児の問題に取り組んでいる様々な分野を支援するボランティア団体だ。8か所に支部があり、40名の職員と数百名のボランティアが活動している。ビディアノンド出版はその姉妹団体である。

グローバル・ボイスは、ビディアノンド財団の設立者であるキショール・クマール・ダス [8]さんに話を聞いた。

আমাদের একাধিক আদিবাসী এতিমখানায় কয়েকশ’ শিশু থাকে। তাঁদের মাতৃভাষায় বই উপহার দিতেই কাজটি করা। আর কাজটি করতে গিয়ে প্রথম সমস্যা ছিল ম্রো ভাষায় লেখক খুঁজে বের করা। এজন্য আমরা ফেইসবুকে বিজ্ঞাপন দিই।পরে আমাদের এক স্বেচ্ছাসেবকের মাধ্যমে এই লেখককে খুঁজে পাই। আর একটা সমস্যার ছিল ফন্ট।এসব ফন্টে কাজ হয় নি কোনদিন বাংলাবাজারে(বাংলাদেশের সবচেয়ে বড় বই প্রকাশনী কেন্দ্র)।আদিবাসী শিশুদের মাতৃভাষায় বই পড়ার আনন্দ উপহার দেয়ার দৃঢ় প্রতিজ্ঞা ছিল বলেই আমরা কাজটি করতে পেরেছি।

আগামী বছর আমরা আরো কয়েকটি ভাষায় বই প্রকাশ করার পরিকল্পনা করছি।এছাড়া আমরা আদিবাসী শিশুদের জন্য ভিডিও টিউটোরিয়াল তৈরির কাজ শুরু করেছি। সেটাও মাঝপথে থেমে গেছে স্বেচ্ছাসেবকের অভাবে।

私たちの各孤児院には、全部で数百名の先住民族の子供たちがいます。その子供たちに母語で書かれた本を贈りたかったのです。最初に苦労したのは、ムロ語の作家を探すことでした。しかし、フェイスブックに告知を出すことにより、ボランティアの一人がヤンガン・ムロさんを見つけてくれました。次に苦労したのは、ムロ文字を印刷することでした。バングラデシュ国内最大の出版市場バングラバザールでもムロ文字を使ったことがありませんでした。それでも、ムロ語の本をムロ族の子供たちのために作ろうという私たちの決意は揺るぎませんでした。

2020年は、さらに他の言語の本を何冊か出版する予定です。また、先住民族の子供たちのために教育動画を作り始めました。ただ、ボランティアの数が足りず、今は中断しています。

A map of the languages spoken in Bangladesh. Image via Wikipedia by Map Master. CC BY 3.0. [9]

バングラデシュの言語マップ。出典:Wikimedia Commons Map Master [9]. CC BY 3.0 [10].

バングラデシュでは主にベンガル語 [11]が話されている。全人口の98%がベンガル語を話すとされる(国内では1億6300万人、全世界では2億6100万人の話者がいる)。しかし、国内には39の少数言語 [12]があり、一部の言語は絶滅の危機に瀕している。調査員のサレック・ココンさんは、そのうち2つの言語(クルク語とナグリ語)が既に絶滅したと発表した [13]

言語を残す上での難問は、丘陵地帯の先住民族は自分たちの言語で話すのだが、書くのはベンガル語だということだ(部族によっては話し言葉しか持たない)。しかし、先住民族の若者数名が行動を起こし、新しい技術を活用して、自分たちの言葉や文字でデジタル社会に参入した [14]

2014年以降、5つの先住民族言語で初等教育を行えるようにするという取り組みがある [15]が、適切に実施されていないとの批判がある。

現在、バングラデシュには国際母語研究所(IMLI) [16]という言語の保護を目的とした機関がある。政府の言語問題への注視、多言語での出版活動を推進するビディアノンド財団などの活動にも支えられながら、少数言語を保護する運動がこれからも続いていくことを望みたい。

校正:Moegi Tanaka [17]Mitsuo Sugano [18]