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「ウクライナに栄光あれ」発言擁護のロシア人歌手に市民権剥奪を求める声

カテゴリー: ウクライナ, ロシア, 人権, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治, 検閲, 言語, 言論の自由, 音楽, RuNet Echo

ヴァレリー・メラジェの楽曲の一つ。YouTube 動画 [1]のスクリーンショット。

人気歌手であり音楽プロデューサーの ヴァレリー・メラジェ [2]は、ドバイで開かれたコンサートの最中、ウクライナに対するロシアの軍事侵攻について観客と意見を交わした。その模様が録画され、今では不利な立場に置かれている。観客の一人が 「ウクライナに栄光あれ!」(Slava Ukraini) [3]と叫ぶと、メラジェは小さな声で「英雄たちに栄光を!」 (Geroyam Slava!) と応えた。ロシアが侵攻を続ける中、こういった合言葉はウクライナを支持するスローガンとして広く行き渡っている。このフレーズが使われ始めたのは、国民の抗議が結実しキーウで政権交代を勝ち取った2014年のマイダン革命 [4]からだ。2022年に侵攻が始まってからは、ウクライナの自由のための戦いを賛美し後押しするために使われるようになった。

ヴァレリー・メラジェは1965年、グルジア・ソビエト社会主義共和国生まれで、現在はロシア国民である。彼の音楽活動での成功は主にモスクワとロシアで収めたものだ。兄のコンスタンティン [5]は、ウクライナでは肩を並べるほど有名な音楽家で、ヴァレリーのキャリアを築く手助けも行ってきた。兄弟が勉学に励んだミコライウはウクライナの町で、2022年の間ずっとロシア軍による大規模な砲撃 [6]を受け続けている。11月4日の 市長の発言 [7]によると、戦争が始まってからロシアがミコライウを砲撃しなかったのは225日のうち44日だけ、とのことだ。

メラジェ兄弟は、無期限活動停止中のガールズバンドのバイアグラや、歌手のポリーナ・ガガーリナ [8]など、ウクライナとロシアの両国で人気のバンドを数多く手掛けてきた。(ポリーナ・ガガーリナは2022年2月に赤の広場で行われた戦争支持のコンサートで演奏している)

ヴァレリーはソロ歌手としても成功を収めており、ロシアのシニア世代に大変人気がある。彼は常に戦争反対 [9]を明言し続けていたものの、「英雄たちに栄光あれ!」と発した彼の言葉にロシアの政界は激怒した。オレンブルグ州の上院議員のエレナ・アファナシエヴァは自身のテレグラムチャンネルに次のように投稿した。

Скотство! Уродство! Предательство! За такое Меладзе не званий надо лишать, а гражданства Российской Федерации

非道だ! おぞましい! 裏切り者め! この発言の報いとして、メラジェから今までの称号や名誉を剥奪するだけでなく、ロシア連邦の国籍を取り消す必要がある。

BBC Russia [10] の報道によると、ロシアのニュースサイトMashがテレグラムチャンネルに次のように投稿した。「祖国防衛軍」(Армия защитников Отечества)が、ロシア連邦捜査委員会と検事総長室に対しヴァレリー・メラジェをロシアに入国させないよう要求したというものだ。さらに Mash によると、ソビエト連邦崩壊の渦中、ウクライナに暮らしていたヴァレリー・メラジェがどういった経緯でロシア国籍を手に入れたのか、調査するよう組織が依頼したとも報じた。

その後、メラジェは自身のインスタグラムのアカウントにこのように投稿している。

Люди, я хочу чтобы Вы услышали меня, и поняли мои слова. Вот уже 10 месяцев я, как и многие другие люди, живу с ощущением тяжести и горя. Так уж вышло, что горячо любимые мной народы находятся в конфликте, в котором гибнут люди. Я НЕ МОГУ И НЕ ХОЧУ НИКОГО НЕНАВИДЕТЬ, И НЕ ПЫТАЮСЬ КОМУ-ТО УГОДИТЬ. Я мечтаю лишь о том, чтобы антагонизм прекратился, и между близкими народами установилось согласие. И ради этого я готов отдать все силы.

皆さん、私の言葉に耳を傾け理解してほしい。この10ケ月の間、他の人と同じように、私も憂うつと悲しみを感じながら暮らしている。私の深く愛する人たちが、人が死ぬ争いに意図せず巻き込まれているからだ。私は誰も憎むことはできないし、憎みたくもない。誰かを喜ばせようとも思わない。私が望むのは、近しい人たちの間で対立が終わり、和解が実現することだけだ。この望みが叶えられるなら、私は力の限りを尽くすつもりだ。

 

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ロシアのミュージシャンの多くが戦争反対を声高に主張している。その多くの楽曲は、コンサートやラジオ局、さらには学校のパーティ [12]でさえ禁止されている。

メラジェの楽曲のサンプルは Global Voices’ Spotify [13]
のアカウントでこちら [14]よりお聞きください。

校正:Motoko Saito [15]