略奪した財宝を貸し出そうとする英国に対するガーナ人の反応

BBCニュースのYouTubeビデオ「英国兵士によって略奪された財宝が貸出し契約でガーナに返還」からのスクリーンショット。公正使用。

英国に奪われたアシャンティ王国の金銀の財宝が、150年ぶりに一時返還されることになった。ガーナの人々はソーシャルメディアで、この貸出し取引に対する不満を表明している。

BBCの報道によるとこれらの財宝は、アシャンティ王国の王の即位25周年を記念して、2024年後半にガーナのクマシ市にあるマンシアパレス博物館で展示される予定だという。しかしこれは、アシャンティ族の支配者として知られる現在の王オトゥムフォ・オセイ・トゥトゥ2世が、昨年イギリスのチャールズ3世の戴冠式に出席した際に交わした3年間の貸出し契約に基づくものとなる。

ガーナのマンシアパレス博物館は1月22日、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館及び大英博物館と共同でこの発表を行った。その中で、今回の「重要な文化協力」の詳細について説明した。

ヴィクトリア&アルバート博物館や大英博物館を含む英国の主要な博物館は、1963年に制定された大英博物館法により、係争中の所蔵品を永久的に返還することを禁止されている。今回の貸出し契約は、博物館が展示品を元の国へ返還することができる唯一の方法なのである。

ガーナ文化大臣の特別顧問、ナナ・オフォリアッタ・アイム氏はBBCに対し、これらの財宝の文化的、精神的重要性を強調し、「それらは単なる物ではなく、精神的にも重要な意味を持つものです。国民の魂の一部です。私たち自身の一部が戻ってくるのです」と述べた。 彼女はこの一時的返還を、略奪の歴史から節目の年を迎え、前に踏み出すための一歩ととらえている。過去の暴力を思い起こし、心を新たにするためである。

アイム特別顧問は、この一時的返還は略奪から150年の節目としての「良い出発点」であり、「過去の暴力に対するある種の癒やしと祈念のしるし」であると述べた。カンバセーションの報道によると、クマシでの略奪は、第三次及び第四次アングロ・アシャンティ戦争(1873~74年及び1895~96年)が行われていた期間に発生した。 この略奪は戦地の混乱に乗じた行為というだけでなく、アシャンティ王国の住民に屈辱を与えるという政治的目的もあったと、BBCとカンバセーションが共に強調している。

アイム特別顧問はBBCのインタビューで、今回の貸出し契約はある複雑な理由から、ガーナ政府とではなくアシャンティ王と直接締結されたと述べた。というのは、アシャンティ王と直接締結する方がよりシンプルな手順でできると分かったからだ。この協定は最初にヴィクトリア&アルバート博物館が提案し、ガーナ法務長官の事務所宛に提出された。しかし、財宝をガーナでどのように受け取るべきかに関する多くの規定があることから、提案は却下されてしまった。しかし、アイム特別顧問が主張しているように、ガーナこそ自国の財宝を管理する方法を決める立場にあるとみられている。

一時返還される品々の詳細

合計32点の物品がガーナに返還される予定で、そのうち17点はヴィクトリア&アルバート博物館が、15点は大英博物館が所蔵しているものであることが、BBCの報道により明らかになっている。ソウルウォッシャーバッジ(王の魂を浄める黄金バッジ)3個、国家の剣、黄金で飾られた儀式用帽子、黄金の鋳造製リュートハープの模型などがある。 ソウルウォッシャーバッジは 19 世紀にオークションで入手したもので、国剣と儀式用帽子はアシャンティ地域の紛争中に略奪された。 しかし、リュートハープの模型は略奪されたものではなく、1817年にイギリスの作家で外交官のトーマス・ボウディッチに贈られたもので、後にアシャンティ王国の富と地位を示すために、アシャンティ国王から博物館に寄贈された。

ソーシャルメディアの反応

ガーナ人はこの一時返還に対して、ソーシャルメディアで不満を表明している。

ソーシャルメディアユーザーの中には、盗まれたものが元の所有者に貸し出しという形で戻されることに対して疑問を呈した。 X(旧Twitter)のあるユーザーはこう語った。

これらは略奪されたものです。略奪、つまり盗まれたものなのです。なぜ、謝罪と共に無条件で返還されないのでしょうか。なぜ元の所有者に貸し出されることになるのでしょうか。

特定の状況下では、盗みを行うと所有権が得られるのですか?

オーケーアフリカで提起されているように、多くの人は、「貸し出し」という言葉を使うことで所有権がガーナに無いと言われていると感じている。

また、X の別のユーザーは次のように述べている。
(訳註:現在このアカウントは凍結されている)

え~っと、略奪されたものと全く同じものならいいけど!偽物を作ることだってできるよね!

ソーシャルメディアの反応には、盗品を貸し出すという概念への疑問の声や返還の必要性を強調する声などがあり、この問題のデリケートさが浮き彫りになっている。

アフリカの文化財の実に90パーセントが現在ヨーロッパの博物館に所蔵されていることが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が行った調査報告書で明らかになった。ヨーロッパの博物館に展示されている、これらの盗まれた美術工芸品の返還を求める声が高まっている。特に、植民地の虐げられた人々を象徴する文化遺産であるにもかかわらず、19世紀に植民地軍に略奪されたり、宣教師や大使らから不当に奪われたりしたものに対してである。著名な例としては、 ギリシャのパルテノン神殿の彫刻(エルギン・マーブル)や、ナイジェリアのベニン・ブロンズと呼ばれる真鍮と青銅の工芸品などがあり、両国が長年にわたって返還を目指している。

英国ガーディアン紙の記事で指摘されているように、この動きは昨年8月に起きた大英博物館での盗難事件などをきっかけに大きく勢いを増した。セキュリティ侵害があり、また保管品の数があまりにも多いことから、ヨーロッパの博物館が世界の財宝を保管するのに最も安全な場所であるという概念は揺らいでいる。さらに、 博物館は文化理解という使命と略奪品の展示を調和させるのに苦労していると、批評家は主張している。

アイム特別顧問は、ホロコーストの文化財に関する法が改正されたことに注目し、大英博物館に略奪品の永久返還を認める法律の改正を強く求めていくこともできると指摘した。

 

校正:Motoko Saito

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