持続可能な開発目標 キューバの進捗状況はいかに

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SDGsとは貧困の絶滅、地球環境保護、人々の健康的な暮らしの保証などの目標を一本にまとめたものである 写真:マヌエル・アルメナレス 使用許可済み

この記事はオリヴィア・マリン・アルヴァレスが2022年1月にぺリオディスモ・デ・バリオ (「身近なジャーナリズム」といった意味のサイト)に発表したものです。メディア・パートナーシップ契約のもと編集版を再掲載します。 

2015年、国連は持続可能な開発目標 (SDGs)を採択した。この一連の目標の焦点は「貧困をなくし地球環境を守り、2030年までにあらゆる人々が平和な生活と繁栄を享受できるようにする」ことである。

SDGsは次の3つの方針に沿っている。1.すべての国が関係する世界的な取り組み。2.開発に重点を置いた従来型から持続可能なものへと劇的に変革するもの。3.平等と無差別、そして人権の尊重と保護と啓発推進に対する政府の責任を真剣に考える開化的なもの。

持続可能な開発目標(SDGs)の具体的な中身とは

持続可能な開発のための 2030アジェンダの一部として、17のSDGsが国連にて承認された。さらにSDGsには169の達成基準があり、231の指標が設定されている。

目標1は、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと。目標2は、持続可能な農作業の促進と飢餓や栄養不良の撲滅。目標3、すべての人に対する医療保障。目標4は初等・中等教育の無償化、技術研修の機会均等化、またジェンダー格差の是正。

ジェンダー格差の是正については目標5で、性と生殖に関する健康と権利の保障によるジェンダー平等の実現を目指している。目標6、すべての人が安全な飲料水を利用できること。目標7、環境保護のために安価なクリーンエネルギーの確保。目標8は、経済成長の促進、雇用の創出、強制労働の根絶。目標9、誰もが平等に情報を入手できること。目標10は、低所得者層に経済力をつけ誰もが参加できる経済を目指し、金融市場を規制する強い政策を行うこと。

目標12は、効率的な資源管理、廃棄物の削減、持続可能な消費形態の促進。目標13、気候変動対策に取り組み、地球温暖化を抑えるために世界的な行動を起こすこと。目標14は、海洋生態系の保護。

目標15は、動植物の生息環境や生物多様性の損失を食い止めること。目標16、暴力を減らし法の支配を強化して、人権尊重と紛争の恒久的解決を目指すこと。最後に目標17として、このSDGsを達成するための世界各国の連携と協働。

キューバでは目標達成に向けてどう取り組んでいるのだろうか

キューバ人権監視団(OCDH)によると、2023年にキューバ国民の88パーセントが極貧状態であった 写真:ホルヘ・ボネ 使用許可済み

SDGsの達成を目指し、キューバ政府は持続可能な開発のための2030アジェンダを実行するナショナル・グループを創設した。これは経済企画省(MEP)が議長を務める全国組織である。同時にさまざまな団体が他の公共機関と連携し、この17の目標ひとつひとつに政策を講じ、実行に移している。

2021年、国連の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムの前に、キューバは国内のSDGs進捗について初めての自発的国別レビューを提出した。そのフォーラムでは、SDGsへの取り組みによる各国の大きな進捗が紹介された。

貧困度の評価に使われる指標のひとつに人間開発指数 (HDI)というものがある。健康面、教育面、経済面から国の人間開発度を測るもので、キューバの指数は1990年から2019年にかけて0.680から0.783へ上昇しており、189の調査国中70位である。

しかしキューバ人権監視団(OCDH)が、第6回キューバでの社会的諸権利の動向報告書を用意した。それによって政府作成の報告書とは異なる事実が明らかになった。監視団の調査では、2023年にはキューバ国民の88パーセントが極度に貧しい暮らしをしており、その割合は前年より13パーセント増加していた。

食品の安全性については、ここ数年、政府は農業生産性の向上と栄養不良の撲滅を目指した一連の法案や政策綱領を採択してきた。しかし世界銀行のデータでは、キューバの農業部門の付加価値は2019年以降マイナス成長をたどっている。

健康福祉については、キューバの医療制度は無料であり、新しい公衆衛生法の草案も承認審査中である。けれども原材料不足のため、国民の多くは薬や医療用品の入手が困難である。

教育に関しては、どの教育水準でも無償である。2019年までの就学率は初等教育では99.8パーセントに達し、中等教育では84.4パーセントを示した。

ジェンダー平等については、2019年に承認された憲法で国の責務を明記している。しかし、2021年に国家女性活躍推進計画が立てられたものの、キューバにはジェンダーに基づく暴力を幅広くカバーする法律がない。市民社会団体が訴えの声を上げ、またフェミサイドが増加しているにもかかわらず。

長年に渡り、キューバでは国民に供給される水の量が減ってきている ペリオディスモ・デ・バリオ提供の写真 使用許可済み

水に関してはインフラ拡張工事を進めており、2030年までに国民の76.2パーセントに安全管理された飲料水を供給するのが目標だが、人々への給水量は年々減ってきている。

持続可能な街やコミュニティづくり(訳注:これはSDGsの目標11に該当する)については、新都市アジェンダを進める国家計画 2017–2036が2019年末に承認された。これは国連人間居住計画(国連ハビタット)と同時につくられ、その戦略計画は8つの柱を掲げてSDGsと歩調を合わせている

つくる責任つかう責任、気候変動、水陸の生態系に関する目標を達成するための対策は、新環境法に組み込まれた。新環境法は人民権力全国会議で承認され、2022年5月16日から施行されている。

平和、公正、確かな制度についての目標の枠内で、キューバ政府は「平和、一体性、社会正義の促進は国の政策と活動に欠かせない」と公開文書の中で示している。

しかし、NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ (HRW)が2023年初めに発行した 年次報告書で示しているように、キューバでは近年、法の名の下に人権侵害が行われるようになった。受刑者人権擁護団体の資料では、2023年11月までに国内で1062名の政治犯が収監されていた。

さて、SDGsの達成のために世界的な協力関係を築くという最後の目標について。キューバでは2021年までに22の機関、基金、計画が連携して動いており、最後の目標に関連する達成基準を進めることに貢献しているのだ。

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