映画で知る、台湾人起業家が東南アジアで見る夢と現実

写真は台北映画祭のユーチューブチャンネルの映画予告編より

外国人投資家として一旗揚げようと、ミャンマーに乗り込み格闘するエビ養殖専門家を通じて、多くの台湾人が東南アジアに抱く誤ったイメージを、両者のちょっとした思い違いを通して描く記録映画を紹介する。「鑽石水族世界」(水槽を泳ぐダイヤモンド)はミャンマーに移り住んだ台湾人男性が、台湾系ミャンマー女性をパートナーとして、ミャンマーで最初のバナメイエビ養殖場を開く実話だ。映画はベンガル湾に面したラカイン州で2人が困難に立ち向かいながらエビを養殖し、成長したエビをヤンゴンの高級料理店に売り込む様子を取材している。映画は2023年6月に開催された台北電影節(台北映画祭)の最高賞、百萬首獎(百万元大賞)をドキュメンタリー映画として獲得している。
こちらは映画の一部 

人の心を強くとらえるこの記録映画のため、映画監督の黃琇怡[](ホアン・ショウイー)は現地で何年も費やして撮影を行った。グローバルボイスは黃監督と、台湾の人々の抱く対ミャンマー観、対東南アジア観、そして台湾には東南アジアを新天地と考える人がなぜいるかのか、その理由について話を伺った。インタビューは台北映画祭での上映の際に、監督に会って話してから、メールを使って華語で行った。インタビューはグローバルボイスのスタイルに合わせて編集、要約してある。

フィリップ・ヌーベル (以下、FN): 上映後の観客との対話で、監督は東南アジア出身者が台湾で受ける差別的な扱いについて述べられました。差別的扱いはどこから来ているのでしょうか?今回の映画は、差別的な考えを克服する何かの手がかりになるでしょうか? 

黃琇怡: 台灣對於東南亞的陌生與歧視,有很複雜的脈絡。其中一個根源,就臺灣過往經濟發展上,對於勞力上的需求,從東南亞國家大量輸入勞工,以及台灣家庭在社會與經濟的轉變下,30年前陸續有東南亞女孩嫁來台灣,成為新住民母親。這些本應該可以成為文化融合的機會,但歧視無所不在,台灣人在許多地方會展現自己的優越感。就如同在西方國家,也有歧視亞洲人的狀況,這是全世界都有的問題。

在影片中,其實只能讓觀眾從不同的觀點與價值觀,了解對陌生去思考並產生自己的判斷。

黃琇怡:  台湾人の東南アジアへの無理解と差別意識はいくつもの要因から生まれています。1番の要因は台湾の経済発展は労働力が必要だったので、海外から大量の労働者を呼び寄せてきたことです。多くの人々が東南アジアから台湾社会に流入した結果、台湾人の家庭は経済的にも社会的にも変化しました。30年前に台湾男性と結婚した東南アジアの女性は子供を産んで、新しい台湾の住民になりました。この変化は新しい文化的融合が起きる機会ではあったのですが、現実にはどこにでも差別が生まれる状況を作ってしまいました。台湾の人々は事あるごとに自分たちの優位性を示すようになりました。よくある欧米人のアジア人差別と似たことを、こんどは台湾人が行うようになったのです。ただ私が映画で台湾の人たちに伝えたいのは、外国の人たちの物を見る目や価値観は台湾とは異なるので、台湾とは違う方法や基準で判断しても当然だと言うことだけです。

FN: 主人公の男性は、台湾に毒づきながらも懐かしんでいるようですね。「ミャンマーは50年代の台湾、80年代の中国のようだ」と言っています。ミャンマーは、台湾では手に入らなかった成功が掴める新天地だと思っている人もいるのでしょうか? 

黃琇怡:  緬甸是一個中低度發展的國家,加上她的政經情勢不穩定,對某些人來說,反而看見機會。不是每個人都有膽量這樣嘗試。其實更多中國人在緬甸發展。整個東南亞都是中國的後花園,很多人會到這些國家尋找原料等等的資源,然後輸回中國。我在緬甸遇到許多中國人,都是要把緬甸的蝦子、蝦仁帶回中國去賣。緬甸到處也開著中國老闆的火鍋店。

台灣要到緬甸尋找機會,因為環境不穩定,要擁有能高抗壓的能力,也要看想發展的方向是什麼?台灣人對於鄰居們(中南半島)的認識實在太淺薄,這會付出相當大的成本代價,提高失敗的機會。因為每個國家的民情、工作方式、性格、生活所需都不同,這些都需要花費很多時間去田野,才能明白有什麼機會。

台灣在過去因為經濟發展以及過度養殖,破壞了環境。目前台灣蝦農也是努力要提升蝦苗的品質,克服極端氣候帶來的影響。至於在其他面向的發展上,我倒認為要好好思考經濟發展是不是要無限上綱,是不是要留給後代好一點的生活空間,而且也還有眾多生物共生在這塊土地。

黃琇怡: ミャンマーはまだ発展途上の国で、政治的、経済的にも不安定です。これをチャンスと考える人もいますが、台湾人誰もが危険をいとわず挑戦できるほど肝は据わっていません。実際ミャンマーに一番投資しているのは中国人です。事実東南アジア全部が中国の裏庭と言えるのです。東南アジアに渡って原材料やその他の資源を手に入れて、中国に送り返そうとする人たちが、これからもどんどん増えてゆくでしょう。

私はミャンマーで多くの中国人と会いましたが、誰もがミャンマーのエビやエビの剥き身を中国で売って儲けたいと考えてました。ミャンマーには中国人の経営する鍋料理店が至るところにあります。台湾の人たちがミャンマーに行きたいのは、商売で一旗揚げるためです。けれどもミャンマーの状況は不安定で、それに打ち勝つには胆力が必要です。ミャンマーでどの商売を手がけるかによっても、成果は大きく違いますから。

台湾人は隣人(東南アジア)への理解が乏しく、そのために現地で無駄に時間や費用を費やし、失敗の危険性を高めています。人々の住む環境や働き方、考え方や生活に必要なものは、国により異なりますから、その場所に行って何に商機があるか掴めるようになるには長い時間がかかるのです。

過去には、経済発展と過剰養殖が台湾の自然に被害をもたらしました。現在は、台湾のエビ養殖業者も健康な稚エビの飼育と、異常気象の影響を緩和するために努力しています。経済の発展全般についてですが、無制限な経済発展をこれからも認めてよいのか、将来の世代のためにより良い住環境を残しておかなくて良いのかを真剣に考えるべきです。台湾は非常に多くの生き物が共生する、自然が豊かな島なのです。

FN: 映画の中で、黃さんが後ろから、カメラの視界に入る所に出てくる場面があります。長い撮影期間中に、主人公の女性が流産した場面で、黃さんは入り混じった気持ちを共に分かち合おうとしているようです。記録映画の監督は、滅多なことではカメラの前に立たないと思いますが、なぜカメラの前に出たのですか?

黃琇怡: 我原本非常排斥這麼做,希望我不用出現在鏡頭前,或是我出現的時間不需要太長。但是這對我來說是一種跟自己的「和解」的過程。影片快接近完成時,我覺得還少了「什麼」,以至於讓我無法結束影片。後來我的剪接師說,把我自白的片段剪進來好嗎?我認為可以試試看。

在現實裡我跟女主角道歉,但是現實的情緒影響電影時空裡的敘事,我發現在電影中好好將自己的道歉說出來,彷彿是影片的最後一塊拼圖。在剪輯師剪了我的自白之後,我鼓起勇氣看完它,然後我有個很清楚的聲音出現在我的心中:影片結束了,終於結束了。

黃琇怡: はじめはカメラの前に出てよいものか、出るにしてもほんの少しにせねばとためらいました。しかし、この行為は自分自身と和解するための過程だったのです。撮影が終わりに近づくにつれて、本当に終わらせるにはまだ何かが足らないと感じていました。後になって編集者から「あなたが告白する場面を映画に入れたい」と相談を受けました。私は試してみることにしました。

その場面で私は主人公の女性に謝っていたのですが、確かにそのときの気持ちは、映画が再現している空間と時間に特別な力を与えるのではと思いました。女主人公に対して、私がどれほど謝りたいと思っていたか、画面の中で十分に伝えることが、この映画の完成に必要な最後のこまだったのです。自分の告白が加わった映画本編を、私は勇気を振り絞って見ました。そしてこの映画がとうとう完成したのだと、自分の内なる声がつぶやくのがはっきりわかりました。

FN: この映画では台湾語、中国語、ビルマ語、英語が行き交っています。映画の中心となる言語の選択について監督の考えを聞かせてください。 

黃琇怡: 影片以台語作為我的第一人稱口白,第一個原因是因為片中幾位台灣人都是以台語交談;第二個原因是我跟男主角在溝通時,是以台語為主要語言,因為我們不想讓緬甸員工知道我們對話的內容;最後一個原因是在東南亞有許多華人,他們的祖先從中國福建、廣東等地,過去因為戰爭等因素而移民過去。我在拍攝過程經常遇到跟我說福建話(也就是台語)及廣東話、客家話的華人。所以最後我決定以台語作為我的第一人稱旁白語言。

而緬甸語及英語,則主要是主角們在蝦場工作時,都是以中文、英文、緬甸話,再加上肢體語言做溝通方式。

黃琇怡: この映画で、私が自分の話をする時は台湾語です。第一の理由は他の台湾人も映画では台湾語で話しているからです。次の理由は男性の主人公と話をする時、話の中身をミャンマーの従業員に聞かれたくないので台湾語を使っていたからです。最後の理由は、東南アジアには華人がたくさんいることです。その祖先は、福建省や広東省などの沿岸部から、戦禍や混乱をのがれて海を渡ってきた人たちです。撮影中も中国の人にしばしば会い、福建語(台湾語と同じです)、広東語、客家語で話しかけられました。最終的に、私は自分が語るときには台湾語を使うことにしました。

もちろん他の言語にも出番があります。エビ養殖場では華語、英語、ビルマ語とそれに身振り手振りも加えて主人公は意思疎通しています。

FN: 台湾でのこの映画を見た人の反応はどうですか?ミャンマーでも上映予定はありますか?

黃琇怡: 台灣觀眾會因為每個人的價值與生活經驗而有不同的回饋,但基本上都認為這是一部好看的影片。緬甸因為目前是由軍政府執政,政治不穩定,所以現在不太可能有機會上映。但希望有一天可以回到緬甸放映。

黃琇怡: 台湾での反応は、観客の価値観や人生経験を反映して人それぞれでしたが、誰もが良い映画だと認めてくれました。ミャンマーは現在軍政下にあり政治的にも不安定なため、今のところ上映される見込はないと思います。もちろんいつの日にか上映にためにミャンマーに戻る日が来れば良いなと思っています。

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