スケートボードで慣習に挑むエチオピアの女性たち

 

仲良く練習するガール・スケーターズ 写真ユニセフ エチオピア Flickr より (CC BY-NC-ND 4.0 DEED)

毎週土曜日の朝になると、女性たちが大人も子供もスケートボードの技を極めようと、​​エチオピアの首都アディスアベバにあるアディス・スケートパークに集まってくる。彼女たちは、バランスのとり方から完璧な着地まで、スケートボードの練習に熱心に励んでいる。そしていろいろな技を習得しながら、エチオピアのジェンダーに関する固定観念、いじめ、性差別にも挑んでいるのだ。

ヴォーグ誌によると、この活動は、ある女子スケートボードグループの創設者ソシナ・シャラが、3年以上前にソーシャルメディアを通じて始めたという。

ソシナは、「女子のための無料スケートボードレッスン」とだけ書いたシンプルな広告をインスタグラムとテレグラムメッセンジャー (Telegram) に投稿した。エチオピアでも、他の国々と同様にスケートボードは若い男性がするものという思い込みがある。ソシナはそれを知っていたので、親たちに禁じられて、女子は誰も参加しないのではないかと心配していた。しかし驚いたことに、最初のレッスンには10歳から25歳を中心に数十人の女性たちがスケートパークに集まったのだ。

数年のうちに、参加者はますます増えてきた。現在、シャラが創立したグループ、エチオピアン・ガール・スケーターズ (Ethiopian Girl Skaters: EGS) は、メンバーが60名以上の国内初の女子スケートボードグループになっている。

エチオピアの女子スケートボードグループは、エチオピアン・ガール・スケーターズ (EGS) だけではない。18歳のヘリナ・ソロモンが2021年に設立したスケートボーディング (Set Skateboarding) もそうだ。ソロモンのスケートボードへの熱意は世間から注視されてしまった。そして、10代の女の子が、なぜ「男性中心社会」の現状を変えるような挑戦をしてくるのか理解できない一部の男子たちからは、個人攻撃や性的嫌がらせを受けることになったのである。Olympics.com のインタビューで彼女は次のように語った。「とても嫌な思いをしました。スケートパークで男子たちが女子をいじめてくるんです。私たちがスケボーに乗っていると嫌がらせをするんです」

最初のスケーターが登場したのは、1940年から1950年代初頭にかけての米国カリフォルニア州だった。当時のカリフォルニアのサーファーたちが、波がない時にサーフィンの代わりにすることを探していて誕生したと言われている。現在では、スケートボードは大西洋を越え、エチオピアのアディスアベバなどは、急速にアフリカのスケートボード界の中心地になりつつあるザ・リポーター(エチオピア)紙によれば、世界中に1,000万人以上のスケーターが存在し、50億ドル(約7,700億円)のスポーツ産業だ。

エチオピアをはじめアフリカ全体で、スケートボードと言えば男子のスポーツとされることが多い。シャラは、フランス通信社 (AFP) の YouTube で「女子の場合、男子と一緒にスケボーなんてできません。私たち女子は家で親の手伝いをしないといけないから」と話している。ハンナ・ブレスもシャラのグループのメンバーだ。彼女は「誰も応援してくれないから、スケボーを始める女子はほとんどいません。でも、誰かが最初に道を開かないといけなかったんです。行動を起こすグループが必要だったんです。それが私たちだった。そのメンバーのひとりであることをとても光栄に思っています」と語った。

ソロモンは、Olympics.com のインタビューで、「[略]両親には反対され、この社会はスケートボードに冷淡です。素行の悪い男子がするスポーツに見えるからです。だから、私のような女子がそれに張り合うことはできません」と語気を強めた。

このようにスケートボードには、女性たちへの嫌がらせや固定観念がつきまとっているが、勇気あるスケボー女子たちは怖気づくことはない。ボードに乗っている彼女たちから満ちあふれる笑顔、自信と熱意から、スケートボードを心から楽しんでいることがわかる。

ハッピー エチオピアン ニューイヤー!

彼女たちの活動は、ドキュメンタリー映画『スケートパーク・シスターフッド:エチオピアン・ガール・スケーターズ』にも収録されている。

 

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エチオピアン・ガール・スケーターズを描いた映画が、トライベッカ映画祭2023の公式セレクションに選ばれたことをお知らせします!

スケートパーク・シスターフッド (Skatepark Sisterhood) は、6月10日(土)午後4時15分よりトライベッカ・フィルム・センターにてプレミア上映

ソロモンが  Olympics.com で指摘しているように、自分の子どもにはスケートボードに関わって欲しくない親もいる。社会的に認められていないし、手に負えない行動をとるスポーツだと思っているのだ。アディスアベバ市内の交通量の多い通りでスケートボードをしていると、危険な事故に逢う可能性が高いことも、その理由のひとつかもしれない。

エチオピアは、飢餓や経済的困難などの重大な課題に取り組んでいる。国際青少年ジャーナルの報告書によれば、アフリカで2番目に人口の多いこの国にとって、若者の雇用は大きな課題となっているのだ。

スケートボードが国内で成長を続けるなか、EGS の共同設立者のミッキー・アスファウは、若い女性たちがこのスポーツに関わりながら、より大きな可能性を掴むことができればと期待している。

スケートボード熱の高まりのプラスの効果としては、エチオピアのスケートコミュニティの尽力でスケートパークが建設されたり、道路が改修されたこともある。ジー・ンゲマはさらに別の視点から、オンラインメディア OkayAfrica で、ある写真展を紹介した。スケートボードを独習した後、独学で写真家に転身した男性たち、ヤゼル・ゴベジーとルエル・デスタの写真展『The Streets, Our Playground』だ。記事では「エチオピア・ガール・スケーターズのメンバーたちが、スケートボードを乗りこなしながら、いかに自然に楽しく仲間づくりをしてきたか」が国際的な注目を集めたことに触れている。そして、この若手スケートボード写真家たちの活動方針を称賛している。

「現在、このふたりの男性は、少人数でもひたむきに活動するスケーターグループを代表して、これまでスケーターの自分たちがスケートコミュニティで受けてきた愛情と支援に応えようと、​​今度は写真家として新しいクリエイティブな世界に挑戦しています。そして彼らの愛情と支援とともにコミュニティに恩返ししているのです」

校正:Yasuhisa Miyata

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