
幽霊話に登場するマイル・ガリーの教会廃墟 撮影:アダム・コーン 写真はFlickrより CC BY-NC-ND 2.0.
ハロウィンは米国や欧州の一部では盛大に催される季節行事だが、ジャマイカでは本当の意味でハロウィンは受け入れられていないと考える人も多い。ハロウィンは元々ケルト人が年の終わりに行なっていた古代のサウィン祭に起源を求めることができる。サウィン祭の記録は8世紀からあり、その歴史は古代ローマ時代にまでさかのぼれる。この習俗は時間の経過とともにキリスト教の諸聖人の日(11月1日、万聖節とも言う)」と翌11月2日の万霊祭と一体化していった。
アメリカ式のバレンタインデーは、ジャマイカと無関係な、金儲けに毒さた行事ととして叩かれやすく、ハロウィンも同じ目で見られがちだ。そして教会への信仰の篤さもハロウィンへの反感の要因だ。
あるジャマイカ人の不満:
What does Halloween have to do with Jamaica? Unu foreign minded bad
— Aurelius (@noslickting) October 27, 2024
ジャマイカでもハロウィンを祝う人が増えてきてきたが、この古い祭りがジャマイカに現れたことついて、2人の教会指導者は全く異なった考えだ。
ハロウィンとジャマイカに何の関係があるのか?うーん、外国かぶれはよくない。
とくにキリスト教根本主義の教会指導者やその信者はハロウィンを邪悪な行事と見ている。一方、司祭のショーン・メジャー・キャンベル神父をはじめ異なった考えの人もいる。「ハロウィンを祝う人を非難するのは、自分の信仰を他人に無理強いするのと同じだ。いま教会が時間を割いて行うべきは、全ての人が正義と対等な権利を獲得できるように支援することだ。」
ジャマイカの若者は、ハロウィンを死者や怪物を話題にして仮装やパーティーで盛り上がる楽しい行事として受け入れつつある。イベント業者もハロウィンをビジネスチャンスと考えている。最近開催された「Scream(悲鳴)」と銘打ったイベントも大成功のようだった。
Anyways…cheers to another successful staging of the Region’s biggest Halloween Festival 🎃…
Vibes was unmatched… majority of the patrons in costumes? 🥹 https://t.co/CFg544zxDY pic.twitter.com/jzVRYmn095
— Jhevvv (@Jhevvvv) October 26, 2024
ハロウィンの話はどうあれ、ジャマイカの昔話は「ダッピー(幽霊や死霊)」と恐ろしい怪物のうわさがいっぱいだ。そうした話の多くはキリスト教とは関係なく、オベアのように先祖から伝わったアフリカの話に由来している。
最も恐れられているダッピーのローリング・カーフは、殺人鬼や畜殺者のように非常に邪悪な人間の死霊で、時に姿を変えて現れる。燃え盛る炎のような赤い目をしたこのダッピーは、カラカラと鳴る鎖を引きずりながら夜の田舎道を徘徊しており、その姿は半人、半獣で通常は山羊か牛の姿で描かれる。
絵と音楽は、ジャマイカに伝わる多数の恐ろしい怪物について語り継いできた。例えばローリング・カーフはルイーズ・ベネット=コヴァリー(ミス・ルー)の詩題となっているし、バニー・ウェイラーの歌で多くの人が知るダッピーのブラックハートマンは、人の心臓を奪うために島中を旅しており、知らない人に気をつけるように、子どもへの戒めとして語られてきた。人の心臓を奪うこのダッピーが今も恐れられることは、物騒な今日においても意義があると考える人もいる。
伝説や昔話を題材とした現代美術で知られるリチャード・ナットゥーはリバー・マンマに注目して一連の絵画を描いている。
ブラウンボートのエンジンは調子がおかしくなった
リバーマンマが水上に姿を現し、
髪をとかしながら、夜と赤い月をよびよせた
ワニに変身してボートを水中に沈めるのだ
だがそのとき、水から顔を出したジュン・プラムに気づき、
これが放浪者からの捧げ物であると思った。
しばらくののち、リバーマンマは不愉快な気持ちは、
別の方法で沈めることにした
リバーマンマは、ジャマイカのリオコブレ川に架かるフラットブリッジ周辺に出没する人魚で、人間を川底に引きずりこむ。アフリカからの連れてこられた奴隷によって18世紀に架けられたこの古い橋は、不思議なことに交通事故が多発する場所である。ローナ・グッディソンもこの人魚の詩を書いている。
「ローズ・ホールの白い魔女」とも呼ばれるアニー・パーマーは、ジャマイカでも一番有名な伝説の魔女だ。モンテゴ・ベイにあるローズ・ホールはアニーが魔法で悪行を働いたとされる場所で、ジャマイカでも一番人気のある観光地だ。20世紀に書かれた人気小説から派生した伝説と、歴史上の事実は全く異なるが、なぜか人を惹きつける魔女伝説はいまでは定番のダッピーの話に昇格し、毎日観光客の背筋を寒くしている。
MORE NIGHTS!!!! Rose Hall Greathouse Haunted Night Tour is now offered 4 nights per week. Learn more about the White Witch of Rose Hall and how she reigned with terror during 18th century Jamaica. #Whitewitchawaits #idareyou #experiencethemagicatrosehall #montegobay #caribbean pic.twitter.com/L1RKdFgLUn
— Rose Hall Jamaica (@rosehalljamaica) April 22, 2022
ジャマイカの人たちの多くがハロウィンを拒絶する一方で、まだダッピーズを信じているのだろうか?少し前、ある出来事が地元で大きな話題になった。ダッピーか、ポルターガイストと思われる幽霊が、ある家に向けて投石しているという噂がスペイン街の住民の間に広がった。その家の11歳の少年が家にいると投石が起こると言う噂だった。同じ町では洋服の仕立て屋で、死んだ店主が怒って石を投げているという別の噂話もある。
ジャマイカの大衆紙、ジャマイカ・スター紙にはそのほかにも超自然的な体験談がしばしば登場する。その中にはダッピーが姿を変えて現れる話や、ダッピーをビデオで撮影した話もある。
ダッピーの出る教会の話もジャマイカの人たちの背筋を寒くしている。マンチェスター教区のマイル・ガリーの深い森の中には、廃墟となったセント・ジョージ・アングリカン教会がある。信徒がこの教会を放棄した理由は、幽霊が出没するからだと言われている。この教会はこうした話が尽きず、夜になるとタクシー運転手は怖がってこの場所には止まらない。もし夜この教会近くを通ると、オルガンの音が聞こえるそうだ。
Duppy Church near Mile Gully, Manchester, Jamaica. pic.twitter.com/DTqBQk7rNt
— Photo Jamaica (@PhoJa01) March 28, 2023
ジャマイカのマンチェスター教区マイル・ガリー近くのダッピ―教会
幽霊を信じるかどうかには別として、ジャマイカにはハロウィンにふさわしい幽霊話があふれている。
(トライアル応募者の翻訳を見直して掲載します)