香港民主活動家45人に国家転覆共謀罪で禁固刑

戴耀廷 資料写真: ジェニファー・クリーリー/HKFP. 使用許可済

この記事はケリー・ホーが執筆し、20241119日と21日に香港フリープレスに掲載されました。パートナーシップ契約の一環として編集してここに公開します。

香港の高等法院は、香港史上で最大規模の国家安全保障事件の判決を下した。 民主活動家戴耀廷(たい ようてい、ベニー・タイ)には、2020年の非公式な予備選挙を企てた疑いで、禁固刑10年が言い渡された。

戴耀廷は、中国政府が施行した香港国家安全維持法に基づく国家転覆共謀罪で有罪判決を受け、11月19日に判決を受けた民主派45人のうちの1人だった。

陳慶偉(ちん けいい、アンドリュー・チャン)、 李運騰(り うんとう、アレックス・リー) 陳仲衡(ちん ちゅうこう、ジョニー・チャン)の3人の判事は戴に禁固10年の刑を言い渡し、判決文で戴を陰謀の「首謀者」であると述べた。

戴は当初15年の刑を言い渡されたが、 国家安全保障関連の裁判のために選ばれた判事らが彼の有罪答弁を検討した結果、10年に減刑された。「戴の唯一の減刑策は、早期に有罪を認めることだった。 それによって慣例通り三分の一の減刑が与えられる」 と判決文は述べている。

元区議会議員の趙家賢(ちょう かけん、アンドリュー・チュー)は、当初の刑期が半分に減刑され禁固7年となった。判事が同氏の有罪答弁と検察への協力を考慮したためである。

趙は、區諾軒(おう だくけん、オウ・ノックヒン)、鍾錦麟(しょう きんりん、ベン·チャン)、林景楠(りん けいなん、マイク‧ラム)と共に検察に有利な証言を行った民主派4人のうちのひとりだった。裁判中ずっと保釈されていた唯一の被告、林は禁固5年2ヶ月の刑を言い渡された。

活動家鄒家成(すう かせい、オーウェン·チョウ)には2番目に長い刑期が言い渡された。鄒は、すでに 騒乱罪で5年の禁固刑を受けていたが、それとは別に7年9ヶ月が言い渡された。

判事は、鄒が「急進派」候補者を結集させるオンライン請願運動の発起人であったことが重罪の要因となると判決を下した。元区議会議員の黄子悦(こう しえつ、ウォン・ジーユト)も禁固4年5ヶ月となり、騒乱罪で禁固3年を続けて受けることになる。

学生運動で世界的に知られる黄之鋒(こう しほう、ジョシュア・ウォン)は、有罪を認めたため刑期が3分の1に減刑され、禁固4年8ヶ月の判決を受けた。判事らは2016年からの黄の過去の有罪判決を踏まえ、「黄は善良な人物とは認められない」と述べ、さらにこう続けた。

The sentence we passed on [Wong] also would not have a crushing effect on him.

このような判決を下しても、彼は決して懲りることはないだろう。

立場新聞の元記者何桂藍(か けいらん、グウェネス・ホー)は、減刑の申し立てをしなかったため禁固7年の判決を受けた。

ベテラン活動家で元国会議員の梁國雄(りょう こくゆう、”ロングヘアー”・レオン・クオックホン )は禁固6年9ヶ月を言い渡された。過去に24回有罪判決を受けており、その中には無許可の集会に関わったこともあった。そのため判事は「梁が善良な人物であるとは明言できない」と述べた。

郭家麒(かく かき、クォック・カキ)、譚文豪(たん ぶんごう、ジェレミー・タム)、毛孟靜(もう もうせい、クローディア・モ)、趙家賢(ちょう かけん 、アンディ・チュイ)、范國威(はん こくい、ゲイリー・ファン)ら4人には、4年2ヶ月という最も軽い刑期を言い渡された。

香港の国家安全条例は、中国政府の安全保障維持法が残した「隙間」を埋めるために2024年3月に制定された。この法律の下では、国安法違反で服役中の受刑者は早期釈放の基準が高く設定されており、減刑される可能性は低い。

民主活動家の多くは2021年2月28日に警察に拘留、起訴されて以来ずっと監禁されている。つまり、すでに3年8ヶ月以上服役していることになる。

「憲法をめぐる混乱」

2020年7月の予備選挙がこの訴訟事件の核心であり、民主陣営は本選挙で議会の過半数を獲得するために予備選挙で候補者を確定しようとしていた。

判決によると、民主陣営はもし実際に過半数を獲得していれば、その権限を濫用して政府予算に見境なく反対し、行政長官を辞任に追いやる意図があったとした。

5月に下された319ページに及ぶ判決文によると、裁判官は戴の目的は「香港基本法と一国二制度の政策に基づいて確立された香港の既存の政治制度と体制を揺るがし破壊する、つまり転覆させること」だったとしている。一国二制度(訳註:もはや返還当時の高度な自治を約束した制度ではない)は中国本土政府が香港、マカオ、台湾を統治する政策であり、もし民主派の計画が通れば、香港は「憲法の危機」に陥ることになると裁定した。

中国政府は、民主派の抵抗運動や暴動が1年間続いたのち、2020年6月に国家安全維持法を香港のミニ憲法といわれる「香港特別行政区基本法」に直接導入した 。その結果、この法律では国家政権転覆、国家分裂、外国勢力との共謀や、交通機関やその他のインフラの混乱を含む広義のテロ行為が犯罪とされた。 この法律施行により警察は広範囲にわたる新たな権限を獲得し新たな法解釈のもとで数百人の逮捕者が出た一方、数十にのぼる市民社会団体が消滅した。香港当局は、貿易相手国国連NGOからの批判を否定し、この法律により香港に安定と平和が回復したと主張している。

今回出された判決を受けて、米国務省のマシュー・ミラー報道官は声明を発表し、香港当局者に新たなビザ制限を課す措置を講じると述べた。報道官は次のように述べた。

The 45 defendants sentenced today were aggressively prosecuted, and many now face life-altering imprisonment simply for their peaceful participation in political activities which are protected under the Basic Law of Hong Kong… In response, the Department of State is taking steps to impose new visa restrictions on multiple Hong Kong officials responsible for implementation of the [national security law].

本日判決を受けた45人の被告は厳しく訴追され、その多くは香港基本法で保障されている政治活動に平和的に参加したというだけで、人生を変えるほどの収監に直面している。(略)それに対して米国務省は、国家安全維持法の実施に責任を負う香港当局者に対し、新たなビザ制限を科す処置を発表する。

それに対して、香港政府は声明の中で、米国の制裁処置を「卑劣で政治的なやり口」と非難し、次のように述べた。

Any reasonable and fair person, upon reviewing the court’s judgment, would be convinced of the severity of the crime and the guilt of the convicted individuals, supported by irrefutable evidence. Despite these ironclad facts, Western countries, anti-China organisations and politicians, and foreign media continue to distort the truth and maliciously attack.

理性的で公正な人が裁判の判決を検討すれば、反論の余地のない証拠によって裏付けられた犯罪の重大さと、被告たちの有罪を確信するであろう。こうした厳然たる事実にもかかわらず、西側諸国、反中組織や反中政治家、外国メディアは真実を歪曲し、悪意ある攻撃を続けている

校正:Yasuhisa Miyata

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