モーリタニアの胸高まるティータイム

モーリタニアでは、お茶は国の文化遺産と言えるだろう。あらゆる時にお茶が出され、社交の場の大切な風習となっている。

モーリタニアでは1860年代にお茶が知られるようになった。当初中国から大量に輸入していたこの緑茶は、上流階級のものだった。しかし、すぐに他の社会層にもお茶への関心が広がった。単に飲み物としてというよりも、国のすべてのコミュニティで日々の生活に欠かせない大事な風習となっていった。これを言い表す3つの言葉がある。それは jmaa(ジャマア、集まり)、jmar(ジャマー、残り火)、jar(ジャー、時間)である。ウェブサイト Les Toiles Maures(訳注:現在リンク切れです)は、さらに詳しく解説している。

(…) Jmar, ce sont les braises du charbon de bois? dans le “canoun” sur lesquelles on pose la petite theiere d’etain pour? chauffer l’eau.

Le mot Jar indiquant la lenteur qui est employee dans ce contexte en? reference a la danse du meme nom, ou l’element marquant est precisement? l’extreme lenteur du mouvement. Lenteur de l’infusion des feuilles de the? additionnees a la menthe verte, liberant leur arome subtil(…)

Jmaa signifie le groupe, l’assemblee, car on prepare rarement le the? pour une seule personne. Cette boisson est le fil reliant les uns aux autres,? les presents, et la petite theiere genereuse distribue a chacun son breuvage apre comme la vie, doux comme l’amour, suave comme la mort(…)

(略)Jmarはカヌーン(訳注:火をおこす小さな炉)の中の炭の残り火のことで、その上に小さなブリキのティーポットが置かれ、水を沸かします。

Jarという言葉は、時間のゆるやかさを意味し、同名のダンスにちなんでいます。そのダンスは非常に遅い動きが特徴です。茶葉をグリーンミントと一緒にゆっくり煮出すと、ほのかな香りが立ちます。(略)

Jmaaはグループや集まりのことです。お茶はたった一人のために用意されることはほとんどありません。この飲み物は、そこにいるすべての人をつなぐ糸で、小さくてもたっぷり入るティーポットでひとりひとりに注がれ、人生のように苦く、愛のように甘く、死のようになめらかなのです。(略)

同僚や友人の集まり、洗礼式、ビジネスの交渉の場、結婚式など、どんな状況や場面でも出されるのは間違いなくお茶である。2010年にモーリタニアの前文化大臣エリ―・ウルド・アラフはドイツ国営の放送局ドイチェ・ヴェレの番組で語っている。

On ne concoit pas une causerie qui ne se fasse pas autour d'un the. Cela permet aux gens de se retrouver, de s'accepter pendant un certain temps, d'egal a egal. Celui qui fait le the doit connaitre la situation, faire en sorte que le the s'acheve en meme temps que la conversation s'epuise. Cela rythme la vie.

お茶も飲まずに会話なんて考えられません。お茶は人々を集め、お茶を飲んでいる間はお互い平等に交流できます。おもてなしする人は会話が終わる頃合いを考えて、お茶を淹(い)れる状況や時間に気を配らなくてはなりません。お茶は生活にリズムをもたらします。

お茶を淹れるときは、細心の注意を払い守るべき手順に従う。ヌアクショットのウェブサイトle360の記者シェイク・シディアは、モーリタニアのお茶を淹れる手順について記事で詳しく述べている。

Le the est d’abord rince a l’eau chaude. Il est ensuite mis dans une theiere avec une quantite d'eau soigneusement dosee et bouilli pendant un instant. Ensuite, le preparateur, appele ≪theificateur≫, verse et reverse la boisson dans plusieurs verres creant ainsi de la mousse dans chacun des verres. La boisson est ainsi rechauffee puis sucree et aromatise avec la menthe avant d’etre servie a chaud dans des petits verres qui gardent l’indispensable mousse sans laquelle certains preferent bouder le verre.

まず茶葉を熱湯でさっと洗います。それから慎重に測った量の水が入ったティーポットに入れ、しばらく煮出します。次にお茶を淹れる人(ティーメイカー)が、複数のグラスに注ぎ、すぐ移し替えて何度も繰り返しながら、それぞれに泡を立てます。ティーポットのお茶はそれから再加熱し、甘くしてミントで香りづけし、泡の残った小さなグラスに入れて熱い状態で出しますが、泡を飲まないのを好む人もいます。

この 動画では、モーリタニアの女性が、伝統的なお茶の重要性と価値、その意義や淹れ方を解説している。

1日に何度も飲まれるお茶

お茶を飲む回数は数え切れない。朝起きると、モーリタニア人は一杯のお茶を飲んで1日を始める。仕事の休憩中でも、友人や家族との会話のときでも、1日を通して何度となくお茶を飲むことが繰り返される。この話題について、シェイク・シディアは記事の中で次のように説明する。

Dans la quasi-totalite des demeures mauritaniennes, en partant des quartiers huppes de Tevragh-Zeina, la vitrine de Nouakchott, jusqu’aux coins les plus recules des zones periurbaines, cette boisson est servie 3 a 4 fois la journee. En fait, il s’agit la d’une frequence minimale, car parfois, le the coule de maniere continue du matin a l’heure du coucher.

ヌアクショットの宝石と言われる富裕層が住むテヴラ・ゼイナから都市周辺では最も遠い地域まで、ほとんどすべてのモーリタニアの家庭では、お茶は1日に3回から4回は出されます。実際にはこれはかなり控えめな回数で、時には朝から寝るまでお茶がずっと出されることもあります。

お茶が公共の場で提供されるときはいつも、各自3杯飲むのが習わし。この慣習には特別の意味があると、国の観光情報サイトChingi Toursは述べている。

Le premier verre est amer comme la vie, le deuxieme fort comme l'amour et le troisieme doux comme la mort.

1杯目は人生のように苦く、2杯目は愛のように強く、3杯目は死のように甘い。

経済危機や、食料品の値段高騰の時であっても、お茶の消費は変動がない。卸売り業者のウルド・モハメド・マハムードはドイツの放送局ドイチェ・ヴェレでこう説明している。

Toute la population mauritanienne boit du the 24h sur 24h, ca fait partie de sa vie, alors le the se vend tres facilement. Pour les Mauritaniens la crise peut avoir un impact sur l'achat de la nourriture mais pas sur l'achat du the.

モーリアニアの全住民が四六時中お茶を飲みます。それは彼らの生活の一部ですから、お茶はいつも売れます。モーリアニア人にとって、経済危機は食料品の購買に影響を与えるかもしれませんが、お茶の購買には影響しません。

どのくらいの頻度で、どこで消費されているかに関して、シェイク・シディアはこう付け加えている。

Le service du the est egalement assure en permanence dans toutes les administrations publiques et privees. Tant pis pour la productivite. Certains vendeurs ambulants proposent du the dans divers endroits tout au long de la journee. Meme au cours du voyage, dans les camions ou autocars, les Mauritaniens ne se passent pas du the. Les apprentis preparent le the avec des mini-rechaud a gaz et le servent aux voyageurs sans meme avoir besoin de s’arreter.

お茶はすべての役所や民間のオフィスでも絶えず出されていて、生産性の向上に寄与しています。路上で売る人は一日中さまざまなところでお茶を売っています。トラックやバスの移動中であっても、お茶なしには過ごせません。乗務員の誰かが小さなガスコンロを使いお茶を準備して、移動中でも旅行者にお茶を提供しています。

健康への影響

国内でお茶がもてはやされる一方で、お茶に含まれる成分、特に大量のカフェインと砂糖はモーリアニアの人々にとって健康問題の一因にもなっている。この状況について、シディ・ウルド・ザハー博士は2010年にドイチェ・ヴェレでこう語っている。

Pour les diabetiques, dans le cas d'anemies, d'hypertension arterielle, d'insuffisance cardio-vasculaire, souvent on deconseille le the. Maintenant, est-ce que c'est vraiment respecte? Pour un Mauritanien, c'est difficile.On aurait prefere une autre prescription!

糖尿病患者、貧血や高血圧症の人、心血管の患者には、多くの場合お茶は勧められません。しかしこの助言に実際従うでしょうか。それはモーリタニアの人にとって難しい問題です。彼らは別の処方を望むでしょう。

2021年、モーリタニアでは茶葉が農薬に汚染されているという警告があり、多くの分析が行われた。ウェブサイトMauriwebによると、2024年6月、モーリタニア人化学者でフランスのクレルモン=フェラン大学の化学教授モハマド・ババ・サイード博士は、茶葉には有毒性のある物質が含まれていると結論づけた。

多くの人々がお茶を飲むモーリタニアでは、このような複数の健康リスクはモーリタニアの人々に大きな影響を与えるかもしれない。

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