複数の発生源から海を越えてくる有害な空気に包まれる南フランス

A weather phenomenon where sand from the Sahara Desert in north Africa drifts over the Mediterranean Sea, turning the sky orange in Southern France, including the Alps, as featured in this photo.

北アフリカのサハラ砂漠から地中海を越えて飛来する砂塵によって、フランスアルプスを含む南フランスの空はオレンジ色にかすんでいる。YouTubeからのスクリーンショット。

2025年6月、南フランスは、ひどい大気汚染にあえいでいた。この汚染された空気は通常よりはるか遠くから来たものだ。空は地球をめぐる通り道となり、カナダの激しい森林火災の煙が大西洋を渡ってきて、北アフリカから舞い上がるサハラ砂漠の砂塵と混ざり合っていたからだ。6月中旬の最もひどい時期には、マルセイユの大気汚染状況(AQI)は、敏感な人には健康に良くないレベルとされる130から150に達した。平年夏のレベルはというと、通常40から60である。

5月はじめ以降、一連の激しい森林火災がマニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州を中心とするカナダ中央部で発生した。マニトバ州だけでも27の山火事が起こって6月に入っても燃え続け、中でもフリンフロンとシェリドン近隣の大規模な森林火災では、6月初旬だけで30万ヘクタール以上を焼失した。6月中旬、火は北へ燃え広がり、複数の火災が重なって、専門家の間で「ギガファイア」と呼ばれる大火災となる恐れが出てきた。ギガファイアは単独の火災で40万ヘクタール以上を焼き尽くす、まれな事象だ。

Screenshot of Canada's wildfire map as of June 12, 2025.

2025年6月12日付、カナダ省庁間森林火災センターの森林火災マップのスクリーンショット。カナダ北部の広い範囲が「収拾不能」の森林火災に直面している。状況報告書の画像より。

マルセイユの住民たちは、森林火災の煙、サハラ砂漠の砂塵、オゾンの混ざり合った異常な空気を吸い込んでいる。この北大西洋を跨いだ汚染現象の影響は6月を通して増大していった。初めは、カナダの森林火災による大気中の微小粒子レベルの上昇だった。それが、地元当局が「複合大気汚染現象」と呼ぶ、複数の汚染物質による最悪の状況へと変貌した。マルセイユでは、サハラの砂塵が短期間飛来することは定期的に起こっている。しかし今回の大気汚染は、大西洋を越えて運ばれてきた森林火災の煙の層が加わったことでさらに深刻な状況である。このような高い濃度で汚染が混ざり合うことは珍しいのだ。この地域の大気質観測を行うAtmoSudによると、気候パターンの変化と火災シーズンの長期化により、今回のような複数発生源による大気汚染は増えつつあり、その深刻さも増してきているという。

このフランス語動画では、地中海地方にサハラの砂嵐がもたらす影響について説明している。

公衆安全を統括するブーシュ=デュ=ローヌ県庁は、6月13日、最も高いレベル2の汚染警報を発令した。微小粒子とオゾンに北アフリカから飛来する砂漠の砂粒が加わったことで上昇した危険な濃度を、大気汚染モニターが記録したためだ。

A screenshot of Open Air's pollution report in southern France.

マルセイユが位置するブーシュ=デュ=ローヌ県の汚染状況地図のスクリーンショット。大気汚染データマップを作製するOpenAirによる。この地図から南フランスの広範囲が「悪い」レベルの空気にさらされていることがわかる。

2千年の歴史を持つ都市マルセイユにとって、サハラ砂漠の砂塵は珍しいものではない。年に数回、地中海を越えて温かい風が砂漠の細かい砂粒を北へ運んでくることがある。するとこの都市はオレンジ色のもやで覆われ、大気汚染レベルが一時的に急上昇する。特に暑さ、日光、空気の停滞が重なったとき起こりやすい。これはオゾンが生成されやすい条件でもある。今回の汚染状況が特別なのは、カナダの森林火災による煙の層が加わり、汚染源が積み重なっている点だ。

A screenshot of a video depicting the pollution levels in Marseille on June 12, 2025.

2025年6月12日のマルセイユの汚染レベルを示す動画のスクリーンショット。YouTubeから。

地域の大気質を観測するAtmoSudは、マルセイユの汚染レベルについて、公定安全衛生基準を4日連続で超えたと報告した。オゾンは高度の高い大気中では有益だが、地上付近では有害であり、呼吸状態を悪化させて健康上のリスクを増大させる。高濃度の微小粒子(PM2.5やPM10)やオゾンにさらされると、ぜんそくの悪化や呼吸器感染症の引き金となったり、循環器系の損傷を起こしたりする恐れがある。特に子どもや高齢者、基礎疾患のある人には危険であり、医療がひっ迫する懸念も高まる。

汚染にさらされる期間が長引き状況が深刻化したため、地方当局はマルセイユの低排出ゾーン(ZFE)内の走行を環境負荷の少ない車両のみに制限する交通規制を実施した。また視界不良のため幹線道路では時速20キロに制限速度を下げ、屋外での運動は控えるようにとの公的な勧告がなされた。

地球規模の気温上昇にともない、このように複数の事象が組み合わさることで、一地域の大気汚染が大陸間にまたがる脅威に変わってきている。マルセイユのような沿岸の都市は、すでに熱波や干ばつ、海面上昇に直面しているが、今やはるか遠方の災害であっても、その影響が人々が吸う空気中にまで直接届いているのだ。

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