アディン・カドリッチによるこの記事は、2025年9月12日に『バルカン・ディスカーズ』に初掲載された。紛争後研究センター(PCRC)とのコンテンツ共有同意に基づき、グローバルボイスが編集版を再掲載する。
編集者メモ: ゼニツァはボスニア・ヘルツェゴビナ中部にある人口10万人ほどの都市だ。この街は鉄鋼業と旧ユーゴスラビア有数の大規模な刑務所があることで知られている。この刑務所は、カルト的な人気のロックソング『Zenica Blues(ゼニツァ・ブルース)』の中でも歌われた。それでも、この街が文化的に注目されることはほとんどない。だからこそ、1992年から1995年の紛争中に始まり今日まで続くこの取り組みの意義は、いっそう際立っている。
30年以上、ゼニツァ・コミック・スクールはイラストを学ぶ場所にとどまらず、不屈、文化的抵抗、そして芸術への献身的な取り組みの象徴となってきた。当初、このコミックスクールは、1992年から95年にかけてのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の抑圧から逃避できる場として設立された。のちに表現と創造の場へと発展し、これまでに200名ほどの若きアーティストを輩出してきた。そのうち70名ほどが、国内およびバルカン地域のコミックシーンで注目される若手作家へと成長している。
卒業生の中には海外でも高く評価される作家がおり、ケナン・ハリロヴィッチ、ビリャナ・シャファラジク、ズドラヴコ・ツヴェトコヴィッチはその代表格だ。ゼニツァは国内コミック業界において長年、質の高さと創造力を象徴する学校として知られてきた。こうした作家たちへの国際的な評価は、この視覚表現の分野で同校が確固たる地位を保ち続けている証といえる。
学校の創設者でゼニツァ市立博物館館長も務めるアドナディン・ヤシャレヴィッチが、開校当初を振り返った。この学校の目的は、子どもたちが戦争の過酷な現実から離れ、創作に没頭できる場所を提供することだったと語る。戦時下において、コミックは空腹、恐怖、爆撃を忘れられる、まさに『不思議の国のアリス』のような世界だった。現在も毎年平均10名ほどが入学し、ダイナミックなコマ割りとセリフの吹き出しに、自分の思い、恐怖、希望などをどう表現するか学んでいる。
フィリプ・アンドロニク、ミロラド・ヴィカノヴィッチ、セナド・マヴリッチ、エニス・チシッチといった新進作家が、ボスニア・ヘルツェゴビナの現代のコミック作家の潮流を代表している。彼らはアメリカやヨーロッパの有名出版社と積極的に連携して作品を発表し、コミック出版の環境が十分に整っていないこの国にも、世界トップクラスと肩を並べるコミック作家がいることを証明している。
スクール内では、「Horostop」「ZE strip」「EKO strip」「SUV – Steps in Time」といった冊子が制作され、同校の長年の歴史とコミック文化への献身的な取り組みを伝えている。ヤシャレヴィッチは、生徒自身が興味のある題材を選んで制作していると説明した上で、コミックが表現と創造性を発揮するツールであり続けるために「この活動をやめなかった」と付け加えた。
また、コミック業界におけるテクノロジーの影響として、かつて大衆に広く普及していたコミックが、今では少数のコアなファン向けに高価な完全版や総集版として、より限定的な商品になりつつあると説明した。コミックが自由なメディアだという見方は変わらないが、テクノロジーの発展により、現代のコミック制作は転換期を迎えている。
スクール卒業生でマンガ家のズドラヴコ・ツヴェトコヴィッチは、タブレット端末によって多くの作家が作品の質を落とすことなく、より楽に速く描けるようになったと強調する。しかし、テキストや画像をAIで生成することは、倫理的にも芸術的にも深刻な問題をもたらすと警鐘も鳴らした。
さらに、画像やストーリーが数秒で生成できてしまうツールを誰もが使えるということは、アートがつまらないものになり、創造性と自動化の境界が曖昧になるとも指摘する。「手軽に使えるツールを持ち歩いているだけで誰もがアーティストになれるのなら、真のアーティストはいなくなるでしょうね」と、彼は言った。
ツヴェトコヴィッチによれば、今日のコミックを取り巻く状況は、紛争前とは大きく変わった。「コミックは誰もが読めるものではなくなりましたよ。特に子どもは手に入れにくい。値段が高すぎるし、売店などでもめったに見かけなくなりました」
台頭するボスニアのコミック界
現代の子どもは、コミックや書籍のような紙媒体よりもデジタル画面を好むため、出版社はコミックに慣れ親しんだ読者層をターゲットにしていると、ツヴェトコヴィッチは述べた。
この事実を前向きにとらえ、この地域でもコミックフェスティバルが増えており、読み描きの文化を推進している。「子ども向けのワークショップやコミックコンテストは、熱心なフェスには欠かせないプログラムです。ゼニツァのようなコミックスクールがない地域では、こうした取り組みが必要です」と、ツヴェトコヴィッチは強調した。

ズドラヴコ・ツヴェトコヴィッチのイラスト。写真:ゼニツァ・コミック・スクールのFacebookより。バルカン・ディスカーズより許可を得て使用。
制度的な支援も、大きな出版社も、コミックイベントもほとんどない、小規模な環境ながら、ボスニア・ヘルツェゴビナのコミック文化は根強く残っている。個人の熱意に支えられて、コミック界は廃れるどころか、粛々と成長し続けている。
ベリン・トゥズリッチとエニス・チシッチは、国内外において、長年ボスニア・ヘルツェゴビナを代表するコミック作家だ。トゥズリッチは実験的な試みと様々なメディアを駆使する手法で知られ、コミックに音楽とアニメーションを組み合わせる。米国のアニメ制作会社・マーベルで経験を積んだチシッチは、より現代的で技術的にも精密な表現を追求する。両者の活躍は、この国から世界で勝負できる人材を輩出していることを証明している。
イスメット・エルディッチも、ボスニア・ヘルツェゴビナのコミック界では特別な存在だ。12世紀から13世紀にかけてボスニアを統治した首長・クーリンと中世ボスニアを題材にした作品では、歴史的な物語をコミックならではのコマ割りや構図で表現し、この国では珍しい手法を取り入れた。教育的な価値がある彼の作品は授業でもよく使われており、コミック作品が一般社会で広く読まれている数少ない作家の一人である。
この国のコミック文化は、流通・宣伝・販売のいずれも厳しい状況にあるが、愛好家によって今なおニッチな文化として守られている。SNSやウェブコミック、さらにはセルビア、クロアチア、スロベニアの作家たちとの地域間協力が生き残るカギだ。ボスニア・ヘルツェゴビナのコミック業界は比較的小規模ではあるが、独自の魅力と大きな可能性を秘めており、好機の到来を待ち望んでいる。








