
水豆腐にタレをかける。ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
2025年12月28日、私は延辺(えんぺん)の和龍(わりゅう)市にある李さんの村を訪ねた。李さんは中国に住む朝鮮族女性で、10月に書いた記事では、彼女の生い立ちを語ってもらった。李さんに会うのは7ヶ月ぶりだが、みんなで私を歓迎し、家族の親交を深める水豆腐作りの行事に私を招き入れてくれた。延辺風の水豆腐をこちらではチョディビ(초디비)、韓国ではスンドゥブ(순두부)と呼ぶ。

大豆を挽く。ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
チョディビはどの季節に作っても良いし、決まった行事で作るものでもない。MJ・崔(李さんの娘)によると、親族が集まるときに季節に関わらず作るものだそうだ。家族が帰郷したときに、一族の女手で作るチョディビは、食卓の華であり、家族一同の団結と協力を象徴する料理だ。
水豆腐作りは1日では終わらない。まず大豆を一晩水につけて寝かせる。それから大豆を挽くと、柔らかでトロリとした状態になる。
大豆の良い香りを引き出す秘訣は二度挽きだ。実際に見ると違いがわかるが、最初に挽いた後ザラザラしていたのが、二度目に挽いた後は滑らかで、細やか、大豆の味わいのある生地ができる。柔らかく、こしやすくするために、お湯を加える。
次の濾過(ろか)する工程では「あんたも手伝って」と李さんから声がかかった。

濾過工程。ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
みんなで挽いた大豆を布袋に入れる。李さんが開口部を持って袋を支えている間、私は布袋を押して豆乳を搾り出す。次により細かい目の袋を使って再度絞り出す。とても力のいる仕事で、李家の女たちの多くが70代以上であることを考えると重労働だ。力のいる仕事を辛抱強く、要領良くこなせるのは、何十年も水豆腐を作り続けてきた経験があるからだ。
次に豆乳を温める。昔ながらの台所では、かまどの上には鍋がのせてある。かまどの余熱を使って床暖房を行うオンドルも備わっている。

韓国の昔ながらの台所。かまどの熱は煮炊きと共にオンドルという床暖房にも使用する。ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
「新しい台所もありますが、めったに使いません」と語る李さんの妹(YN・李)は誇らしげだ。「昔からある台所の方が使い勝手が良くて、節約にもなります」。(だが李さんの妹は、追加で付け合わせを作るために、新しい台所の方にサッと入っていくのを私は目撃した!)
CS(李さんの兄弟)がかまどに火を付けるために降りて来た。昔から延辺のチョディビは女が作るもので、男の出番は火おこしのような簡単な仕事しかない。
ゆっくり温める間、隣の鉄板を使って李さんと妹が付け合わせを作り始めた。中身はいろいろな山菜で作ったキムチのあえものだ。朝鮮文化に無案内な外国人の中には、キムチは香辛料のきいた白菜の漬け物だと勘違いしている者も多いが、キムチとは単に「漬け物」のことだ。キムチはいろいろな野菜で作り、ピリッとした辛い味とも限らない。
煮えたつ前に、家族みんなで豆乳を鍋から移す。李さんが、浮き上がってきた泡状のアクを素早く取り除き、ニガリを加えた。彼女がゆっくりかき回すと、不思議なことに、豆乳がかたまり始め雪にように白い塊が現れる。表面にできる羊皮紙のように薄い豆腐の膜を、ときどき取り除きながら更にかき回し続ける。

豆乳を煮詰める。ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
余分な水を切り、皿に移して自家製のタレをかける。タレは玉ねぎ、ニンニク、唐辛子など食欲を刺激する香りの野菜のぶつ切りに醤油を加えたものだ。
できたての水豆腐(チョディビ)はなめらかで、雲のように柔らかく、大豆の良い香りがして、店で買った豆腐では味わえないものだ。李さんの妹が言うように「一番おいし豆腐は、家で作る豆腐」に違いない。
李さんの娘(MJ・崔)の説明によると、延辺風水豆腐(チョディビ)にかけるタレの味が控えめなのは、水豆腐そのものが、大豆の美味しい香りを味わう料理だからだ。一方で中国式の水豆腐は、香辛料や他の具と一緒に揚げたり調理するものが多い。延辺風水豆腐は昔ながらの台所の鉄板で作るものだ。崔さんによると「現代風の調理具で作っても、同じ味は再現できない」のだそうだ。
豆腐を保存するときは、内側が布張の四角い箱に豆腐を移す。余分な水は別に用意した鍋に流し出し、豆腐を押して形成すると、しっかりした味のある四角い豆腐ができる。

ジョー・カーター撮影。掲載許可済。
「水豆腐」とは、チョディビを呼び表すのにふさわし名前だと思う。水のように柔らかな豆腐には、目立たないが、しっとりとした強さを秘めた味わいがある。それは水豆腐を作る女性の姿でもある。外は本格的な冬、暖かい暖炉と豊かな大豆の香りに包まれて気づいたことがある。特別なご馳走に豪華レストランで出会うことなどまずない。特別なご馳走とは、先祖の記憶と慣習を受け継いだ人々の手が丹念に、ゆっくり時間をかけて作りだすものだ。







