2021年はオリンピック、パラリンピック、 UEFAサッカー欧州選手権大会の開催年である一方、世界中の人々が何か月も外出がままならない中では、スポーツのテレビ観戦は外の世界や海外とつながる有効な手段となっている。その一方で、ロックダウン下で生活する多くの人々にとって、屋外での運動は精神面、肉体面ともに健康維持では不可欠な要素だ。ユーチューブヨガやズームを使ったフィットネス、手軽にできる運動プログラム、犬と一緒の長めのお散歩、そして室内に引きこもった生活がずっと続いて、もう抜け出せなくなるのではとの不安。これらの事柄から共通して浮上してくるのは体を動かすこと、運動すること、そしてスポーツの重要性だ。
2021年にはこれまでスポーツへの参加を阻んでいたいくつかの障害が取り払われた。特にLGBTQ+といわれる選手や社会的少数派に対する制約解消が目立つ。2020東京オリンピックでは、トランスジェンダーの選手が初めて公式に参加を認められ、また、LGBTQ+と公言する選手の数が過去最多となった。さらに米国ではナショナル・ホッケー・リーグやナショナル・フットボール・リーグに所属する選手が初めてゲイであることを告白した。
スポーツ選手は選手という自分たちがつかんだ立場を生かして、性差別や人種差別さらには独裁主義やメンタルヘルスといった問題について語り始めた。その結果これまでないがしろにされていた問題が堰を切ったように語られ、再び注目をあびるようになった。
例えば、オリンピックでフィリピンへ初めてメダルをもたらしたヒディリン・ディアスは、金メダル獲得の機会を使ってフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテの独裁的言論弾圧について語り、スポーツを続けるために彼女が資金調達活動を行った際にはドゥテルテ大統領から「国家の敵」というレッテルを張られたことについても語った。
組織化されたスポーツ大会やその他の体を動かすあらゆるスポーツの主力選手は、これまで長い間、白人男性であった。しかし、オリンピックで女子選手が自国に金メダルやその他さまざまに記録をもたらしているように、女子もスポーツの世界で正当な地位を確保しつつある。一方、今まで性別や価値観の違いから参加しなかった分野のスポーツへ、新しい参加者が進出することで、今までの固定観念は打ち破られようとしている。全ての人へスポーツの門戸を解放しようとする機運が進んできたが、それでもなおスポーツの世界では頻繁に差別がみられる。
女性が直面する多くのダブルスタンダードが、2021年に表面化した。トルコの聖職者が、トルコ女子バレーボールチームのユニホームの「露出度の高さ」を批判した。一方、ノルウェー女子ハンドボールチームの選手は、ビキニのショートパンツを避けて、やや長めのショートパンツを着用したことに対して罰金を科せられた。
同様に、UEFAサッカー欧州選手権大会決勝で英国が負けた時に、黒人英国選手がひどい人種差別的罵声を浴びせられて、スポーツにおける人種差別問題が各方面で論じられた。しかし人種差別問題は観客だけの問題ではない。国際オリンピック委員会は2020オリンピック大会で、人種差別的方針を堅持しているとしてしばしば非難された。同委員会は、黒人選手がアフロヘアを守るために専用の水泳帽を着用することを認めなかった。また、いかなる選手もオリンピック選手の機会を使って、抑圧や人種差別を公に批判することを禁じている。オリンピックは、このようにいつまでたっても頑なに変わろうとはしない。また、女子選手のテストステロン値に関する議論が沸騰していることも忘れてはならない。テストステロン値をめぐり、アフリカ女子選手に対して不当な差別が行われたと、多方面から指摘を受けている。
しかしこれらの問題は、人気のある多くのスポーツや国際規模のスポーツ大会に限られたことではない。スポーツの世界で実力を発揮するような女子選手は、通常スポンサーから資金援助を受けている。そして、勝利を目指して厳しいトレーニングをしている。スポーツ選手が過酷なトレーニングや公の立場に立たされることから受ける精神衛生面への影響については、スポーツ関係の話題のなかで取り上げられることはあまりない。精神衛生を優先させてトレーニングをする選手にペナルティーが科せられた事例さえ生じている。
アイデンティティーとスポーツは本質的に関連しあったものであり、また多くの選手にとって、スポーツとは平等を推し進め、抑圧をはね返す場でもあるとグローバル・ボイスは考えている。さらにスポーツとは、もともと政治的なものであり、自分の置かれた立場を社会変革の場として利用しようとする選手を手助けする手段だとも確信している。
この特集では、従来のスポーツの話題には登場しにくい、非主流派の選手の視点からスポーツを見ていきたい。そして彼らが成し遂げた業績、闘っていること、彼らが直面している不公平について考えたい。
記事 スポーツと多様性
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