インドネシア、南スラウェシ州、マリノの茶畑の夕暮れ ウィキコモンズライセンス CC BY-SA 4.0 DEEDA

国際お茶の日を記念して、グローバルボイスではお茶の歴史と、世界各地のお茶の楽しみ方を特集する。苦味の強いトルコのチャイから、素朴なアルゼンチンのマテ茶、とても甘いタイのミルクティーまで、各地で好まれるお茶は数限りない。飲み方はいろいろでも、お茶を楽しむ人たちの伝統、文化、歴史も含めてお茶の味わいの一部だ。

2019年に国連は5月21日を国際お茶の日と定め、(水を除けば)世界で1番人気のあるこの飲み物の、文化的、宗教的、経済的重要性を記念することとした。人類は五千年以上前からお茶を飲んできた痕跡が確認されている。発祥地は諸説あるが、おそらく中国、インド、ミャンマーの山岳地帯とされる。今日、中国は世界最大のお茶の生産国であり、輸出先は近隣の香港やマレーシアから、遠く離れたモロッコ、ガーナ、米国まで世界中におよぶ。 

急成長するお茶の貿易は、世界中でお茶のある生活が浸透しいることのあかしだ。
世界各所で、お茶は友情や親交を深めるために欠かせない飲み物だ。インドでは熱々のマサラティーの淹れ方についての、熱く微笑ましい論議は何十年を経ても止むことがない。作法や道具にこだわる日本の茶の湯を見ると、独自の伝統文化が茶道の世界の中に生き続けている。台湾発の世界中で大流行のタピオカティーを見ると分かるように、大きな政治力はない小さな島国の台湾でも、食文化は有力な外交手段となるのだ。モロッコの人の愛する甘いミント茶は、いまも友情と歓待の印だ。一方で南アフリカからジャマイカ、オーストラリアまで原住民社会では、ブッシュティーとも呼ばれる薬草のお茶を病気の治癒や健康維持に用いている。

心地よい午後の安らぎにお茶はピッタリだが、お茶の歴史は政治や階級闘争や植民地化にどっぷり浸かっている。欧米での喫茶の流行は、植民地化の進展に伴う反乱と抑圧とは不可分の関係だ。インドネシアの島々で茶業振興のために進んだ植民地化を通じて、オランダ東インド会社は植民地支配で絶大な力を獲得した。南インドの広大な丘陵でイギリスが生産してきた紅茶には強制労働に苦しんできた人々の血と汗が染み込んでいる 

今日でも、多くの茶園労働者が非常に不利な条件で、危険な労働を強いられている。バングラデシュの茶園労働者の間に生茶葉と米の料理が生まれた理由は、労働者側に大変不利な慣行と、不当に安い賃金が続いているからだ。気候変動の影響で、洪水や干魃、気候の急変が増えた結果、お茶栽培はより難しくなり、危険度も増している。茶業の継続が困難になり、茶園労働者を更なる困難に追い込む恐れもある。

本当のお茶好きは誰もが、ハーブティー、紅茶、セイロン茶、緑茶、アールグレイ、ウーロン茶などお茶選びに持論を持ち、自分が好むお茶の淹れ方に熱い情熱を抱いている。
今回の特集は世界各地のグローバルボイスのお茶好き記者の協力で実現した。記事では各国のお茶の歴史、所変われば品変わり、味わい方もいろいろ、心安らぐお茶の楽しみ方、そしてお茶の栽培や輸出をめぐる複雑で政治的な課題と幅広い話題を取り上げている。おきにいりのカップで、お気に入りのお茶を淹れて、世界中のグローバルボイスの記者が熱く語る、お茶の話題を味わってもらいたい。

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記事 コクと香りだけではない、世界のお茶の話