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シリア:空爆直後のアレッポ、がれきの中で取材を続ける市民ジャーナリスト

カテゴリー: 中東・北アフリカ, シリア, メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 戦争・紛争
Rami Jarrah, a Syrian political activist and citizen journalist. Credit: Courtesy Rami Jarrah

ラミ・ジャラー氏。シリアの政治活動家で市民ジャーナリスト。(画像:同氏のご厚意により掲載)

この記事は、当初、ジョイス・ハッケル氏 [1]により「 ザ・ワールド [2]」向けに制作され、2015年12月2日にPRI.orgのサイト上で公開された [3]ものです。コンテンツ共有の合意のもとにグローバルボイスに転載しています。

内戦で破壊されたシリアの都市アレッポから、ラミ・ジャラー氏が貴重な声を届けている。

(こちらのリンクをクリックすると、PRI.orgでこの話が聴けます)

ジャラー氏はシリアの市民ジャーナリストで、空爆による民間人の犠牲を記録している。そのため、爆撃直後の現場に急行することが多い。一人の父親がパニックを起こし、愛する家族を狂ったように探している場面に出くわしたのもそんな日だった。

「彼は『 私の息子はどこだ、子供たちは、息子のハサンはどこにいるんだ?』って言ってたんだ」とジャラー氏は言う。氏は、市民メディアプロジェクト「ANAプレス」の一員だ。

第三者であるジャラー氏には、男性の妻子が消えたのはロシアによる空爆のためだとわかっていた。

氏はこう付け加えた。「その男性はずっと叫んでいたんだ。『ISISはここにはいないぞ! なぜこんなことが起こるんだ?』 って。それから『この子も殺したいのか?』 と言いながら、もう一人の息子の体をつかんで揺すったかと思うと、引きずり回していたんだ」

ジャラー氏はイギリス人であり、シリア人でもある。 2011年にシリアの首都ダマスカスを脱出し、最初はエジプトに、その後トルコに移った。今はシリアのアレッポにいて、住民のエピソードを投稿している。

「この人たちは人間なんだ。わたしたちと同じように呼吸し、わたしたちと同じように愛する。あなたがしたいと思うようなことをしたいときだってあるんだよ」 とジャラー氏は言う。

こう発言した直後、氏は自分が公平な第三者ではないと認めている。

「率直に言うと、私が今ジャーナリストをやっているのは、政治活動のためなんだ。実はメディア活動家として、シリア政府と反体制派が誇張している情報とは正反対の現実を届けたいんだ」

アレッポに外国人記者はおらず、ジャラー氏自身も身の安全が保障されるとは考えていない。

氏は言う。「心配なのは、身の危険があるということだ。ISISには実は、表に出ていない組織があるんだ。私はもう、彼らによく思われていない。わたしたちを助けてくれていたジャーナリストが一人誘拐されて、2013年10月から行方がわからないんだ」

ジャラー氏は、アレッポの滞在で自分が変わりつつあるかもしれないと認めている。

氏は言う。「私には信仰心など全くない。でも、こんな状況に置かれた人々が、何か信じられるものを求める理由はわかるよ。ある日、誰かに聞かれたんだ。『アレッポにはシェルターがあるのか? そしてみんな使ってるのか?』 って。研究グループの人たちだった。私はこう答えた。『もし数千のシェルターがあったとして、そうだね。もしすべてのビルにシェルターがあっても、誰も行かないだろうね』 とね。だって内戦がこんなに長く続いているから、みんなもう慣れっこになってしまったのさ」氏はさらに言い添えた。「血が流れる場面に慣れてしまうんじゃないかと不安なんだ。それが心配だよ」

校正:Maki Ikawa [4]