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ISISによる、イラク最古のキリスト教修道院の破壊

カテゴリー: 中東・北アフリカ, イラク, ニュース速報, 宗教, 市民メディア, 戦争・紛争, 歴史, 芸術・文化

(原文掲載日は2016年1月20日です)

Saint Elijah's Monastery, Mosul, Iraq - the oldest Christian monastery in Iraq. Photograph by Doug, on Wikimedia Commons, used under GFDL [1]

イラク最古のキリスト教修道院である聖エリヤ修道院、モスク(イラク)、写真:Doug, Wikimedia Commons, GFDLの元使用

今日発表されたニュースによると、イラク最古のキリスト教修道院デイル・マル・エリヤ [2]はISISにより破壊された。聖エリヤ修道院として知られるこの修道院は595年に建設され、イラク過激派グループの拠点があるモスルのちょうど南、ニナワに位置する。

廃墟となっても、キリスト教巡礼者は石造りの修道院を訪れつづけた。かつてそこはチャペルやサンクチュアリ(聖壇)、近くには貯水池や天然鉱泉水の泉もあったところだ。このニュースを伝えたAP通信 [3]は、建造物がかつて建っていた丘の上の瓦礫を写した衛星写真を公開している。

カイロに拠点を置く中東向けのAP通信フォトエディター、マヤ・アレルゾ氏は、彼女が撮影した破壊される前のデイル・マル・エリヤの日付のない写真をツイッターで公開した。マヤ・アレルゾ氏はこうつぶやいた。

その場所にあったものが、もはやそこにはないという気持ちを表現することなんてできない。

ほかのたくさんのツイートでも怒りと不信の声が寄せられている。

イラクから、ファウジ・シンガリ氏のツイート。

ISISはイラク最古の修道院デイル・マル・エリヤを爆破した。それはイスラム教の起源よりも前に建てられたものだ。ISISは人々を殺し、建物を破壊し、この国を混乱させてきたのである。

イラク、シリアの帯状の土地を支配して以来、ISISは彼らが目にする「背教」とみなすものすべてに対し、凶暴な攻撃を繰り返している。彼らは古代遺跡を破壊していて、その中にはニネヴェ [10]ニムルド [11]ハトラ [12]がある。いずれもユネスコ世界遺産に指定されたり、推薦されたりしている遺跡である。ISISは聖者の崇敬を背教とみなし、自分たちが定義する狭義のイスラム教以外のすべてを、異端者としている。

ISISにより破壊された10の歴史的建造物とその重要性 [13]

(こちらのサイトからご覧ください)

イギリスからジェームス・ノイス氏は、国際社会にそのような重要な文化的歴史的遺跡を守るための戦略を再考すべきだと訴える。とりわけ、適切な国際協定でも遺跡の安全を守ることができない時は。

ノイス氏は一連のツイートで、その見解を説明する。

改めて、デイル・マル・エリヤを攻撃するような出来事は、世界遺産の破壊に対する国際的な反応がいかに無力かを証明している。

ユネスコの国際協定はデイル・マル・エリアのような場所を守れない。平和であればこその協定であり、加盟国に守られないことが多々見受けられる。

国家や支配者の軍隊が世界遺産を利用することは、厳密な法解釈によるとハーグ条約の侵害であり、つまり不遵守行為である。

そして今、文化遺産や世界的価値というまさにその既述事項の廃棄を通告する、ISのような支配集団の問題を抱えている。

だからこそ私は問いたい。法令を順守しない、また認識されていないという両方に直面して、ハーグ条約は本当にデイル・マル・エリアのような建造物を守れるのだろうか?

今日の状況から、国際社会が大切な文化遺産をどう守っていくかを再考することが明らかに必要だ。

昨年2月、ISISはモスル図書館を焼き払い [20]、何十万もの書物、写本が失われた。その中には800年前の古書もあった。

イラク第2の都市モスルは、2014年6月、武装勢力に掌握され [21]、シリアで暴動を繰り返す悪名高いアルカイダ一派の支配下となってしまった。

校正:Moegi Tanaka [22]