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ジュークボックスで聴く音楽は、とってもクール!! 修理の達人はエジプト出身

カテゴリー: 中東・北アフリカ, 北アメリカ, アメリカ, エジプト, 市民メディア, 移住と移民, 音楽
Magdi Hanna, from Alexandria, Egypt, runs one of the few workshops in the United States dedicated to saving jukeboxes. Credit: Saul Gonzalez. Used with permission.

マグディ・ハンナさんは、エジプトのアレクサンドリア出身である。ジュークボックスを後世に残すために、アメリカで数少ない修理工場の一つを経営している。(写真提供:サウル・ゴンザレスより、引用の許可取得済)

この記事は、当初、 サウル・ゴンザレス [1] が2016年5月19日に PRI.org [2] のサイト上で公開したものである。コンテンツを共有する合意のもと、ここに再掲載する。

技術の進歩により、忘れ去られた製品があるのはすぐに想像がつく。最後に小型電卓機や公衆電話を使用したのは、いつ頃だったか覚えているだろうか?

そして、ジュークボックスもその一つである。

もしロサンゼルスに向かうことがあるならば、ピコブールバードの2000番地にある、マグディ・ハンナさんのお店を探してみるといい。彼は、アメリカでジュークボックスの修理に情熱を注ぐ、数少ない職人の一人である。彼の使命とは? 未来の人々に、これらの装置を残していくことである。

Listen to this story on PRI.org » [3]

PRI.org [2]に掲載された音声を聞いてみよう)

ハンナさんは、エジプトの港町アレクサンドリアの出身である。アメリカに移住するまで、ジュークボックスなど一度も見たことがなかった。そんな彼も今となっては、レトロな装置を「アメリカの歴史の一部」と呼び、1980年から修理を続けている。

彼は、ジュークボックスを初めて見た時から、すぐにその虜になり修理をする仕事に就くことを決めた。ジュークボックスは、20世紀にナイトクラブやバー、食堂などでよく見られた。また、マリリン・モンローやコルベット車、そしてエルビスなどと人気の上位に肩を並べるほど、アメリカンライフの象徴であった。(ハンナさんの工場には、エルビスの曲専用のジュークボックスがある)しかし技術の進歩によって、トランジスタラジオからCDへ、現在はもちろん、ネットでの音楽配信へと変化した。そのため、限られた曲しか流すことができないジュークボックスは、太刀打ちできなかった。

Jukeboxes at Magdi Hanna’s workshop in Los Angeles. “We didn’t have jukeboxes in Egypt,” he says. Credit: Saul Gonzalez. Used with permission.

ロサンゼルスにあるハンナさんの修理工場のジュークボックス。「かつて住んでいたエジプトには、ジュークボックスなどなかった。」とのことだ。(写真提供:サウル・ゴンザレスより、引用の許可取得済)

かつての、ワーリッツァーやゼーブルのようなジュークボックス製造会社は、修理職人と共に消えていった。

「修理職人は、何人かはいる。だがジュークボックスのビジネスに、新たに人が集まるかどうかは、わからない」とのこと。

当然のことながら、現在のスタイルの音楽鑑賞などへの思いは少しもないそうだ。「エルビス・プレスリーの曲を45回転のレコードで聴くと、ラジオやCD、そしてコンピューターとは全く違う」と彼は言う。45回転シングルレコードの方が、より「感情」が伝わってくるらしい。

私がハンナさんを訪ねた日は、何週間もかけて、ワーリッツァー社製モデル850(1941年製)の修理をちょうど終えた日だった。そのモデルは、木製の立派な外装でガラス部分には孔雀の絵が描かれている。彼はその中を開けて見せてくれた。「このモーターを見てくれ。車のオルタネーターみたいに、大きいだろ」と言う。内部には、24枚のレコードが入っている。料金は、1曲聴くのに5セント貨だが、10セント貨で2曲、25セント貨で4曲聴くことができる。このジュークボックスも、レコードの片面のみ聴けるようになっている。 (1950年代製造以降の後継機種では、レコードを裏返す技術が備わり、両面を聴くことができるようになった。)

Tools Magdi Hanna uses to repair jukeboxes at his Los Angeles workshop. Credit: Saul Gonzalez. Used with permission.

ハンナさんが、ロサンゼルスの工場で、ジュークボックスの修理時に使用している道具の数々。(写真提供:サウル・ゴンザレスより、引用の許可取得済)

ハンナさんの顧客は、ジュークボックス収集家が多く、ガレージセールや遺品整理などで壊れたのを見つけて、修理に持ってくる。どれも、何十年も眠っていたレコード入りの「音楽のタイムカプセル」みたいだ、と彼は言う。「ガレージに、20年もジュークボックスを保管してた人もいてね。その中に、50年代や60年代のオリジナル盤が入ってたりするんだ」

このような装置が復活した時は、どんな感じだったかと聞いたら、「そりゃ、踊りだしたくなるよ」と答えた。

インタビューの終わりに「修理されたジュークボックスで、1曲選ばせてもらっていいか?」とお願いしたら、彼は「もちろん」と言ってくれた。80年代以来、ジュークボックスを使うことがなかったので、少しワクワクした。(ちなみに、ザ・シックス・ティーンの「My Special Guy」 [4]を選曲した)

60年前の装置で曲を聴いた後は、iTunesやSpotify(スポティファイ) [5]が、カッコイイには全く程遠く思えた。

A jukebox in Magdi Hanna’s workshop in Los Angeles. "I don’t know of new people coming into the jukebox business," he says. Credit: Saul Gonzalez. Used with permission.

ロサンゼルスにあるハンナさんの工場のジュークボックス。「ジュークボックス業界に、新たな人材が参入するかどうかは分からない」とのことだ。

校正:Etsumi Itai [6], Yuko Aoyagi [7]