あれもこれも放送禁止! 中国のテレビ制作ガイドライン

人気のオンラインドラマ「Addicted(中毒)」は、2週間前に配信が停止された。中国共産党のガイドラインは、テレビドラマの中で同性愛は見せるべきでないと規定している。YouTubeからのスクリーンショット。

人気のドラマ「Addicted(中毒)」「Girl Love(ガール・ラブ)」が突然、複数の動画ストリーミングサイトで配信停止された。それに続いて先週(訳注:2016年3月第1週)、テレビ放送にふさわしくない事項を列挙したガイドラインが中国のソーシャルメディアに出回った。

この文書は「テレビコンテンツ制作ガイドライン」と呼ばれ、中国共産党と強いつながりを持つ2団体の中国テレビドラマ制作産業協会と中国ラジオ映画テレビ同盟から、業界向けに昨年12月、配布されたものだ。このガイドラインの背後には、「『文学と芸術についての国家フォーラム』で習近平国家主席が行った演説の趣旨を実現する」という狙いがある。これは、2014年後半に開催されたこのフォーラムにおいて、習主席が芸術家に対し、人民に奉仕し共産的思考に同化するよう求めた発言のことを指している。

しかし、もしプロデューサーたちがこのガイドラインを忠実に実行しようとしたら、中国のテレビはひどく退屈なものになるだろう。この文書では、「異常な」性的行動、犯罪シーン、警察の捜査、暴力、常軌を逸した行動、歴史的事実や古典文学とは異なるストーリーなどが禁止されているのだ。

今日に至るまで、中国の娯楽産業は、国家新聞出版広電総局(SARFT)(訳注:中国の全メディアを監督する政府機関)により2010年3月に成立し一般公開された「テレビドラマのコンテンツ管理規定」に従ってきた。この規定は、コンテンツについて11の原則を掲げてはいるものの、テレビで放送すべきでない内容を具体的に挙げてはおらず、創造性の余地を残していた。

しかし中国では、党と国家の境界線は曖昧だ。先日会議の場で、SARFTの李京盛テレビ局長は、共産党とつながりが密なこれら2団体が発行した最新のガイドラインにテレビ業界は従うべきだと強い調子で訴えた。また、SARFTはオンライン配信のドラマに対しても、テレビ放送のドラマと同様の基準を遵守させると強調した。李局長のこれらの言葉からは、人気のオンラインドラマ2本が配信停止となった事情が伝わってくる。

この新しいガイドラインは、ゲイやレズビアンといった人間関係の描写禁止に留まらず、魅力的なテレビ番組となりそうなコンテンツを軒並み禁止している。そこにあるのはただ、プロパガンダ発揚の余地だけのようだ。

中国のネチズンの間でまず起こったリアクションは、このガイダンスに準拠したらテレビで一体何が放送できるのか、というものだった。以下は、テレビで放送禁止となるべきコンテンツについて書かれた部分を翻訳したものだ(原文中国語版のスクリーンショットはネット上で共有された)。

1. Content that contradicts the Chinese path and social system, that is harmful to the country's image, unity and social stability, that:

2. Content that is harmful to national unity:

3. Content that goes against state religious policy:

4. Content that advocates feudal beliefs that go against the scientific spirit:

5. Content that exhibits excessive terror, violence or evil behavior that could induce criminal acts:

6. Content that exhibits obscenity, vulgarity or banality:

7. Content that insults or defames others:

8. Content that distorts and debases national cultural traditions:

9. Content that is harmful to social morale and has a negative impact on underage viewers:

10. Content that is forbidden by laws and regulations:

1. 中国のたどる道すじと社会システムを否定し、国家のイメージや一体感、社会的安定を損なうコンテンツ

2. 国家の一体感を損なうコンテンツ

3. 宗教についての国策に反するコンテンツ

4. 科学の精神に逆行する封建的迷信を擁護するコンテンツ

5. 犯罪行為を助長しかねない、過度の恐怖や暴力、悪事を見せるコンテンツ

6. わいせつ、低俗、もしくは陳腐なコンテンツ

7. 他者を侮辱もしくは中傷するコンテンツ

8. 国家の文化的伝統を歪曲したり貶めたりするコンテンツ

9. 社会の士気を下げ、かつ未成年の視聴者にマイナスな影響を与えるコンテンツ

10. 法令で禁止されているコンテンツ

ある程度予想できたことだが、このガイドラインに対し、中国ネチズンの間からは不満の声が噴出した。ネチズンたちによると、これは創造性を禁止し、娯楽産業を衰退に追いやるものだという。この怒りを静めるため、党機関紙は、これらガイドラインの目的は業界による「自己規制」だと説明した

しかしながら、オンラインの人気ドラマ2本が配信停止されたことからもわかるように、当局はこの共産党のガイドラインに勢いを得て、共産党のイデオロギーに異を唱えていると判断したコンテンツについて任意的かつ選択的に検閲、禁止している。

校正:Kaori Kuwayama
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