アフガニスタンに対する一般的なイメージは、銃弾と宗教的な暴力の間で引き裂かれた国であり、女性蔑視の地であり、老いも若きも将来に何の希望も持てない前近代的な地域、といったものだ。私の持つイメージも、昨年アフガニスタンの首都カブールに降り立つまでは、似たようなものだった。
カブールで見た景色の多くは、私が考えていたアフガニスタンのイメージと一致したが、一方でカメラにはめったに写らない、私が抱いていたアフガニスタンのイメージとは違う様々な瞬間も目にした。古いものと新しいもの、伝統とモダンが、絡み合っている。ゆっくりと、しかし着実に、アフガニスタンの人々は、困難に打ち勝とうとしているようにみえる。
カブールは、希望と憧れ、人情とおもてなしの気持ちに溢れた場所だ。それは、アフガニスタンの人たちが私の青表紙のパスポートを目にした時にも、余すところなく発揮された。「おや、君はインド人なのかい? 私はインド映画の大ファンなんだよ!」
インドの映画スターのポスターが、アフガニスタンの音楽ショップの店先を飾っている。デリーにある有名なショッピング・モール「Select City Walk」にちなんで名付けられたモールもある。インドの大都市にある大学を卒業した人はもちろん、インドの小さな町の大学出身者まで、混みあったショッピングエリアの周辺では見つけることができるだろう。
アフガニスタンは画一主義とは無縁だ。ブルカをまとった女性たちの脇を歩くのは、登校中の女の子たちだ。インド映画やハリウッド映画の映像や音楽が流れる中、若い女性たちが大学へと向かう。娯楽が全面的に禁止されていたタリバン政権時代とは大違いだ。タリバンがバーミヤンの大仏を破壊したこの国で、カブールの店先のショーウィンドウにあるマネキンは豪華なウエディングドレスをまとっている。
それから、互いに競い合う携帯電話会社の広告があり、FMラジオ局があり、24時間やっているTVチャンネルがあり、女性の権利を語るトークショーも数多くある。水煙草バーもあり、そこでは水煙草とコーヒーが楽しめる。女性はいないしお酒もないが、若い男性が大勢、大音量の音楽に合わせて踊っている。
車がクラクションを鳴らして通り過ぎて行き、歩行者を砂埃まみれにしてしまう。カブールの汚染が進んでいるとアフガニスタンの人々は不満を述べている。通りには保安要員が配置され、通りを歩く人の頭上ではヘリコプターが空中待機している。
街に活気が溢れる一方で、駐留米軍が完全に撤退したらどうなるんだろう、という不安の声も聞かれる。しかしアフガニスタンの若者たちは、何十年にもわたり分断され脆弱だったこの国が今、強さを取り戻しつつあると信じている。
彼らはこんなスローガンを叫ぶ。「アフガニスタンはひとつだ。タジク人も、ハザラ人も、パシュトゥーン人もない」