アーティストたちにとっての2015年、世界は変革のためのキャンバスだった

Photo by Tobias Abel. CC BY-ND 2.0

トバイアス・アベルによる写真 CC BY-ND 2.0

芸術は、国や文化を越えて共感できる力強い言葉である。それゆえ、アーティストたちはそれぞれの絵筆を取り、2015年を通して行われた共闘行為や抗議行動、そして思想にカメラを向けた。

2015年、グローバル・ボイスの執筆者たちは、アーティストたちの創造性豊かで感動的な物語を通じて、読者を世界中へと案内してくれた。新しい年が迫る今、その中から16の物語を振り返ってみよう。

1.ペルー

ペルー人の10代の若者が、有名な歌を土着のケチュア語に翻訳して歌うというパフォーマンスで インターネット上の関心 を集めた。

2.エジプト

エジプト人は、「イスラム国」の「国歌」をダンスミュージックとして 面白おかしくリミックスし、 残虐な戦闘集団を嘲笑った。

3.クロアチア

クロアチアでは、活動家たちが歴史上重要な役割を果たした女性たちに因んで、150もの道路標識をA4もしくはA5の用紙を使って「改名」した。 クロアチア初の女性大統領が誕生 したとはいえ、女性の権利においては、やるべきことが沢山残っているのだという事を暗示するためである。

クロアチアの詩人ヴェスナ・パルーンに因んで改名された道路標識
提供:マリネラ・マテジッチ

4.香港

香港の伝統的な旧正月用の封筒が、社会的、政治的抗議活動のためのキャンバスとなった。角のねじれた虹色の山羊が特徴の封筒セット は、LGBTの受け入れを支持する意味合いを含み、一方、黄色い傘が描かれた封筒は、いわゆる「雨傘革命」に対する敬意を表すものである。雨傘革命では何か月にもわたって抗議行動が続き、中国政府と香港政府に対して、香港市民による香港行政長官候補の指名が可能になるよう要求した。

Um dot dot dotが配布した黄色い傘が描かれた赤い封筒セット

5.ブラジル

ブラジルの女性たちが布絵で表現 しているのは、長年にわたり資源確保のために地域社会を利用してきたエネルギー関連企業の暴挙に対する不満である。

ブラジル人の漫画家ヴィットルによる「アルピジェラ・プロジェクト」のための作品。画像:Arpilleras: Bordando a resistência(訳注:「抵抗の刺繍アルピジェラ」の意)のFacebookページより

6.イエメン

イエメン騒乱の結果、人道主義の存続は危機的な状況となり、同郷の人々の間に強い憎しみがわき上がった。イエメンのアーティストたちは、その才能を生かして作った作品に「この困難な時こそ一致団結しよう」という重要なメッセージを込めた。

サウジアラビアの空爆によって粉々になった家々の窓ガラスを使って、サナアの壁に描かれたイエメンの国旗

7.ガザ

2014年の夏、イスラエルの攻撃によって2000人以上ものパレスチナ人が殺害されてからも、ガザの人々は人生の断片を見つけ出そうとしていた。イギリス人のアーティスト、ケリー・ベルは人生を奪われた人々の肖像画を描こうと決意した。

ケリー・ベルによるガザの犠牲者たちの肖像画 

8.メキシコ

メキシコ、イダルゴ州パチューカで、200軒もの家々を1枚のキャンバスに見立て描かれた巨大な壁画 によって、仕事が生まれ、若者の暴力が減少し、困窮する町の住民同士の絆が徐々に深まった。

ラス・パルミタスの風景と仕上げ段階に入った「巨大壁画」。ヘルメン・クルーのFacebookより 写真転載許可済

9.ラテンアメリカとイタリア

ラテンアメリカとヨーロッパは海で隔てられているとはいえ、難民たちはヨーロッパへと流れ込んでいく。ラテンアメリカのアーティストたちの作品を集めてイタリアで開かれたある展覧会 が、そんな難民や移民に対する思いやりを深める機会となった。

移民を思う、旅する芸術の展示風景。写真提供:Progetto7LUNE 写真掲載許可済

10.マダガスカル

映画「Ady Gasy」(マダガスカルの流儀)は貧困や食糧不足、そして洪水に立ち向かい、古タイヤはサンダルへ、空き缶はおもちゃへと再利用してしまうマダガスカルの人々の創意工夫を詳細に記録した映画である。

11. シンガポール

写真家のエドウィン・クーは、シンガポールで満員電車に乗る人々の日々のドラマ をカメラに収めた。

…the photos of Transit are not acts of self-gratification, not weapons of malice, and definitely not tools of instantaneous incrimination. They are a collective portrait of the society that we live in today.

これらの写真は、自己満足的な行為ではない、嫌がらせの手段でもない、そしてもちろん一瞬の罪を負わせるための道具でもない。これらの写真は、今日私たちが生きている社会における人々の姿です。

写真:エドウィン・クー 掲載許可済

12.バングラデシュ

バングラデシュでは、宗教的過激派が無神論者とみなした人々に対する憎悪が一層激しさを増した。2015年だけで、宗教を持たない4人のブロガーと出版社の経営者が暗殺された。
表現の自由は国家憲法で保障されており、バングラデシュは非宗教国家なのだが、政府がこのような攻撃を防止したり、殺人犯を罰することはほとんどない。

このような困難な情勢に直面して、バングラデシュのベンガル人たちは「心の闇に沢山の明かりを灯せ(Onek Alo Jaalte Hobe Moner Ondhokare )」というテーマを掲げ、自民族中心主義や狂信的な宗教観と戦うべく、色鮮やかな新年の祝賀 を捧げた。

新年を祝う人々。ベンガルの新年を迎えるためにダッカ大学美術部の学生たちが開催する行進Mangal Shobhajatraの様子。 画像:ソーラブ・ラスカー 著作権:Demotix 2015年4月14日

13.ウルグアイ

ウルグアイのある写真家は、その国ではむしろ忘れたいと思う事、すなわち独裁政治の間に姿を消した人々に作品の焦点 を絞っている。彼は語る、「記憶とは、ある人たちにとってはかなり重要な場合があるものだが、一方別の誰かによって打ち消されなくてはならないものでもある」

モンテビデオにある「面影の不在」(原題:Miradas Ausentes)からの1枚
写真:フアン・ウルソラ 掲載許可済

14. フィリピン

フィリピン人の芸術家フェデリコ・ボイド・スラパス・ドミンゲスは破壊的な採鉱、開発に伴う侵略、そして軍事化に対するフィリピンの先住民たちの苦悩を描いた。

この絵は軍事化による悪影響を暴露することとは別に、政府の法律がいかにフィリピンの民族特有の共同体を不当に差別するものであるかという事も表している。絵:フェデリコ・ボイド・スラパス・ドミンゲス 再掲載許可済

15.マレーシア

マレーシアでズナールという愛称で人々に知られている政治漫画家ズルキフリー・アンワル・ウルハケは、何度も扇動の容疑をかけられた。迫りくる告発の脅しにもかかわらず、政府の汚職、人権侵害、権力の悪用を批判すべく自らの筆を取り続けると約束 した。

Talent is not a gift, but a responsibility. So I will use it as a tool to convey people’s voice through art and to push for total reform for a better Malaysia. I will not keep quiet. How can I be neutral, even my pen has a stand!

才能は単なる贈り物ではなく、責務である。だから私は芸術を通して人々の声を伝え、マレーシアをより良くするための総合的な改革を後押しする道具として、この才能を使おうと思う。私はこのまま黙っているつもりはない。どっちつかずでなんていられるものか、ペンでさえ置き場所があるのだ。

Zunar KartunisのFacebookから

16. ハンガリー

ハンガリー人たちはペンキを塗ったり、フォトショップ(訳注:画像編集ソフト)で画像を加工して、政府の排外的な移民制限広告の 滑稽なパロディー を製作した。

「コウモリ地帯に来るのなら俺たちの法律を守らなけりゃな!」ハンター・S・トンプソンと彼の小説「ラスベガスをやっつけろ」へのオマージュ。

校正:Naoko Mori
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