ラテンアメリカのクリスマス料理を知っていますか?

 

ベネズエラのアジャカ 写真提供:トゥー・フイン(無料ライセンス) hhttps://www.pexels.com/photo/hallaca-on-a-plate-19141531/

クリスマスシーズンのラテンアメリカの料理は多様性に富んでおり、各家庭ごとに料理が違うように地域によっても違う。すなわち、それぞれの家庭、町、都市、地域、国によって独自の伝統や儀式、レシピがある。

クリスマスシーズンになると、ラテンアメリカの食卓には、ブニュエロ、リキュール、ロースト肉、パン、ソース、タマレスといったごちそうで埋め尽くされる。ラテンアメリカの大いなる美食文化を謳歌(おうか)するため、私たちは各国の寄稿者を集め、それぞれの国の伝統的なクリスマス料理について、起源、歴史、そして料理がそれぞれの国の文化にとってどのような意味を持つのかについて語り合った。

アジャカ(Hallaca ベネズエラ)

アジャカ 写真提供:ウーゴ・ロンドーニョ(無料ライセンス) https://www.flickr.com/photos/sinlentes/46240837432

アジャカ(トウモロコシのちまき)はベネズエラに受け継がれるクリスマス料理の中心的存在だ。クリスマス料理にはアジャカのほか、鶏肉とジャガイモのサラダ、パーニル(豚肉のロースト)、ハムブレッドが並び、通常はそれにクリーム・パンチ(ラム酒風味のミルクドリンク)が添えられる。アジャカの起源には多くの神話や伝説があり、この料理がどのようにして誕生したのか、まだはっきりとわかっていない。アジャカはトウモロコシ粉を練った生地に、スイートチリ、鶏肉または鶏肉のスープで味付けし、オノト(ベニノキ科の常緑樹)で黄色に染め、中に牛肉や豚肉や鶏肉のシチューか鶏肉を詰めたものである。ベネズエラでは、東部、アンデス、中部、西部といった地域ごとにアジャカのレシピが異なり、具材も変わる。

アジャカはベネズエラ料理としてよく知られ、愛されているだけでなく、ベネズエラのクリスマス文化の中心でもある。通常は家族が集まってアジャカを作るのだが、3日間要することもある。そして友人や隣人、同僚、知人同士でアジャカを分け合う。

レチョナ(Lechona コロンビア)

レチョナ、カハ・チナ(中南米に普及している中国の箱と呼ばれるグリル)で焼かれた豚の丸焼き @sumitoestevezによるリポスト。写真提供:ポチョベ(使用許可済みライセンス) https://www.flickr.com/photos/12980547@N07/37251786036

12月、クリスマスのお祝いが続くコロンビアでは、ナティージャ(カスタード菓子)、パネラ(サトウキビ)入りドゥルセ・デ・レチェ(キャラメル菓子)、ブニュエロ(小麦粉とチーズの揚げ団子)といった、この季節に欠かせないお菓子を味わう。また一方で、クリスマスや年末年始の休暇にはしっかりとした夕食を楽しむ。もっとも地域によってさまざまではあるが。

 

レチョナ(豚の丸焼き)は100人もの大人数に提供することができるため、ますます人気が高まっている。カスティーリャ風バーベキューを起源に持ち、コロンビア中西部のアンデス地方、トリマ県やウイラ県で発展し、現代では米と豆を丸ごとの豚に詰めて、煉瓦造りのオーブンで12時間かけて調理される国民食となった。

ヴィテル・トネ(Vitel Toné アルゼンチン)

ヴィテル・トネ 写真提供:エミリー https://www.flickr.com/photos/ebarney/32703539898

イタリア生まれの料理で、その名前は仔牛とマグロを意味するヴィテル・トネ。長年にわたってアルゼンチンのクリスマス料理の象徴となっている。この料理は、第二次世界大戦後に移住したイタリア人によってアルゼンチンに伝わった。イタリアでは夏に食べられる料理で、そのシンプルなレシピと新鮮さから、気温の高い12月のこの地域には理想的な料理として広く受け入れられたと考えられている。

多くのアルゼンチンの人々は、ヴィテル・トネを子供の頃を思い出させる味と表現する。

コレモノ(Colemono チリ)

チリのクリスマスディナーでは、ダッチェス・ポテト、イースターブレッド、パンチ、クリスマスクッキーのほか、スイカ、メロン、ブドウ、パパイヤ、イチゴ、チェリーなどのフルーツを添えて、ローストチキンや七面鳥を食べるのが伝統的だ。
一方、クリスマスの飲み物として好まれるのは、ブランデーやミルク、コーヒー、砂糖、スパイスで作るカクテル、コレモノ(コーラ・デ・モノ)である。

1943年に出版された本「チリ料理史メモ(仮題)」(”Apuntes para la historia de la cocina chilena”)の中で、歴史家のエウへニオ・ペレイラ・サレスは、12月とクリスマスのお祝いに欠かせないアルコール飲料の生みの親は、フアナ・フローレスだと述べている。この地域の他の国々でも、クリスマス・ディナーに同じような飲みものが用意される。

豆知識 : コーラ・デ・モノは、1986年のサンティアゴのクリスマスを舞台にした有名なチリの独立系映画のタイトルでもある。

タマレス(Tamales エクアドル)

エクアドルのクリスマス料理は、クリスマスを盛り上げるさまざまな要素があることで知られている。食卓には、肉や色とりどりの米、さまざまなソース、そして多種多様なお菓子など事欠かない。

なかでもタマレス(トウモロコシのちまき)は、クリスマス気分を呼び起こす料理として有名だ。何百ものバリエーションのレシピがあるが、一般的にはトウモロコシの生地にラードを練り込み、豚肉や鶏肉を詰めてアチラ(カンナ科の多年草)の葉で包んで調理する。エクアドルのシエラ(高山)地域のキト、アンバト、ロハといった町では、クリスマスの集まりには必ずタマレスが登場する。

豆知識 : タマレスはエクアドルの美食遺産である。その複雑な歴史を描いたドキュメンタリーはこちら。

パネス・コン・ポジョ(Panes con pollo エルサルバドル)

ププサ(トウモロコシのパンケーキ)はエルサルバドルの国民食だが、クリスマス期間にはエルサルバドル風パネス・コン・ポジョに主役を譲る。パネス・コン・ポジョ(チキン入りパン)はエルサルバドル人がクリスマス休暇に調理する典型的なごちそうだ。クリスマスイブに家族で楽しむ夕食の伝統的な一皿で、家庭によって多種多様だが、どこの家庭でもパネス・コン・ポジョが供される。また、いつでも食べられるように調理され、訪問客がいつ来ても振る舞われる。

パネス・コン・ポジョは作り方は簡単で、各家庭で独自のレシピがある。これは口にするとホッとする料理であり、来客用としてもぴったりである。クリスマスにエルサルバドルの家庭を訪れると、誰もがよく耳にするフレーズがある。「パネス・コン・ポジョ食べる?」

 

校正:Motoko Saito

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