ガンチリーオック氏は、戦略ゲーム「ワイドランズ」のチーフテン(プロジェクトマネジャー)で、フリーソフトウェアのローカライズの専門家でもある。ここでは少数民族言語へのローカライズ・プロジェクトを立ち上げるための彼女の秘策を紹介する。
フリーソフトウェアならば比較的容易に言語を追加でき、何か問題があっても開発者に直接コンタクトできる。また、翻訳版をテストするのも簡単な場合が多い。
これによって新たな言語を搭載した次のリリースが配布される可能性が高まる。またローカライズの仕組みが既に存在する場合は、そのソフトをダウンロードして使いやすいか見ておく。使いにくいシステムで翻訳するのは苦痛である。できれば、複数プラットフォーム(Linux、MacOS、Windows)で動作するものが良い。
文字の少ないソフトを選べば、それほど大変ではなく、早めに完成の喜びを味わえる。それからFirefoxのような目立つプロジェクトに移行すればよい。
そうすれば、自分でも使っていく間にバグを見つけやすく修正できる。また、あなたの言語圏の人たちが求めているソフトを選ぶ。ただし、ある程度の経験を積むまでは、あまり大きいソフトは選ばないほうが良い。もしどうしても大きいソフトを選びたければ、メニューの見出しなどの重要な文字列だけを翻訳するだけでも良いか開発者に相談する。
たとえば、ログインとサインイン、ディレクトリとフォルダ等同じ意味で違う表現をするものがある。この問題は、コンピュータ業界の歴史にまつわるもので、あなたの責任ではないものの、翻訳する場合には2つが本当に同じ意味かを再度確認する。
ローカライズに協力してくれる人が2人以上いるとなおよい。
統合されたトランスレーションメモリーを使ってオンライン上で翻訳作業を行うプロジェクトも多いが、VirtaalやPoeditなどの無料のオフラインツールを使うこともできる。特に複数プロジェクトで仕事をする場合は、自分のトランスレーションメモリーにすべての情報をまとめておくと一貫性を保つことができ、作業もはかどる。たとえば、”OK”の翻訳を何度も繰り返しタイプしなくて済む。私は、トランスレーションメモリーとVirtaalの両方を使っているが、定期的にトランスレーションメモリーから全部のデータをダウンロードしてVirtaalに同期するようにしている。
8. 複数形のサポート要求をする場合、私はいつも「そんなマイナーな言語に訳す価値がない」と言われる前に「ロシア人も欲しがっている」という切り札を出す
自分の言語に必要な要求をするときは丁寧に!フリーソフトウェアの開発者の多くが、たいていは空き時間に趣味として開発をしているので、いつでも誰にでもフレンドリーかつ楽しい雰囲気を心がけよう(職場でも同じだが……)。また、開発者はいつも直すべきバグや追加機能に追われていて時間がないので、忍耐強く待ち、どうしても必要な時だけ丁寧な催促メールを送るようにしよう。
もし十分な技術スキルがなければ表計算ソフトから始めても大丈夫。ただ長期的にはちゃんとしたデータベースを使ったほうが良い。これは、翻訳の一貫性の維持だけでなく、ユーザ用の用語辞書としても使える。一貫性はユーザにとって重要で、それがないと混乱のもとになる。たとえば、ドイツ語で「ログイン」を意味する用語は2つあり、そのうちのひとつ”anmelden”は「登録」と言う意味で使う場合もあるので、この訳は使うべきではない。
そのようなWebサイトの例としてiGàidhligのサイトを見てみると良い。言語にもよるが、キーボードやフォントのインストール方法についても記載しておく必要があるかもしれない。コミュニティでの活動やマーケティングに慣れている仲間に手伝ってもらえれば理想的である。
これは、コンピュータの地図にあなたの言語を追加することであり、モバイル端末にその言語を搭載する上での要件にもなる。これに必要なデータの提供も(オタクっぽい)ローカライズの仕事のひとつである。
少しずつでも継続して翻訳を完成させよう。