世界中のインターネット利用者の多くは、3月8日を「国際女性デー」と表示しているGoogleのdoodle (訳注:Doodle(ドゥードゥル)は、祝日や記念日、有名な画家や先駆者、科学者の生誕などを祝うため、Googleのロゴ マークをアレンジしたもの)を訪れることから始まったかもしれない。国際女性デーは世界で最も認識されている市民権を祝う日の1つだ。
この国際的な記念日は当初、社会主義グループの主導によって始められ、女性労働者に焦点を当てていた。しかし、現在は世界中の異なった場所でそれぞれ特色のある形態をとり、その元来の本質的考えから脱皮して、非常に多種多様な社会的側面にいる女性特定の問題を強調する日となっている。
東ヨーロッパでは、3月8日は母の日と女性の日が組み込まれた日となっている。その日は伝統的に男性がちょっとした贈り物を母親、妻、女性の同僚など、人生において一番重要な女性のために用意する日だ。
しかし近年、女性たちはその日を女性特有の役割についての認知度を高め、促進するイベントを開催する日として利用し、その日を彼女ら自身のものとし始めた。2015年3月8日のGoogleのdoodleはその精神を的確に捉え、その日が世界中の多くの国で、女性たちの家庭内外の両方でこなす仕事に感謝する日に成長したことを示した。
崩れゆく最後の壁
世界各地の国際女性デーのイベントのいくつかは、意図的でなかったらしいが、現代社会で女性が直面している微妙な問題についての関心を高めることに成功した。オーストラリアでは 自由党(LNP)がある会場を予約した。その理由は 「単に、ビジネス中心部での空室状況、賃貸料、利便性を基準にして」この日を祝うためだと言っていたのだが・・・
結論から言うと、その政党が選んだ場所はブリスベンのエリート男性限定クラブだった。その場所を選んだことに皮肉が内在していることに気づくと、オーストラリア議会はその事について議論する時間を取り、面白がった。
1万4千人の構成員の内、6千人以上の女性員をほこるオーストラリア自由党(LNP)のリーダーは、現在のオーストラリアの首相であり女性省の トニー・アボットだ。
アボット首相はこのイベントをもう1つの女性の勝利宣言とするために、このチャンスをすぐさま利用した。「政党メンバーがオーストラリア政治全ての分野における女性の役割を議論する準備のために、”男性限定”という彼女たちの前に立ちはだかっている最後の壁を壊すこと。それを始める以上に良い方法があるだろうか?」と彼は述べた。
女性の問題はもはや一方の性に限られたものではない
しかし他の地域では、性別をめぐる戦いが個人の基本的人権を超えて厳しい状況にある。インターナショナル・メディア・サポート(IMS)のような組織は女性たちの性別について注目を集めるように働きかけているが、残念なことに、彼女ら自身の社会だけでなく国際組織も、全体がその問題を二の次にしているようだ。
IMSはウェブサイト上の写真に、ありふれているが特別なシリアの5名の若いクルド人女性たちを特集した。彼女たちは「“難民”という言葉は彼女らのアイデンティティを定義さえしない」そして「まず、女性として見られたい」と伝えたがっていた。12枚の写真の中のほんの数語の彼女たちの言葉により、この記事は世界の多くが持っていた難民についての認識を変えただけでなく、シリア人社会における女性の役割についての認識も変えたのだった。
同様に、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(訳注:世界各地の人権侵害と弾圧を止め、世界中全ての人々の人権を守ることを目的に、世界90か国で人権状況をモニターしている団体)の3月2日からの1週間で、市民権に関する最も人気のあったツィートは ロイターの記事にリンクしていた。その記事はアフガニスタン人の男性グループが女性の人権問題に対する注目を集めるために、全身鮮やかな青のブルカ(訳注:イスラム教の女性用服装。目の部分を網目状にして視界を確保し、全身を覆う)に身を包み、首都・カブールを行進して通ったというものだ。
アフガニスタンの男たちが 女性の人権のためにブルカを着てカブールを行進してるぞ。http://t.co/MLAyiGEoIw #IWD2015 pic.twitter.com/lEL8YI8wMt
— Andrew Stroehlein (@astroehlein) March 6, 2015
アフガニスタンの男たちが 女性の人権のためにブルカを着てカブールを行進してるぞ。
その活動家のひとりである29歳の青年は以下のように言った。「我らの権威者たちは国際女性デーを大きなホテルの中で祝うのでしょう。しかし、私たちはそれを路上で行いたいと思いました。」
この小さいけれど意義深い行進は通行人から様々な反応を得た。他の人たちがこの小さな男性活動家グループの活動を賞賛し支持していた一方で、一部の女性たちは「ブルカを着た女性を男性が代弁する必要はない」とコメントし、ある中年女性は「息子や夫が止めても自分は自ら選んでブルカを着ているのだ」と述べた。
この意見に同意する人がいてもいなくても、これは社会が変化を経験している過渡期に、どのようにして女性の権利に対する意識向上が注目を集めるのかを表す強烈な例だった。そして、これはフェミニズムが一方の性別を対象とした活動ではないという事実と同様のことだ。この行進の動画この行進の動画はAJ+経由でFacebookで見ることができる。
政治的闘争に対する女性の集会
国際女性デーは性別によるギャップを解消するだけではなく、文化や政治的ギャップの解消を目指す日でもあり、女性たちが団結してデモンストレーションを行うことを通してアピールするのが一般的だ。
2015年3月7日午後、その1つである1500人ほどの女性によるデモがヨルダン川西岸地区北部とエルサレムの間に位置する主要な検問所であるカランディア検問所で開催された。
ユダヤ人とパレスチナ人の両方のイスラエル女性たちが合流し、そこにヨルダン川西岸地区から来た女性たちも加わって、ヨルダン川西岸地区の占領と闘争に反対するイスラエル人とパレスチナ人の団結を証明するための抗議集会を行ったのだ。「平等にYES 人種差別にNO」と呼びかける看板を持っていた女性たちは、大衆を散らそうとするイスラエルの治安部隊から、催涙ガスや閃光弾、唐辛子スプレーなどを受け、多くの参加者が傷つき、約10名が高度治療を受けなければならなかった。
政治的な結束とは違う組織である世界ウクライナ女性組織連盟はナディア・サフチェンコと共に1日間ハンガーストライキを行うようにウクライナ国内の女性に呼びかけた。ナディア・サフチェンコはウクライナの戦闘機パイロットで、ロシア当局により2014年6月から拘留されている。彼女は12週間のハンガーストライキを行っている最中だった。
国連の人権擁護局長といくつかの各国政府、そして多くの人権団体はかつてよりサフチェンコの速やかな解放を呼びかけていたのだが、2015年3月8日は、1人の女性の命と自由を守るため、世界中の男女たちが団結したのだった。
@BBCGuernsey 国際女性デーを祝う最善の方法は彼女たちの1人の命を救うためにある。#FreeSavchenko pic.twitter.com/480FofVoSV”
— John Semenowicz (@JohnSemenowicz) March 8, 2015
国際女性デーを祝う最善の方法は女性たちのうち1人の命を救うためにある。
まさに世界的イベント
国連に認識されている多くの「国際デー」のなかでも国際女性デーはまさに最も大きな軌跡だ。女性たちが異なる国や地域で全く異なった問題に直面しているにも関わらず、世界中のほとんどの国がその日を何らかの方法で祝っているようだ。
その日は本当に国際規模な日であり、国際組織も多国籍企業もその動きから外れないようにしている。
国連のパン・ギムン事務総長は国際女性デーと共に、第4回世界女性会議(開催地:北京)20周年の節目をアピールするためのビデオ声明を作り、「女性の人権のための行動指針」を呼びかけた。なぜならその会議のホスト国であった中国が、公共交通機関での痴漢行為に対して抗議を行う女性活動家たちを拘留したからである。パンは世界に向け「女性の人権はヒトの人権」だということを再び気付かせる目的で話したのだ。
また、Googleはこの日、珍しい世界規模のdoodleを表示するだけに留まらなかった。Googleは「世界中の少女たちを勇気づけること」を目的としたオンライン上のキャンペーンを発信するためにYouTubeの動画共有プラットフォームを表示した。
そのYouTubeキャンペーンは世界のいたるところから女性たちを招き、その女性たちが自身の少女時代に受け取りたかったアドバイスを、ハッシュタグ#DearMeを使って少女たちに向けて投稿してもらうものだ。何千人もの女性たちがその呼びかけに参加したようで、Twitter と Facebookの両方でそのハッシュタグは流行になった。それとは別のキャンペーンに、#DearMe: From the Guysもまた現在は独自のプレイリストを持ち、再度、全ての人に関する平等と権利移譲についての重要性を証明している。
非営利の無料教育プロジェクトであるWikimediaは、優れた女性Wikipedia貢献者たちと、彼女たちがWikipediaを使って社会を変えるためにしている様々な方法を掲載した。その全くバラエティに富んでいる掲載された女性11人全員の国籍、人種、年齢そして専門は異なる。彼女たちは企業や、企業が伝えるより幅広いオープンソース(訳注:ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを、インターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行えるようにすること。また、そのようなソフトウェア)の文化について雄弁に語った。
女性ユーザーが圧倒的に多いソーシャルネットワークのFacebookは国際女性デーのキャンペーンをシンプルかつ効果的に行った。Facebookの写真キャンペーンは企業家精神を持ち、創造的で優れた実績のある12名の個性的な女性たちに焦点を当てた。
最後に、毎日ソーシャルネットワークを使用して女性の権利について議論している何人もの優れたユーザーの注目を引くために、Twitterはブログポストを作りだした。そのポストは、リマインダーのページから始まり、現在は「国際デー」の日だけではなく、年間を通して、重大な社会的運動に貢献している人々を集約させるために利用できる。
「フェミニズム」を巡る会話は過去3年以上で300%に増加した。いろいろな力強い議論とキャンペーンがTwitter上で始まり、何百万人に気づきをもたらした。