インターネットガバナンスフォーラム(IGF)は国連管轄の会議であり、「インターネットガバナンスに関する対話を関係者間で行う」ことを目的としている。今年は、旧ソ連アゼルバイジャン共和国の首都バクーで、11月6日(火)より開催される。政府関係者、民間企業の代表、市民団体、学界の人々が、インターネットの使用、規制、管理、そして将来の見通しといった主要問題について話し合うことになる。
同じく火曜日に、アゼルバイジャンの若き活動家として有名な元政治犯のエミン・ミリが、アゼルバイジャン、イルハム・アリエフ大統領への公開質問状を発表する予定である。これはIGFの開会に合わせて公開されるものであり、イギリスのインディペンデント紙に掲載される。質問状の中でミリ氏は、この国ではインターネットの利用は自由だとする政府の主張に異議を申し立てており、次のように記している。
You once suggested in a speech that the internet is free in Azerbaijan. I am sure you will repeat this message at this global forum. It is true that people in Azerbaijan are free to use the internet, but it is also a fact that they can be severely punished afterwards for doing so.
ミリ氏は手紙の中で、大規模でしかも根拠のないウェブ上での監視は、旧ソビエト時代の恐ろしい記憶を思い起こさせるものであり、国民が発言する機会を効果的に妨げていると非難している。
Today many of our fellow citizens do not dare to speak out against your policies, online or offline. You have successfully managed to silence them.
現在、我々市民の多くは、ネット内外にかかわらず大統領の政策を非難することなどできません。
大統領は国民の口封じに成功しているのです。
2009年7月8日、エミン・ミリと、ビデオブロガーであり民主化運動の活動家であるアドナン・ハジザダは、
“フーリガン行為”というねつ造された罪で、それぞれ禁固2年と2年6ヶ月の 判決を受けた。当時の観測筋や人権団体のほとんどは、判決を政治的であると非難し、2人とも「良心の囚人」であると宣言した。多くの人は、二人がアリエフ政権に対して筋違いの批判をしたこと、また若者に向けて従来とは異なるコミュニケーションのパイプを築こうとしたために、罰せられたのだと信じている。
国際的な抗議を受け、2人とも2010年に条件付きで釈放された。
その後アリエフ政権は、世界に門戸が開かれた自国を描こうとしている。今年度のIGF会議の開催は、その政策の一例と言える。
情報通の観測筋たちはアゼルバイジャンの現状について、「新手の権威主義」の出現だと表現している。この「新手の権威主義」とはつまり、「ネットワーク化された権威主義」である。利用者によるオンライン政治活動を阻止したり、ミリ氏のような勇気を持って発言する者を悪者扱いするなど、開かれたインターネットをうまく活用している。
エミン・ミリ氏によるアリエフ大統領への公開質問状の全文は、下記リンクのインディペンデント紙ホームページに掲載されている。