トルコの漁師とコウノトリ―世界の片隅のある実話

原文掲載日:2023年3月24日

ドキュメンタリー映画「ヤーレン」の1シーンより、漁師とコウノトリ

これは「アデムおじさん」とも呼ばれているトルコの漁師アデム・ユルマズヤ―レンという名のコウノトリの物語だ。西ヨーロッパや東ヨーロッパでよく知られた子どもの寓話集「ラ・フォンテーヌ寓話」から取り出したような話である。しかしアデムおじさんとコウノトリの絆は紛れもない事実なのだ。アデムおじさんとコウノトリは、トルコのエスキカラアーチ村で12年にわたって毎年顔を合わせてきた。例年3月頃コウノトリが北へ渡る時期になると、ヤ―レンは必ずアデムおじさんの漁船にやってきて、カメラに向かって一緒にポーズをとることが恒例となっている。アデムおじさんは湖で獲れたばかりの魚でヤ―レンを歓迎する。二人の関係は一風変わった友情のシンボルとなり、地元で有名にもなった。さらに「ヤ―レン」というドキュメンタリー映画まで作られ 、ユーチューブでも視聴できる。

12年の間コウノトリのヤ―レンは約束を守ってきた。ヤ―レンは雨にも嵐にも耐え、国や町や山々を越えて、昨日巣に到着し、今日アデムおじさんの船にやってきてポーズをとった。どうか羽のように長く生きてくれますように。ヤ―レンの到着に、私たちは皆やっと胸をなでおろした。

2月6日の壊滅的な地震4万5000人を超える死者を出し、膨大ながれきが残るトルコにとって、今年のヤ―レンの到着は希望と、変わらぬ日常の象徴でもあった。しかしヤ―レンの到着は予想よりもかなり遅れた。数年にわたってヤ―レンとアデムおじさんの交流を見守ってきた多くの人々の心配は膨らんでいった。その中に野生動物写真家のアルパー・ツイデスがいる。彼はこれまで何度もアデムおじさんとヤ―レンの様子をレンズで追ってきた。少し遅れたもののヤ―レンの到着はこの国と人々の気持ちを明るくしてくれた。「自然と野生動物の写真家アルパ―・ツイデスのこの画像は、私たちに良い日々が戻ってくるという希望を与えてくれた。彼らの誠実で暖かい友情は、人々の心のいたみを和らげてくれる」と、旅行、文化、芸術、映画、音楽などの話題を取り上げているトルコのデジタル・プラットフォームThe Maggerは書いている

一方、ヤ―レンはつがいとなったパートナーのナズリとこのエスキカラアーチ村に巣を作った。この村は「ヨーロッパ・コウノトリの村ネットワーク」のトルコ国内の拠点にあたる。このネットワークに属する村々は「シュバシコウ(訳注:ヨーロッパに飛来する一般的なコウノトリの名称)の保護に模範的な貢献をしている村」に指定されている。コウノトリは再び南下するまでの半年間、エスキカラアーチ村にとどまることになるだろう。ブルサ県にあるエスキカラアーチ村は、アフリカからトルコを経由してヨーロッパの国々へ移動する数万羽のコウノトリのルート上に位置する。ヤ―レンのファンに向けては、その巣を見下ろすライブ中継もある。(訳注:現在視聴できません)昨年、このカップルは3羽のヒナを育てた

2年前の5月、写真家のツイデスはアデムおじさんとヤ―レンを訪ねた。そして、 ヤ―レンにエサをあげたり、ヒナやパートナーについて話しかけたりするアデムおじさんのありのままの姿をフィルムに収めた。

校正:Namsu Seo

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